電通インターンの過去問では、「新商品・新サービスを考える」問題が、よく出題されています。
今回は、以下の例題をもとに、5つのステップで回答を考えてみましょう。
あるテーマパークから「かつてない新しいアトラクションを考えて欲しい。」という依頼を受けました。
あなたなら、どんな名前の、どんなアトラクションを提案しますか。
問題文から、課題となり得る箇所を把握します。
新商品・新サービスを考える問題の場合、「どんな目的で、どんな新商品・新サービスをつくるのか」という部分が「課題」となります。
ほとんどの問題の場合は、問題文に「◯◯のための、◯◯という商品・サービスをつくる」ということが提示されているので、
該当箇所をそのまま抜き出します。
今回は、出題文中で「かつてない新しいアトラクションを作る」ことが明言されているため、
「クライアントが望んでいること」は、文中からそのまま抜き出した形になります。
ただし、注意したいのは、この課題には大きく2つの要素を含んでいるということです。
一つは「新しいアトラクションであること」。
そして、もう一つは「かつてない」ことです。
つまり、顕在的な課題は「まだ他のテーマパークが、どこも作っていないような、革新的なアトラクションを作ること」だと考えられます。
◆顕在的な課題◆
まだほかのテーマパークが、どこも作っていないような、革新的なアトラクションを作る
問題文で提示されている「顕在的な課題」は、解決するための具体的な方法が提示されていないため、
そのままではアイデアを考える上での参考になりません。
従って、問題文で提示されている「顕在的な課題」を「潜在的な課題」に転換することで、
新商品・新サービスの軸となるポイントを決めましょう。
実際には、「かつてない新しいアトラクションを作りたい」と考えるに至った理由があるはずで、
本当に解決すべき課題は、その「理由」の中に潜んでいます。
では、なぜクライアントは「かつてない新しいアトラクションを作りたい」と考えたのでしょうか?考えられる理由を羅列してみましょう。
(※あくまでも仮説の問題なので、どんな理由を想定しても構いません。)
◆いま、テーマパークに来ていない人(グループ)に、来てもらいたい
・老夫婦
・男だけのグループ
・妊婦さん
・男ひとりで
・女性ひとりで
・会社で
・家族で
◆いま、テーマパークに来ているが、楽しめていない人を楽しませたい
・家族連れのお父さん
・家族連れの老夫婦
・行列に並んでいるとき
・高所恐怖症の人
・暗所恐怖症の人
など
上記であげた理由の中から、どれでも構わないので、
一つを選んで深掘りして考えていきましょう。
今回は、「いま、テーマパークに来ているが、楽しめていない『家族連れのお父さん』を楽しませるためのアトラクション」を考えることとします。
家族でテーマパークを訪れる人は多いですが、特に小さなお子さんがいらっしゃる場合は、
子供と奥さんで楽しんでしまって、お父さんはベンチでひとりぼっちという状況が多く見受けられます。
そんなとき、お父さんが楽しめるアトラクションがあったらどうでしょうか?
お父さんは、たとえ一人になっても「お父さん向けのアトラクション」で暇つぶしをすることができます。
また、これまでテーマパークに誘われても、「面倒だから」と断りがちだったお父さんも、
より頻繁にテーマパークに足を運ぶようになるかもしれません。
ちなみに、今回対象として掲げたお父さんは、何歳で、どの地域に住んでいて、
どんな仕事をしている人でしょうか?
家族連れでテーマパークに訪れていることを考慮すると、
・子ども:1歳~12歳前後
・エリア:東京近辺もしくは郊外(千葉、埼玉、神奈川、群馬など)
・仕事:サラリーマン(平日出勤、土日休み、残業が多く、普段は家族の時間を作れないなど)
といったように、ターゲット層も具体的に絞り込むことが出来ます。
従って、クライアントの「かつてない新しいアトラクションをつくりたい」という要求は、
「家族連れのお父さんが一人で楽しめるアトラクションをつくる」という『本当に解決すべき課題』に置き換えられます。
◆潜在的な課題◆
家族連れのお父さんを楽しませるためのアトラクションをつくる
今回解決するべき「潜在的な課題」を把握したら、次に、新商品・新サービスの具体的なアイデアを考えていきます。
具体的には、「潜在的な課題を解決するために必要な新商品・新サービス」です。ここで、大まかな商品アイデア・サービスアイデアが決まります。
STEP2で考えた「潜在的な課題」を元に、具体的なアトラクションのイメージを考えていきます。
まずは、「お父さんが楽しんでやっていること・やっていたこと」を箇条書きで書き出してみましょう。
お父さんが楽しんでやっていること・やっていたことの要素を抽出して、それらを含んだアトラクションをつくれば、
お父さんが楽しんでくれる可能性が高いアトラクションを論理的に作ることが出来ます。
◆ターゲット層のお父さんが楽しんでやっていること
・バイク
・車
・キャンプ
・自転車
・スポーツ(サッカー、野球、ランニング)
・スポーツ観戦(サッカー、野球)
・ギャンブル(パチンコ、競馬、競艇、競輪など)
・釣り
・ゴルフ
・酒
・日曜大工
・カメラ
◆ターゲット層のお父さんが楽しんでやっていたこと
・ファミコン(マリオ、桃鉄、ドンキーコング、)
・ゲームボーイ
・アーケードゲーム
・メンコ
・ガンダム
・仮面ライダー
・宇宙戦艦ヤマト
など
上に挙げた「お父さんがやっていること・やっていたこと」の中で、
それぞれが持つ要素とは何でしょうか?
要素ごとにグループ分けをしてみましょう。
◆ターゲット層のお父さんが楽しんでやっていること
①スピード感
⇒バイク、車
②競争・勝負感
⇒ギャンブル、ゴルフ、
③カラダを動かす
⇒ゴルフ、日曜大工
④自然と触れ合う
⇒キャンプ、バイク、釣り
◆ターゲット層のお父さんが楽しんでやっていたこと
①ゲーム機器
⇒テレビゲーム、アーケードゲーム
②当時流行したゲーム
⇒マリオ、桃鉄、ドンキーコング
③当時流行したキャラクター
⇒ガンダム、仮面ライダー、宇宙戦艦ヤマト
従って、上に挙げた7つの要素を単体もしくは組み合わせで含んだアトラクションであれば、
「お父さんが一人で楽しめる」可能性が高くなります。
今回は、上記の要素の中から、
「スピード感」×「競争・勝負感」×「カラダを動かす」×「ゲーム機器」×「当時流行したゲーム」
の要素を含む「リアル版マリオカート」をアトラクションの方向性としました。
◆アトラクションのアイデア◆
リアル版マリオカート
新商品・新サービスのアイデアを決めたら、次に「新商品・新サービスと接触したユーザーに誘起させたい感情」を決めます。
なぜなら、誘起させたい感情によって、新商品・新サービスの細かい設定が変化するためです。
新商品・新サービスのアイデアの範囲内で、細かい設定を決めるために、接触した人に誘起させたい感情を決めます。
「リアル版マリオカート」で遊んだお父さんが、感じるであろう思いは、どのような感情だと想定されるでしょうか?
さきほど挙げた「お父さんが楽しんでやっていること・楽しんでやっていたこと」に近い感情を誘起させられれば、
お父さんに「楽しい」と感じてもらいやすくなります。
◆「リアル版マリオカート」で誘起させたい感情
・スリルがある
・勝つ喜び
・勝負する楽しさ
・カラダを動かしてスッキリした
・マリオの世界に没入できて楽しかった
・子供の世界に戻ったようだった
・マリオが懐かしい
など
上記に挙げたキーワードをまとめると、
「懐かしいマリオの世界に没入できて、競争するスリルがあって楽しかった。」
という感情が狙いとなります。
◆新商品・新サービスと接触したユーザーに誘起させたい感情◆
「懐かしいマリオの世界に没入できて、競争するスリルがあって楽しかった。」
「新商品・新サービスと接触したユーザーに誘起させたい感情」まで定めた段階で、アイデアを商品化・サービス化します。
STEP1~STEP4までで考えた「ゴール・イメージ」に基づいて、細かな設定を詰めていきましょう。
①ゴールイメージの対象となり得るユーザー属性を決める
⇒どのような人であれば、ゴールイメージを誘起させやすいでしょうか。
「エリア」「性別」「年代」「仕事」「趣味」といった切り口で、属性を絞り込みましょう。
②ゴールイメージに沿った機能(サービス)をつくる
⇒ゴールイメージを実現するためには、どんなサービスが望ましいでしょうか。
「場所」「時間帯」「サービスフロー」「デザイン」などのサービスの詳細を決めましょう。
お父さんが「一人で楽しむ」ために、サーキットやカートをリアルに再現し、スピードも、子どもの利用を想定せず、20km/時程度まで出せるようにします。
また、競争要素を含めることで、「子供のように全力で楽しめる」環境を作り出します。
◆アトラクションの回答例◆
日本にやってくるアメリカ人観光客のブライアンをもてなすプランを考えて下さい。(’15年/Bコース)
いま日本に最も必要とされている「新しい祝日」を作り、その「日付」と「名前」と、なぜ必要とされているのかという「理由」を教えてください。
※確かにそんな祝日あるといいな!と思える納得感の高さと、誰にも思いつかないアイデアを生み出す発想力の豊かさを見たいと思います。 (’17年/Bコース)
多くの人が、「その手があったか!」と思える、暮らしの不便を解消する新しいサービスのアイデアを考えて下さい。
※不便の見つけ方の着眼点の良さと、それを解決するアイデアの鮮やかさを見たいと思っています。(’17年/Bコース)