皆さんは「フェルミ推定」という言葉をご存知でしょうか?すでに就職活動を経験された方は耳にしたことがある用語だと思います。
結論から言うと、フェルミ推定とは「実際に調べるのが難しそうな数量問題を論理的に推論し、短時間である程度確からしいと思われる答えを出す」数量問題です。
フェルミ推定は就職活動においても頻繁に聞かれるので、あらかじめ対策しておいた方が良いでしょう。
就活の選考において大切なのは、「より実際の答えに近い数値を出す」というよりは、「回答するにあたって適切な切り口を見出し、論理的に計算を組む」ということです。もちろん当てずっぽうで数字を答えるのではなく、自分なりの根拠や論理を提示することが大切だと考えてください。
今回は、いくつか例題と実際の回答例を通してフェルミ推定について理解を深めて頂ければと思います!
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目次
1.4STEPで考える!フェルミ推定の思考手順
フェルミ推定の回答においては以下に示すようないくつかの段階を踏むのが重要です。いきなり答えとなる数字を出すのではなく、段階的に解を導くことで、より納得感のある解を相手に伝えることが出来ます。
【STEP1】前提条件の確認
フェルミ推定では、まず問題の前提を相手に示すことが大切です。
例えば「新幹線で購入されるコーヒーの杯数は?」という問題を出題されたとします。
その際「新幹線とはどこの新幹線を指すのか?」、「期間は?1日なのか、1年なのか。」、「コーヒーはカップコーヒーを指すのか、缶コーヒーを指すのか、両方なのか。」などの答えに関わる条件が明示されていません。
従ってこれらの条件を相手に確認する、あるいは自分で設定する必要があります。
【STEP2】アプローチ方法の設定
次にどのようなアプローチで考えれば求められる数値が出るかを考えます。
具体的には、どのような式で考えれば答えが出せそうか、という方針を定めます。
代表的な例としては人口ベースで考えるもの(人口×利用率など)や面積ベースで考えるもの(単位面積あたりの個数×全体面積)などがあります。
【STEP3】仮説によるモデル化
ここまでアプローチの方針を立て、どのような式で考えるかということを定めました。
次にこの式をより精緻化するためにモデル化します。式の各項を因数分解するイメージです。
例えば、「人口×所持率」という式において「人口」を年代でセグメントに分け(0〜20歳・20〜60歳・60歳〜)、各項目で所持率を推測して合計します。この段階を踏むことによって、より回答が論理的で納得感を得られるものになります。
【STEP4】計算の実行
精緻化された式を立てることができれば、あとは各項に数字を当てはめて計算を実行するだけです。ここでは計算のスピードが求められます。そのため、各項の数字を概算しやすいような数字に設定するほうが良いと考えられます。
2.フェルミ推定の例題・回答・計算方法
フェルミ推定の代表的な例題(面積・人口をベースにして考えるもの)とその回答例をいかに紹介しています。フェルミ推定における実践の参考にしてください!
問1:東京にコンビニはいくつあると思いますか?
回答:東京にコンビニは5000店ほどあると考えられる。
前提:
東京=東京都内全域を指すこととする。コンビニは駅の中にあるものも含める。
計算式:
(①単位面積あたりのコンビニの数)×(②東京全体の面積)
計算過程:
(A)1つの駅の近くにあるコンビニの平均個数
渋谷駅・新宿駅のようなターミナル駅の付近には駅の中も含め15〜20店ほどコンビニが存在すると考えられる。一方で都心から外れた駅では2〜5店ほどと考えられる。これらを分けて考えるのは難しいため、ここでは1つの駅につき駅の中も含め平均で10店舗コンビニがあるとする。
(B)東京都内の駅同士の間隔
東京都内の駅同士の間隔は、電車の移動速度と一駅を移動する際の時間から概算できる。電車の移動速度を40km/h、一駅を移動するのにかかる時間を3分とすると
40(km/h)×3/60(h)=2kmと計算できる。よって東京都内の駅同士の間隔は2kmとする。
(A)・(B)の情報から1つの駅を中心とする1辺2kmの正方形の中には平均で10店のコンビニがあると考えられる。従って、2(km)×2(km)=4平方キロメートルの中に10店舗あるため、①平方キロメートルあたりのコンビニの平均個数は2.5個と考えられる。
②東京都の面積は2000平方メートル強である。山地など一部コンビニが出店できていないエリアがあると考えられるため、ここで東京都の面積を2000平方キロメートルとして考える。
以上より、(①単位面積あたりのコンビニの平均個数)×(東京都の面積)
=2.5(個)×2000(平方キロメートル)=5000個
したがって東京都内のコンビニの数は5000店ほどと考えられる。(回答は以上)
(※補足)
実際に東京都内のコンビニの店数をインターネットで調べてみると(参考:http://mitok.info/?p=75099)約7000店と回答よりも多いです。
都心には推定したよりも多くのコンビニが密集していると考えられます。単位面積あたりの個数を求める面積ベースでのフェルミ推定の問題として参考にしてください。
問2:日本で、1日に何本のボールペンが売れると思いますか?
回答:1日に135万本程度のボールペンが売れると考えられる。
前提:
ボールペンは油性・水性と区別しないものとする。消費された本数≒売れた量と推測できるため、ボールペンの1日の消費量を求める。
計算式:
(各人口セグメントの年間消費本数)×(セグメントごとの人口)÷365
計算過程
(A)日本の人口をいくつかのセグメントに分ける。
前提として、日本全体の人口を1.2億人とする。
まず年代で大きく①小学生〜大学生(6〜22歳)、②労働年代(23〜65歳)③シニア(65歳以上)
さらに、②の労働年代を主婦とそれ以外に分解する。②−1労働者、②—2主婦、と置き換える。
次にそれぞれのセグメントにおけるおよその人口を考える。
まず①の若年層について。日本の若い世代1学年につき約100万人と考える。(少子高齢化で他の世代よりもやや人口が少ないと推測できるため)
したがって、①のセグメントにおける人口は100(万)×16=1600万人と考える。
次に③のシニア層は日本の人口の1/4と言われている。
したがって、②のセグメントにおける人口は1.2(億)×25(%)=3000万人と考える。
最後に②の労働人口は日本の人口全体から①、②のセグメントの人口と0〜6歳の人口を差し引いたもの。0〜6歳の人口は①と同様にして600万人と推測できる、
したがって、③のセグメントにおける人口は12000(万)-①1600(万)-③3000(万)-600(万)=6800万人と考える。さらに、この世代の半分が女性で、女性の半分が主婦と仮定する。
これより、②−1労働者は5100万人、②—2主婦は1700万人と考える。
(B)各セグメントにおけるボールペンの年間消費量を推測し、人口全体の年間消費量を求める。
一人あたりのボールペン所持数と消費頻度(1本を何ヶ月で消費するか)を仮定して求める。
①小学生〜大学生世代
この世代は所持本数、消費頻度ともに高いと考えられる。所持数を一人2.5本、消費頻度を4ヶ月とする。すなわち、一人あたりの年間消費量は2.5×3=7.5本
②—1労働者
仕事で日常的に利用することが考えられるが、学生と違い黒色以外のボールペンの使用が減ることが考えられる。所持数を2本、消費頻度を4ヶ月とする。すなわち、一人あたりの年間消費量は2×3=6本
②−2主婦
所持本数、使用頻度ともにあまり多くないと考えられる。所持本数を1本、使用頻度を6ヶ月とする。従って一人あたりの年間消費量は1×2=2本
③シニア
今回のセグメント分けの中でもっとも所持本数、使用頻度が少ないと考えられる。所持本数を1本、使用頻度を12ヶ月とすると、一人あたりの年間消費量は1本
これらの情報から、ボールペンの年間消費量(本)を計算する。
7.5(本)×1600(万人)+6(本)×5100(万人)+2(本)×1700(万人)+1(本)×3000(万人)
=49000万本=4.9億本となる。
(C)1日分の消費量を求める
49000(万本)÷365=約135万本
これより、一日に売れるボールペンの量は約135万本と考えられる (回答は以上)
(※補足)
インターネットなどで調べても性格なデータは得られませんでしたが、実際には回答よりもやや多いボールペンが購入されているようです。
個人ベースでの利用に焦点をあててフェルミ推定しましたが、実際には法人で購入される場合などが考えられるため数が多くなると考えられます。人口ベースでのフェルミ推定の問題として参考にしてください。
問3:1日に何人の人が渋谷駅を利用すると思いますか?
回答:
1日に155万人の程度の人が渋谷駅を利用すると考えられる。
前提:
回答の利用者を「渋谷駅で電車に乗る人」と定義する。渋谷駅の乗り入れ線全てを考える。
計算式:
(①電車1本に乗る人数)×(②1日の電車の本数)×(③線路数)
計算過程
通勤ラッシュ時は一つのドアから25人が乗り込み、それ以外の時間は10人が乗り込むとする。
電車は10両編成で1両につきドアは4つと考えると、電車1本に載る人数は
通勤ラッシュ時:25(人)×4(ドア)×10(両)=1000人
それ以外の時間:10(人)×4(ドア)×10(両)=400人
(②1日の電車の本数)も通勤ラッシュ時とそれ以外の時間に分けて考える。
電車の運行時間は5〜24時の19時間とする。
通勤ラッシュ時は7〜10時、18〜21時の6時間、それ以外の時間は19-6=13時間とする。
通勤ラッシュ時は20本/時間、それ以外の時間は10本/時間の間隔で電車が来ると考える。
したがって1日の電車の本数は
通勤ラッシュ時:20(本/時間)×6(時間)=120本
それ以外の時間10(本/時間)×13(時間)=130本
(③線路数)
渋谷駅の線路数を考える。乗入れ線は大きくJR、地下鉄、私鉄と分けられる。
JR線の線路は山手線の上下と湘南新宿ライン・埼京線の上下で合計4つです。
地下鉄は東急東横線、田園都市線、副都心線、、半蔵門線、銀座線の合計5つ
私鉄は京王井の頭線の1つ。したがって、合計10の線を考えなければならない。
しかし銀座線と京王井の頭線はそれぞれ5両編成であるため、2つ合わせて他の線1つ分の利用者数と推測される。したがって計算の際には線路数は9とする。
①・②は通勤ラッシュ時とそれ以外の時間に分けていることを考慮して計算を実行すると、
{(通勤ラッシュ時の利用者数)+(それ以外の時間の利用者数)}×9
={1000(人)×120(本)+400(人)×130(本)}×9(線)=1,548,000 (回答は以上)
(※補足)
実際にWikipediaで2015年度の1日あたり平均利用者数(乗車人員)を調べてみると、
372234(JR)+107691(銀座線)+261240(半蔵門線)135383(副都心線)+228068(東横線)+337776(田園都市線)+174251(京王井の頭線)=1,616,643
約162万人となっており、ある程度の精度のある回答であることがわかります。
3.まとめ
フェルミ推定は以前はコンサルティングファームをはじめとした一部の企業で選考に取り入れられていました。
しかし最近ではコンサルティングファームに限らず、様々な企業において選考でフェルミ推定が出題されるようになっています。初見で十分な回答をするのは難しいと考えられるため、何らかの対策をしておくべきです。
また、フェルミ推定をする際には答えの精度そのものよりも切り口の適切さや数字の根拠、式やモデルの論理性を見られていることを忘れないようにしましょう。フェルミ推定で見られる能力が他のビジネスシーンでも汎用性があるかどうか、が重要視されています。
この記事が皆さんにとってフェルミ推定の理解を深める一助になれば幸いです。