電通編 – キャッチコピーの技法9選

電通インターンの過去問では、「キャッチコピーを考える」問題がよく出題されています。

ここでは、STEP1~STEP4までを考えたうえで、キャッチコピーを上手く形にするためのキャッチコピーの技法を9つご紹介します。

技法1:対象との関係性を変化させて、コピー案を量産する

コピーを書くときには、なにか書く対象があると思いますが、それは、ただひとつだけで世の中に存在しているわけではありません。
いろいろなヒトとの関係性を持っています。
自分の身近なヒトとの関係性をひとつずつ考え、キャッチコピー案を量産しましょう。

【STEP1】
様々な「対象物 + いろいろなヒト」の関係性を考えて、メモしていく。

【STEP2】
「対象物 + いろいろなヒト」との関係性を元に、具体的なシーンを言葉で考える。

名作から無敵のプロットを作る方法(具体例)

◆関係性を変化させた、キャッチコピー案の考え方

【STEP1】
さまざまな「対象物 + ヒト」を考える

例:「ビール」の場合
『ビールと私』
『ビールとお父さん』
『ビールと小学生』
『ビールと主婦』
『ビールと織田信長』
『ビールと学校の先生』
『ビールと終電のサラリーマン』
『ビールとダイエット中の女性』

【STEP2】
「対象物 + ヒト」の具体的なシーンを言葉で表現する

例:「ビール」の場合
●ビールとお父さん
⇒仕事から深夜に帰ってきて、一人で寂しそうに飲んでいる。
⇒一緒に晩御飯を食べている時に、お父さんはお酒を飲むと、一時的にお母さんより強くなる。

●ビールと織田信長
⇒飲み会でも、ビールは太りそうだから、他のお酒に変える。

【STEP3】
「対象物 + ヒト 」の具体的なシーンから、キャッチコピー案を考える

●ビールとお父さん
⇒お父さんにも武装できるひとときを

●ビールと織田信長
⇒「織田信長」にも飲んで欲しいトクホのビール

技法2:コピーでも、嘘をついてはいけない

キャッチコピーを考えるときには、「本当にこう思っているヒトはいるのだろうか?」という視点が必要です。
一般的に考えて、そのように考えないのであれば、コピーとして失格です。

3種類の敵を作っているストーリー事例

◆嘘をついているコピー例

JR東日本『アイラブ東日本』
⇒一見、「I♥NY(アイ・ラブ・ニューヨーク)」と似ているように感じますが、実体は大きく異なります。

「アイラブ東日本」のように、日本の東側だけを愛しているヒトは、本当にいるでしょうか?

たしかに「アイラブNY」「アイラブ東京」「アイラブ大阪」など、特定の都市を愛しているヒトは、多く存在すると考えられますが、
「日本アルプスから東側だけ」が好きな人は、いないはずです。

クレジットカード『世界に通用するお前を見習いたい』
⇒一般的に考えて、「クレジットカードを見習いたい」と考えているヒトはいるでしょうか。

「クレジットカード」が世界で通用するのは、会計のときのみであり、実際に「見習いたい」と考えているヒトがいるとは考えられません。

技法3:論理的に考えて、生理的にチェックする

キャッチコピーを作る上で、まず認識しておかなくてはならないのは「書き手のよろこびと受け手のよろこびは違う」ということです。

キャッチコピーを作るときは、書き手だけが感じる「言葉遊び的な喜び」がありますが、その喜びと、受け手の評価には、相関性がありません。

なぜなら、受け手は、「自分にとって価値があるかどうか」しか考えないからです。

従って、クライアントの要求を上手く満たすコピーを「論理的」に考えたうえで、最終的には「生理的」に受け手として、嬉しいかどうかを考える必要があります。

受け手の喜びが考慮されていないコピーの例

某化粧品会社・男性用整髪料のコピー
『二毛作ジェル』
⇒商品は、「髪のスタイルを整えながら、髪に栄養分も与えられる」という2つの要素を持った男性用ジェルでした。

おそらくクライアントからの要望として、「2つの特徴を持っていることを強調して欲しい」という依頼があったと考えられますが、

このコピーを冷静に受け手の目から見ると、どう感じるでしょうか?

そもそも、2つの要素をもつこと以前に、男性用ジェルは、「おしゃれをしてモテたい」といった目的で使うものです。

従って、受け手からすると魅力を感じにくいコピーとなります。

技法4:1本のコピーで本質を掴んで、量産する

キャッチコピーは、最初に書いた1本が、一番良いコピーになるとは限りません。
1本目のコピーで本質を掴んで、横展開していく中で、本当に良いコピーが生まれる確率が高くなります。
最初のアイデアに固執することなく、発想を広げていきましょう。

1本のコピーで本質を掴んで、量産する事例

【例題】
朝6時東京発⇒8時30分大阪着の座席を満席にしなさい

【1つ目のアイデア】
「大阪の朝市に行ける」
本質:
⇒大阪にしかなくて、朝しかできないこと、早く行くことでメリットがあること

【横展開したアイデア】
甲子園の第一試合
吉本が前の座席で見れる
車内で朝日の景色を楽しめる
人気たこ焼き店が並ばずに食べられる  など

「大阪にしかなくて、朝しかできないこと」という本質を満たしたアイデアを横展開することで、発想の幅を広げることができます。

技法5:「そういえばそうだね」を狙って書く

言葉に対する相手の反応は、大きく以下3つに分かれます。

①「そりゃそうだ」(常識)
②「そういえばそうだね」(想起する)
③「そんなのわかんない」(理解不能)

広告として最も効果的な反応は、「②そういえばそうだね」です。「①そりゃそうだ」の反応は、受け手の感情を動かさないため記憶に残らず、
「③そんなのわかんない」の反応は、受け手に理解されません。

「②そういえばそうだね」とは、つまり「知ってはいるけど、普段は意識下に眠っていること」です。

ヒトは、想起したときに感情を動かされるため、「②そういえばそうだね」が得られるコピーが最適だといえます。

ただし、上記①~③は、時代によって③から①に向けて変化していくため、「時代感覚」を捉えたコピーを書くことが大切です。

◆「時代感覚」を上手く捉えたコピーの例


丸井百貨店の新聞広告コピー
⇒この広告は、1970年代末に丸井百貨店が出した、「好きだから、贈り物してみませんか」 という提案の広告です。

現代でこそ、好きな人にプレゼントを贈るという行為は一般的になりましたが、昭和中期までは、贈り物といえば「義理」や「建前」で贈る「お歳暮」のみを指していました。

つまり、当時の贈り物に対する認識としては、「義理や建前で贈る」ということが「そりゃそうだ(常識)」であり、「好きな人に贈り物をする」ということは、「そういえばそうだね(想起)」だったということです。

この広告は、「好きな人に贈り物する」ということが、「非常識」から「想起」に変化するタイミングで掲載したという意味で、名コピーだったといえます。

技法6:自分に関係があると思ってもらう

コピーを使って、人の心を動かすためには、最終的に「自分に関係がある」と思ってもらう必要があります。
特に、「共感性」を狙ったコピーの場合には、大勢の方に向けた言葉ではなく、特定の誰か個人に向けて語りかけるような表現を用いたほうが、人の心を動かしやすくなります。

「自分に関係がある」と思わせているコピーの例


『あなたが気づけば、マナーは変わる』(日本たばこ産業)
⇒日本たばこ産業(以下、JT)は、たばこ事業を中心とした企業でありながら、「吸う人も、吸わない人も心地よい世の中へ」をビジョンとして掲げており、
たばこのイメージ改善、マナー改善に長期的に取り組んでいる企業です。
このキャッチコピーは、「たばこを吸う人のマナー改善」を目的としたコピーです。
このコピーで本当に伝えたい事は、「たばこはポイ捨てしない」「歩きタバコは人の迷惑になります」といったことですが、
敢えて具体的な表現を避け、「あなたが気づけば」という前置きを入れることで、たばこを吸っている全ての人に対して、
「あ、これは自分のことだ!」と思わせるコピーになっています。

技法7:語呂の良さを活かす

キャッチコピーにおいて、語呂の良さ、リズム感の良さは、受け取りやすさやコピーの流通に影響を与えます。
具体的なテクニックとしては、以下のものがあります。

①3つの言葉を並べる
⇒プレゼンでも、要点は3つにまとめることが多いように、3つの言葉を並べると、リズム良く感じ、記憶に残りやすくなります。

②韻を踏む
⇒言葉尻の音をあわせることを「韻を踏む」といいます。韻を踏むことでフレーズにリズムが生まれ、受け手にとって気持ちよさが生まれます。

③対句にする
⇒対句とは、並べられた2つの句が、形や意味上で対応するように並べられた表現形式のことです。本来は、歌詞やことわざに用いられる技法ですが、
キャッチコピーで用いることで、より具体的なイメージがしやすくなります。
主に、以下4つのパターンがあります。
(a)「Xである◯◯、Xでない◯◯」
(b)「Xな◯◯、Yな△△」
(c)「Xな◯◯ Yな◯◯
(d)「◯◯をXするな、◯◯をYせよ」「◯まるをXするな、△△をXせよ」

④同語反復して意味を強くする
⇒同じ言葉をパターンに沿って反復すると、意味に複雑な味わいが出て、言葉の力が強くなります。
主に、以下の4つのパターンがあります。
(a)「◯◯は、◯◯」型
(b)「たかが、されど」型
(c)「◯だから◯」「◯から◯」型
(d)「◯でないことが◯」型

「語呂の良さ」を上手く活かしたコピーの例

①3つの言葉を並べる
『うまい、はやい、やすい』(株式会社吉野家ホールディングス)

『友情、努力、勝利』(集英社・少年ジャンプ)

『ドトール、のち、はれやか』(株式会社ドトールコーヒー)

『あなたと、コンビに、ファミリーマート』(株式会社ファミリーマート)

②韻を踏む
『わたしらしくをあたらしく』(LUMINE)

『インテル入ってる』(インテル株式会社)

③対句にする
『金持ち父さん、貧乏父さん』(ロバート・キヨサキ/2001年出版)

『覚醒剤やめますか それとも人間やめますか』(一般社団法人 日本民間放送連盟)

『愛に雪、恋に白』(JR東日本・JR SKI SKI)

『NO MUSIC NO LIFE』(タワーレコード株式会社)

④同語反復して意味を強くする
『ほしいものが、ほしいわ』(西武百貨店/糸井重里作)

『愛だろ、愛っ』(サントリーホールディングス株式会社/ザ・カクテルバー/1993年)

技法8:組み合わせて化学変化を起こす

キャッチコピーにおいては、普段絶対に使わないようなワードの組み合わせから、名作コピーが生まれることがあります。
具体的なテクニックとしては、以下のものがあります。

①異質な言葉を掛け合わせる
⇒普段は、一緒に使わない言葉を掛け合わせて使うことで、場合によっては、意外性のある強いコピーが生まれることがあります。

②合わない名詞と動詞を組み合わせる
⇒普通は結合しない名詞と動詞を組み合わせることで、時に、深い意味を持つコピーが生まれることがあります。
イメージとしては、以下のようなものです。
◆一般的
仕事をする
仕事をこなす

◆合わない動詞と組み合わせる
仕事を読む
仕事を歩く
仕事を食べる
仕事を抱きしめる など

③意表を突いてドキッとさせる
⇒映画や小説、ドラマでもそうですが、面白いストーリーには、「オドロキ」が含まれています。
キャッチコピーでも、途中まで読んだことから予想される展開と異なると、受け手は興味をもちます。

「組み合わせて化学反応を起こしている」コピーの例

①異質な言葉を掛け合わせる
『おいしい生活』(西武百貨店/糸井重里作/1982年)

『愛は食卓にある』(キユーピー株式会社)

『想像力と数百円』(新潮文庫/糸井重里作)

②合わない名詞と動詞を組み合わせる
『水と生きる』(サントリーホールディングス株式会社)

『味の作曲家』(日本食研ホールディングス株式会社)

『恋を何年、休んでますか。』(伊勢丹百貨店/眞木準作)

『牛乳に相談だ。』(中央酪農会議)

③意表を突いてドキッとさせる
『無くしてわかる有り難さ。親と健康とセロテープ』(ニチバン株式会社/仲畑貴志作)

『本日の授業、殺し合い』(映画「バトル・ロワイアル」/2000年)

『昨日は、何時間 生きていましたか。』(PARCO)

技法9:読み手に考えさせる

人がキャッチコピーに触れるのは、一瞬のことです。ふと見た時に、思わず考えてしまうようなコピーは、人の記憶に残りやすく、人づてで広がりやすくなります。
具体的なテクニックとしては、以下のものがあります。

①問いかけてみる
⇒人間には、何か問いかけられると「自然と答えを探してしまう」という習性があります。
その性質を利用して、キャッチコピーを通じて受け手に問いかけることで、コピーについて考えてもらうことができ、結果的に記憶に残りやすくなります。

②つぶやいてみる
⇒誰かがつぶやいたような言葉でキャッチコピーを書くと、受けては、あたかも自分がつぶやいたように感じることがあります。
特に、共感を狙ったコピーでは、つぶやき形式の言葉が有効です。

③正直に伝える
⇒自らのマイナス部分を「正直に伝える」と、逆に信用してもらえるケースも少なくありません。デメリットがあるときには、それを敢えてオープンにするのもひとつの技術です。

「読み手に考えさせている」コピーの例

①問いかけてみる
『なぜ年齢を聞くの』(伊勢丹百貨店/土屋耕一作/1975年)

「きれいなお姉さんは、好きですか?』(パナソニック株式会社)

②つぶやいてみる
『そうだ、京都行こう』(JR東海)

『お、ねだん以上。』(ニトリ株式会社)

③正直に伝える
『まずい、もう一杯!』(ニチバン株式会社/仲畑貴志作)

『またヘンなものを、つくってしまった。』(富士急ハイランド)