電通編 – TVCMのつくりかた


電通インターンの過去問では、「特定の商品やサービスを提示して、TVCMを考える」形式の問題が、よく出題されています。

今回は、以下の例題をもとに、5つのステップで回答を考えてみましょう。

例題(2017年夏・出題)

一度見たら記憶に残るような、「扇風機X」のTVCMと、そのキャッチコピーを考えて下さい。

STEP1:顕在的な課題の把握

問題文から、課題となり得る箇所を把握します。
TVCM問題の場合、「どんな商品・サービスに関して、どんな目的でCMをつくるのか」という部分が「課題」となります。
ほとんどの問題の場合は、問題文に「◯◯の商品に対して、◯◯のためのCMをつくる」ということが提示されているので、
該当箇所をそのまま抜き出します。

「顕在的な課題」の導き方(具体例)

今回の例題の場合は、問題文にある「記憶に残るための「扇風機」のCM」という部分が、
そのまま課題となります。

◆顕在的な課題◆

記憶に残るための、「扇風機X」のCMを作る。

STEP2:潜在的な課題の把握

問題文で提示されている「顕在的な課題」は、解決するための具体的な方法が提示されていないため、
そのままではアイデアを考える上での参考になりません。

従って、問題文で提示されている「顕在的な課題」を「潜在的な課題」に転換することで、
TVCMの軸となるポイントを決めましょう。

「潜在的な課題」の導き方(具体例)

今回の顕在的な課題は、「記憶に残るための扇風機のCM」です。
そもそも人は、どのようなものを「記憶に残す」でしょうか。

人は、「感情を動かされたこと」を記憶に残すという特性があります。
たとえば、「ドラマの感動したシーン」や「お笑い芸人のコントで息が切れるほど笑ったとき」などです。

感情を動かされた結果の人間の反応としては、涙、笑い、感動などがありますが、
それらの感情全てに共通しているのが「オドロキ」です。

人は、感情を動かされる前に、必ず驚いています。

例えば、ドラマで「お父さんが死んだと思っていたのに、実は生きていた」というシーンで感動する場合は、
「死んだと思っていたのに、生きていた」ことに対する「オドロキ」を感じた後に、感動しています。

つまり、人の記憶に残るTVCMを作るためには、何らかの「オドロキ」の要素を含める必要があるということです。

◆潜在的な課題◆

「オドロキ」のある扇風機のCMを作る。

STEP3:CMのコアとなるアイデアを決める

今回解決するべき「潜在的な課題」を把握したら、次に、TVCMの具体的な表現方法を考えていきます。
具体的には、「潜在的な課題を解決するために必要なCM表現」です。
ドラマ風にする、アニメ風にする、日常生活の一コマ風にするなど、具体的な表現方法のアイデアを決定します。

「TVCMのコアとなるアイデア」の考え方(具体例)

今回の対象である「扇風機」において、オドロキを生み出せる要素には、どんなものがあるでしょうか?
「オドロキ」の要素を考えるために、まずは「扇風機」に対する常識を考えてみましょう。

◆扇風機の常識
夏に使う
「涼しい」と言う
部屋で使う
4~5枚の羽根がついている
コンセントをつないで使う
一部屋に一台ある
誰の部屋にでもある
安い、誰でも購入できる
静か
リズム風がついてる
弱/中/強で調整できる
床に置いて使う
自宅に帰ってきてすぐに使う
小学生~高齢者まで誰もが使う
昼寝をしながら
田舎の人も都会の人も使う
暖かい地域で使う

要は、上に挙げた常識を否定した状況を作れば、それが受け手にとっての「オドロキ」となります。
次に、扇風機に対する常識を否定して、「オドロキ」の要素を作ってみましょう。

◆扇風機の常識を否定して「オドロキ」を生み出す
冬に使う
「あったかい」と言う
家の外で使う
羽根がついていない(ダイソン)
コンセントがない
一部屋に3台ある
誰の部屋にも置いてない
裕福な人でないと買えない
音がうるさい
リズム風のリズムがおかしい
風の強さを調整できない
机の上において使う
家から出る前に扇風機を使う
犬が使う
北極で使う

たとえば、上の中で「あったかい」というオドロキは、どうでしょうか?
扇風機を使っているのに「あったかい」というシーンを見ると、違和感を感じると思います。
その違和感を最後まで引きずって、最後に種明かしをすることで、受け手は「オドロキ」を感じます。

また、扇風機を使って「あったかい」というのは、単なるオドロキだけでなく、実際に増えている使い方です。
なぜかというと、冬に、暖房器具と扇風機を併用すると、部屋の暖められた空気の循環が良くなり、電気代の節約になるからです。
そこで、「あったかい」というオドロキの要素を含めつつも、「暖房器具と扇風機の併用で、電気代がお得になる」という
情報も伝えられる「あったかい」という表現をコアのアイデアとします。

◆TVCMのコアとなるアイデア◆

扇風機の風を浴びながら「あったかい」と呟くシーン

STEP4:TVCMを観た人に誘起させたい感情を決める

TVCMのコアとなるアイデアを決めたら、次に「TVCMを観た人に誘起させたい感情」を決めます。
なぜなら、観た人に誘起させたい感情によって、TVCMに必要な細かい設定が変化するためです。

感動させたいのであれば、家族や友情、恋愛などの背景を使う必要があり、
笑わせたいのであれば、コント形式や、ネタを埋め込む必要があります。

コアとなるアイデアの範囲内で、TVCMの細かい設定を決めるために、観た人に誘起させたい感情を決めます。

「TVCMを見た人に誘起させたい感情」の考え方(具体例)

「扇風機の風を浴びながら『あったかい』と呟くシーン」を見て、誘起させたいのはどのような感情でしょうか?
ここまでの流れを踏まえると、今回のCMは、「扇風機を使って『あったかい』」というオドロキを使って、「冬に扇風機を使うことで、電気代がお得になる」ことを
伝えるためのTVCMです。

従って、今回のTVCMの結果、受け手に狙っているのは「暖房器具と併用して扇風機を使ってもらうこと」です。

冬の間は普通、扇風機は押し入れの奥にしまってあると思います。
今回のTVCMを観た人に、押し入れの奥の扇風機を引っ張り出して、試しに暖房器具と併用してもらうことが誘起させたい行動です。

その時に受け手が抱く感情としては、「試しにやってみよう」という気持ちだと思います。

◆TVCMを見た人に誘起させたい感情◆

「押し入れから扇風機を取り出してみようかな」

STEP5:TVCMの具体的なストーリー・設定を決める

ゴールイメージまで定めた段階で、CMとなる映像やCMストーリーを考えます。
STEP1~STEP4までで考えたことをTVCMの技法を用いて映像化・ストーリー化します。
TVCMの技法については、下記からチェックして下さい。

「TVCM」のストーリー・構成の考え方(回答例)

STEP1~STEP4を踏まえると、今回のCMに含めるべき要素をとしては、主に以下の2つです。
「扇風機に向かって『あったかい』といっている要素」
「扇風機を押し入れから取り出したくなる要素」
上記2つの要素を含んだストーリーを考えます。
まず、扇風機に向かって「あったかい」といっているシーンは、どのような背景・状況であれば、「オドロキ」を生み出せるでしょうか。
例えば、夏の雰囲気を感じる部屋に扇風機の風を浴びながら「あったかい」といっているシーンが考えられます。
この映像を見た時、受け手は、「なぜ扇風機に向かってあったかいといっているんだろう」という違和感を感じます。
その後のシーンで、窓の外の背景を映して「実は、冬だった」という展開にすることで、「夏だと思っていたら、冬だった」という驚きを作ることができます。

また、「扇風機を押し入れから取り出したくなる要素」を作るために、「暖房器具と扇風機を併用することで暖房効率がアップする」ことを図示する映像も追加します。
驚きを与えた後に、納得感を与えることで、より行動に移しやすくなります。

◆TVCMの回答例◆

内定者の回答集

一度見たら記憶に残るような、「扇風機X」のTVCMと、そのキャッチコピーを考えて下さい(’17年/Aコース)

「なんでも消せる消しゴム」が発売されます。あなたなら、一体何を消してみたいですか?あなたが消してみたいものをテーマに、「なんでも消せる消しゴム」のTVCMを考えてみてください。(’16年/Aコース)