電通編 – キャッチコピーのつくりかた


電通インターンの過去問では、「特定の商品やサービスを提示して、キャッチコピーを考える」形式の問題が、よく出題されています。

今回は、以下の例題をもとに、5つのステップで回答を考えてみましょう。

例題(2017年夏・出題)

動物の「ナマケモノ」に、キャッチコピーをつけて、動物界のアイドル「パンダ」よりも人気者にしなさい。※最大で10個まで回答可(16’出題)

STEP1:顕在的な課題を把握する

問題文から、課題となり得る箇所を把握します。
キャッチコピー問題の場合、「どんな商品・サービスに関して、どんな目的でキャッチコピーをつくるのか」という部分が「課題」となります。
ほとんどの問題の場合は、問題文に「◯◯の商品に対して、◯◯のためのキャッチコピーをつくる」ということが提示されているので、
該当箇所をそのまま抜き出します。

「顕在的な課題」の導き方(具体例)

今回の例題の場合は、問題文にある「ナマケモノをパンダよりも人気者にするためのキャッチコピー」という部分が、
そのまま課題となります。

◆顕在的な課題◆

ナマケモノをパンダよりも人気者にするためのキャッチコピー

STEP2:潜在的な課題を把握する

問題文で提示されている「顕在的な課題」は、解決するための具体的な方法が提示されていないため、
そのままではアイデアを考える上での参考になりません。

従って、問題文で提示されている「顕在的な課題」を「潜在的な課題」に転換することで、
キャッチコピーの軸となるポイントを決めましょう。

「潜在的な課題」の導き方(具体例)

まず、パンダの人気は、「見た目上の可愛さ」に起因します。
具体的には、「クタクタとしたしぐさ」「丸い顔型」「額の大きさ」「タレ目」「赤ちゃんの体型比率に近い」といったポイントを有しています。
対してナマケモノが、その風貌においてパンダに勝ることは困難です。

従って、パンダは「見た目上の可愛さ」以外のポイントをキャッチコピーで訴求する必要があるということになります。

では、ナマケモノの、どのような要素をアピールすれば、人気を集められるでしょうか?
まずは、ナマケモノの特徴を羅列してみましょう。

・動くのが遅い
・泳ぐのが速い
・常に木の上で生活している
・1日に食べる量は、8g
・消化に時間がかかりすぎて餓死することもある
・自分の体に生えた藻を食べて生きている
・競争しない
・体温が外気に合わせて変化する(変温動物)
・1日に20時間眠る
など

これらのナマケモノの特徴をウリとして、人気を集める方法はないでしょうか?

人気を集めるための方法のひとつとして、、「人間との共感性」があります。
たとえば、現代の日本では、「働き方改革」が盛んに叫ばれています。
ナマケモノの「怠けていても、現代まで生き延びる姿」は、現代人に与えるメッセージ性があるのではないでしょうか。
従って今回は、「ナマケモノに共感するためのキャッチコピー」が、潜在的な課題だと考えられます。

◆潜在的な課題◆

「ナマケモノに共感するためのキャッチコピー」を作る

STEP3:キャッチコピーのコアとなるアイデアを決める

今回解決するべき「潜在的な課題」を把握したら、次に、キャッチコピーの具体的な表現方法を考えていきます。
具体的には、「潜在的な課題を解決するために必要なキャッチコピーの表現」です。
「◯◯を使ったキャッチコピーにする」「◯◯を舞台にしたキャッチコピーにする」など大まかなテーマを決定します。

「キャッチコピーのコアとなるアイデア」の考え方(具体例)

どのような切り口なら、人々は、ナマケモノに共感を覚えるでしょうか。

そもそも、人が「共感する」のは、「自分の経験したこと」もしくは「自分が日々考えていること」にマッチした瞬間です。
具体的に、ナマケモノと共感が生まれる可能性がある場面を考えてみましょう。

ナマケモノは、陸上では秒速5cmのスピードでしか動くことができず、天敵に襲われそうになったときは、全身の力を抜いて諦めるほど、弱い動物です。
にも関わらず、ナマケモノの発祥は、「メガテリウム」という動物で、新生代第四紀更新世から進化を遂げながら、現代でも絶滅危惧種にさえ登録されていない動物です。

彼らは、動けない、逃げられないという決定的な弱みを持っていながらでも生き延びるために、様々な部分が進化しています。

例えば、食事は、1日たったの8gで、体毛に生えた藻を食べることで、飢えを凌ぐことができますし、排便も1週間に1回程度に抑えられています。

弱肉強食と言われる動物界の中で、最弱だと思われるナマケモノが、太古の時代から現代まで絶滅していないという事実を、キャッチコピーに含めることで、「さぼりがちなサラリーマンや学生」に共感を持ってもらうことをアイデアの基盤とします。

◆キャッチコピーのコアとなるアイデア◆

動物界で最弱だと思われるナマケモノが、太古の時代から現代まで絶滅していないという事実を使ったキャッチコピー

STEP4:キャッチコピーを見た人に誘起させたい感情を決める

キャッチコピーのコアとなるアイデアを決めたら、次に「キャッチコピーを見た人に誘起させたい感情」を決めます。
なぜなら、見た人に誘起させたい感情によって、キャッチコピーに盛り込むキーワードが変化するためです。

感動させたいのであれば、家族や友情、恋愛に関するキーワードを使うべきであり、
笑わせたいのであれば、何らかのギャグや、ネタを埋め込む必要があります。

コアとなるアイデアの範囲内で、キャッチコピーに盛り込むキーワードを決めるために、見た人に誘起させたい感情を決めます。

「キャッチコピーを見た人に誘起させたい感情」の考え方(具体例)

「なまけてもいい」と共感できるキャッチコピーを見た人に誘起させたい感情は、もちろん「怠けてもいい」「たまには怠けることも必要だな」といった感情です。
今回は、キャッチコピーのアイデアが、そのまま感情と直結しているため、アイデアそのものが、「キャッチコピーを見た人に誘起させたい感情」となります。

◆キャッチコピーを見た人に誘起させたい感情◆

ケンカの強さや動きの素早さだけが、生き残る術とも限らない
   →一般的に誰もが欲しがる見た目や能力だけが、生きるために必要な能力ではなく、自分の強みを活かすことで、生き延びることだってできる

STEP5:キャッチコピーを考える

見た人に誘起させたい感情まで定めた段階で、実際のキャッチコピーを考えます。
STEP1~STEP4までで考えたことをキャッチコピーの技法を用いて、形にします。
キャッチコピーの技法については、下記からチェックして下さい。

キャッチコピーの考え方(回答例)

今回のキャッチコピーは、主に下記条件を満たす必要があります。

①アイデア
→「動物界最弱のナマケモノが太古の時代から現代まで生き延びている」という事実を使う
②届けたい人・誘起させたい感情
→自分に自信がない人に、「自分の強みを活かすことで、生き延びることだってできる」という感情を持ってもらう

そこで、「ナマケモノ」の語り調のコピーにすることで、ナマケモノを、自分自身と並列した関係で捉えやすくなり、共感力が高まります。

◆キャッチコピーの回答例◆

内定者の回答集

SNSで”1万いいね!”される投稿内容を考えてください。※オリジナルのみ。パクリ厳禁です。(’16年/Bコース)

一度見たら記憶に残るような、「扇風機X」のTVCMと、そのキャッチコピーを考えて下さい。(’17年/Aコース)