【採用への影響は?】 ADKが世界最大の代理店WPPと関係解消!?

先日(17/10/2)、日本第3位の広告代理店ADK(アサツー・ディ・ケイ)がこれまで20年近く提携関係にあった世界最大の広告代理店WPPとの関係を解消し、新たにアメリカのベインキャピタル傘下に入る方針を発表しました。

今回は、広告業界を賑わしているADKの方針変更の原因と、このことが就活生に与える影響などを考えていきます。

1.結論


結論から言うと、ADKが世界最大の広告代理店グループ・WPPと提携解消し、米投資ファンドのベインキャピタルと提携することで、ADKの新卒採用はインターネット広告関連を中心により活発化し、昨今の「働き方改革」も社内で進む可能性があります。

なぜならADKの方針変更の理由には、インターネット広告分野の強化や、働き方改革推進のためのシステム投資、という目的が含まれている為です。

ではここからはADKの方針変更の理由や、WPPおよびベインキャピタルとの関係などについて詳しく解説していこうと思います。

2.WPPとは?そしてADKとの関係


あまり耳慣れない社名かも知れませんが、WPPは英ロンドンに本社を置く、世界最大の広告代理店グループです。

WPPは元々は「ワイヤー&プラスチック社(Wire Plastic Products)」という名のメーカーとして創業しましたが、その後マーケティング業を本業とし、M&Aや買収を繰り返し、広告代理店として巨大化していきました。

そして1998年には日本の大手広告代理店であるADKと資本・業務提携を結びました。つまりADKとWPPの関係は約20年間も続ているのです。

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3.ADKがWPPと提携を結んだ理由


そもそもADKは、なぜ約20年前に世界No.1の広告代理店・WPPグループと手を結んだのでしょうか?

当時ADKがWPPとの提携した理由は以下の3点でした。
・世界最大のWPPグループと共同で会社を設立し、グローバル化したい
・より幅広く、安く媒体(メディア)を調達したい
・外資系に強いWPPと共にクライアントを増やしていきたい

■ADK発表原文

当社は、平成10年8月3日に世界的大手広告業者であるWPPグループとの間で本資本・業務提携に係る契約を締結し、当社とWPPグループの広告事業会社との間でジョイントベンチャーの設立、媒体取引の協力、広告主の共同開拓等をはじめとする取組みを進めてまいりました。

※引用:WPPグループとの資本及び業務提携解消に関するお知らせ

以上のような理由から、WPPはADKの株式を約25%保有し、逆にADKもWPPの株式を2.43%保有し、提携関係を結ぶことになりました。

4.なぜADKはWPPと提携関係を解消したいのか?


ではなぜ今ADKは約20年にも及ぶWPPとの提携を解消したいのでしょうか?

理由を簡潔に言えば、実際にはADKにとってWPPとの提携にメリットが少なかったからです。

ADKがWPPとの提携を解消したい理由は以下の3点でした。
・WPPとの提携による事業シナジー(連携)が無い
・提携によりROE(資本効率)が低い等の問題が大きくなっている
・ADKとWPPでは、目指す経営スタイルが異なる

■ADK発表原文

しかしながら、現在に至るまでの約20年間を振り返ると、本資本・業務提携の開始当初こそ、コーポレート・ガバナンス体制の整備や資金の効率運用などの面で一定の成果を生んだものの、2その後は当社とWPPグループ両社の利益に資する協業の具体策を見出すことはできず、本資本・業務提携において企図された、協業による相互利益の拡大という事業上のシナジーを特段実現するには至りませんでした。さらには、本資本・業務提携の一環として当社が保有するWPP plcの株式(以下「WPP株式」といいます。)の価値は、当社の事業運営に必要なバランス・シートの規模と比較して過大となっており、これに起因する低い資本効率(ROE)や資本構成が問題になっておりました。そして、足許の広告業界の急激な変化に対応するための中長期的な経営戦略についても、当社とWPPグループとの間では、目指すべき事業モデルとその実現に必要な事業パートナーや投資分野について、考え方の違いが顕在化してきており、当社において、事業環境の変化に耐えうるだけの迅速かつ機動的な意思決定が難しい状況が目立つようになりました。

※引用:WPPグループとの資本及び業務提携解消に関するお知らせ

5.新たなパートナー・ベインキャピタルとは?


ADKがWPPに変わる新たなパートナーとして招聘しようとしているのが、アメリカの大手投資ファンド・「ベインキャピタル」です。

あまり耳慣れない社名かも知れませんが、実はベインキャピタルは我々がよく知る多くの会社の大株主になっています。

例えばベインキャピタルは以下の会社の大株主となっており、経営権を握っています。
・すかいらーくグループ(※39.39%株を保有)
・ドミノ・ピザジャパン(※100株を保有)
・大江戸温泉物語(※約500億円で買収)
・雪国まいたけ(※51%株を保有)

ベインキャピタルは、コンサルティングファームであるベインアンドカンパニー出身者らによって創業された投資ファンドで、成長余地や回復余地のある会社に対して投資、もしくは買収し、その会社に経営陣を送り込み、売上や利益を高める事業を行っています。

6.ADKがベインキャピタルと提携したい理由

ではなぜADKがベインキャピタルと新たな提携関係を結びたいと考えているのでしょうか?

ADKがベインキャピタルと提携したい理由は以下の2点です。
・広告が本業ではないが、豊富な事業パートナーを有している
・日本での実績も豊富である

■ADK発表原文

事業面においてより中立的なパートナーであり、豊富なネットワークを有するベインキャピタル・グループの支援を受けながら、様々な事業パートナーと連携して大胆な改革施策を速やかに推進していくことが、当社の企業価値・株主共同の利益の最大化という観点から最善の選択であると判断いたしました。

6.現在ADKが抱えている本当の課題とは?


前章までで、ADKがWPPとの提携関係を解消し、新たにベインキャピタルと手を結びたい理由を簡単に説明しました。ここではその理由についてもっと深く解説しようと思います。

(1)事業転換と事業成長


現在、ADKは電通、博報堂に次ぐ日本第3位の広告代理店ではありますが、この上位2社と大きく水をあけられています。

これまで売上の大半を支えてきたテレビ広告の分野が徐々に下がり始めているのに対し、2015年には日本市場で1兆円を超すようになったインターネット広告の分野で、電通、博報堂に大きく後塵を拝している格好です。

具体的には、電通が電通テックというネットに軸足を置いた主力会社を設立し、海外においてもネット広告会社をM&Aで買収を繰り返し、さらには最近では楽天とも提携するなどインターネット分野に力を注いでいます。

また、博報堂DYホールディングスにおいてもDAC(デジタルアドバタイジングコンソーシアム)を子会社に置き、さらに戦略事業組織「kyu」を軸に海外M&Aを加速させる動きを見せています。

これら電通、博報堂に比べ、ADKはインターネット広告においても、海外広告会社のM&Aにおいても、これと言った手を打てていないのが実情です。

日本の広告市場では第3位という立場ではありますが、実際には上位2社と大きく差を付けられている状況で、ADKとしてはこれ以上の成長に限界を感じているため、これまで様々な日本企業へ投資を行い、実際に企業成長を高めることに長けたベインキャピタルを必要としているのだと思います。

<参考記事>
【企業分析】財務諸表からADKを読み解く!ADKの将来性は!?

(2)組織改革


近年、電通での過労死自殺問題が発端となり、広告業界も働き方の改革を強く迫れるようになりました。

そもそも自ら技術や製品を持たない広告業界では、クライアント(顧客)に対してNOとは言いにくい業界で、制作過程を中心に長時間労働がいわば当たり前となっている業界でした。

しかし、前述の働き方改革など近年では長時間労働への風当たりが日に日に強まっていることもあり、長時間労働に頼ることのない「効率的な働き方」が求められているのです。

この「効率的な働き方」は、組織全体の意識を変えることは当然ですが、従業員の働き方を「見える化」し、管理できるシステムも必要とします。(※多くの従業員が働くADKでシステムを作るには多くの予算が必要です)

その為、組織改革およびシステムへの投資をADKは積極的に行いたいという目的もあり、システム投資へ理解も知見もあるベインキャピタルを必要としているのです。

<参考記事>
広告代理店出身者が語る仕事内容。ホントにきつい?

7.ADKの方針変更が採用に与える影響


ここまでADKがWPPと提携解消し、ベインキャピタルと手を結びたい理由、さらにはADKが抱えている現状課題について解説してきましたが、実際の採用にどのように影響してくるのでしょうか?

採用に与える予測は以下の通りです。
・成長するインターネット広告関連の採用強化
・関連子会社の設立による、新規採用や出向者の創出
・海外子会社のM&A/買収により外資クライアントの業務創出の可能性
・人事システム強化による働き方のスリム化

もちろん以上に挙げたことが、ベインキャピタル提携によりすぐに実現される訳ではないと思いますが、ADKが現在課題として抱える問題をベインキャピタルも解決しようと動くハズですので、長期的には果たされると考えられます。

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ABOUTこの記事をかいた人

広告マン

私は有名な大手2社ではありませんが、国内上位5社に入る広告代理店で営業(アカウントエグゼクティブ)として3年前まで働いていました。その経験から、あまり世の中では語られていない広告代理店の具体的な仕事内容や実際の過酷さについて正直な記事を書いていきます。