どこまで知ってる? CM表現の9タイプ

広告代理店、制作会社など広告業界を志望する就活生であれば、将来CMの制作に携わってみたいと思う人も多いかと思います。それでは普段目にするCMにはどのようなタイプ、分類があると思いますか?

実は、CMに「表現タイプ」、「表現形式」といった決まったものはありません。しかし企画作業の表現アプローチに役立てるために、今回は敢えて分類してみます。

CMにおいて「何をどう伝えるか」という手法は数限りなく存在しますが、伝えるべき内容を短い時間でいかに効果的に伝えるか、という伝達手法、すなわちCM独特の表現手法はこれまで多くの広告人が挑戦してきたテーマです。

今回は、現在皆さんが目にするCMを例に、CMの表現タイプについて解説していきます。

1.実証型

「実証型」は、CMの王道とも言うべきタイプで、商品・サービスの特徴を映像や音声よって実証するCMです。CMは商品情報であるという本質的な問題に正面から取り組むアプローチで、上手くいけば、消費者の購入に直接結びつきます。

ただし、この実証型CMの注意点は、商品の独りよがりになることも多いという点です。CMの作り手側はもちろん商品の内容や特徴を知り抜いてますが、受け手側である視聴者は初めて見る映像、内容であり何のことがさっぱり分からないという事態も起き得ます。

つまり、作り手側の「良く見せたい!」という想いが強くなり過ぎれば、逆効果になる場合もあるのです。

15秒もしくは30秒という時間的制約を考えると、実証型CMには企画力と表現力(技術)が要求されます。

<実証型CM例>

Panasonic「エボルタ」

パナソニックの乾電池「エボルタ(EVOLTA)」のCMシリーズは実証型CMの典型例です。

パナソニックのオリジナルロボット・エボルタくんが、乾電池のみの電力でどこまで活躍できるかを表すものです。

これまでロボット・エボルタくんは、フィヨルド1,000m登頂チャレンジ、世界最長距離鉄道走行チャレンジ、世界最長距離 有人飛行チャレンジなどの挑戦を成功しています。

長距離、長時間で、パワーを必要とするチャレンジをクリアすることで、電池「エボルタ」がどれくらいスゴイのかを、わざとらしくなくアピールしている優れたCMです。

通常版

2.イメージ型

イメージ型CMは、商品を具体的に説明せずに、印象的な映像・音楽によって視聴者の感性に訴えるタイプのCMです。

企業CMなど直接商品に触れないCMはこのイメージ型もしくはブランディング型が多いです。

化粧品やスキンケアのCMでよく見られるのは商品の説明よりも、美を探求する感情や感性を刺激する強烈なイメージで間接的に商品名やブランド名を記憶させる手法です。

イメージ型のCM制作の基本は「センス」です。その時代にマッチしたセンスが必要で、映像、音楽、色彩、ファッション、言語などすべてにおいてひらめくセンスです。またCMではそうしたセンスと合わせて一歩進んだ先進性も要求されます。

また、このタイプのCMは音声も重要なポイントです。特に映像と音楽は切っても切り離せない関係で、人間の感情や感性に対する影響は大きいです。

さらに、優れたコピー(言葉)によってひとつの世界を生み出すCMもあります。言葉はその人それぞれの受け止め方で、人間の心に深く響くものです。

優れたコピーは、奥深く、文学的で、哲学的でもあり、それでいてポピュラリティ(大衆性)のある言葉でもあります。いつまでも頭に残る言葉、イメージ型のCMはそんなCMでなければなりません。

<イメージ型CM例>

アマゾンジャパン「amazonプライム」

赤ちゃんが家の飼っている犬(ゴールデンリトリバー)を怖がるのに対して、ライオンのぬいぐるみには嬉々として喜ぶ。そんな状況を見かねたお父さんがamazonプライムを利用して、ライオンのタテガミを購入すると、その日のうちにライオンに変身した犬に赤ちゃんが喜ぶというCM内容です。

皆さんにもお馴染みのCMかと思いますが、実はこのCMでは一切言葉や字幕は登場しません。映像と音楽のみで構成されていますが、それでもamazonプライムというサービスを利用して家族が幸せに暮らす姿を印象的に訴えています。

大手版

3.タレント・有名人型

タレント(有名人)型CMとは、有名なタレントを起用することによって注目を引き、そのイメージのインパクトの強さに便乗して商品や企業名をアピールするタイプのCMです。

有名な俳優、歌手、アイドルのほかに、著名人、スポーツ選手などの起用があります。CMだけでなく、店頭ポスターやPOPにもその顔が並ぶため、PR効果は相乗効果で倍増されます。したがって日本のCMではこのタレント型が主流です。

タレントを1人だけ起用して印象付けるケースもありますが、複数の個性あるタレントを起用する場合もあります。前者は推奨広告に多く、校舎はドラマタイズ型に多くみられます。

いずれにせよ、タレントを起用する場合、企業の代弁者とするか、ユーザー側の代弁者とするかは広告代理店や制作会社、さらにはクライアントで大きな議論の的となります。

また、タレントによっては、企業側の代弁者になりたくないという場合もありますし、商品を直接手に持つことを拒否する人も稀にいます。

<タレント型CM例>

ソフトバンク「SUPER STUDENT」

カナダ人歌手・ジャスティンビーバーが出演するソフトバンクの「SUPER STUDENT」のCMは、タレント型CMの代表例です。

なぜなら「SUPER STUDENT」は、学生向けのケータイサービスで、日本の若年層にも認知度が高いジャスティンビーバーの起用は、理に適ったCM表現です。

テキスト版

4.ドキュメンタリー型

ドキュメンタリー型CMとは、タレントではなく素人が出演することで真実味が増すタイプのCMです。

近年では若年層を中心に、広告やCMに対する拒否反応さらには無関心が強く、タレントを起用することでさらに消費者の日常生活から遠い世界になってしまう場合もあります。

その点、企業の社員や一般人などを起用することで、より消費者に近い視点で真実味が強いCMとなります。

<ドキュメンタリー型CM例>

富士フィルム「世界は、ひとつずつ変えることができる。」

富士フィルム「世界は、ひとつずつ変えることができる。」というCMは、ドキュメンタリー型CMの典型例です。

起用されているのはタレントや著名人ではなく、実際に富士フィルムに務める社員たちです。

例えば、2017年3月から放映された「超音波検査モバイル技術編」では、医療用3D解析技術の開発を手がけた実在の研究員が登場し、自社の機器が外科・内科にも活用が広がっていることをPRしています。

このCMでは実際の社員が登場、説明しているところがポイントで、タレントなどでは醸し出せない真実味やリアルさ、誠実さの訴求に成功しています。

5.ユーモア型

ユーモア型CMは、さらにギャグ、ユーモア、ナンセンス、ブラックユーモアなどにさらに分類され、数からいえばかなり多いタイプのCMです。

「笑わせることは、泣かせることよりも難しい」とも言われるように、CMは不特定多数の人に提供されるもので、どんな相手が、どんな状況で視聴しているのか全く分かりません。

そんな状況で笑ってもらうためには、どのようにすれば良いのでしょうか。「感受」されるためには「受け手の状況に響くモノ」でなければなりません。

一見バカバカしい話は、思い付きで簡単にできそうに見えますが、よっぽど深い感性、思想、哲学を持っていないと、多くの人々が心から笑ってくれることはありません。それは漫才のボケとツッコミの関係にも似ています。

ユーモア型CM例

東京ガス「エネファーム」

東京ガス・エネファーム「同時って素晴らしい」はユーモア型CMの優れた典型例です。

このCMでは妻夫木聡が、棋士として将棋の試合も、卓球の試合にも同時に勝つという現実的にはナンセンスな内容ですが、東京ガス「エネファーム」が電気とお湯を同時に作れることをうまく表現しています。

先ほど述べた通り、ユーモア型つまり人に面白可笑しく伝えるCMにはいくつものパターンがあり、お笑い芸人が登場してシンプルにギャグを披露するものもあれば、ブラックユーモアのような多少分かりにくいもののクスッと笑ってしまうものもあります。

6.キャラクター型

商品や企業名を覚えてもらうためには、何か記憶しやすいキャラクターがあった方が良いでしょう。キャラクター型CMは、オリジナルキャラクターを登場させ、商品の想起を狙うタイプのCMです。

これまでのCMの歴史をひもとくまでもなく、サントリーの「トリスおじさん(アンクルトリス)」、黄桜の「かっぱ」などは、CM創成期からずっとキャラクターCMは続いています。

キャラクターの種類は、イラスト、人形、動物など立体的なものからCGキャラクターまで様々です。さらにキャラクターはCMだけでなく、あらゆる販促ツールとしても活用できます。

ユーモア型CM例

楽天「お買いものパンダ」

楽天「お買いものパンダ」のCMはキャラクター型CMの代表例です。

楽天オリジナルキャラクターである「お買いものパンダ」が、CMソングも交えながら歌い踊る姿は、男女問わず印象的で好印象を与えており、「楽天ポイント」という訴求メッセージも耳に残りやすいものです。

7.CMソング型

CMソング型は、TVCMの誕生期からあるもので、非常に古くから存在するタイプのCMです。

CMソングとは、商品名や企業名、ブランド名などを歌い込んだオリジナル曲のことを指します。また「CMソング型」の定義をもう少し範囲を広げると、誰でも知っている有名曲、またそのアレンジ曲、現在ヒットしている曲、これからヒットしそうな曲をタイアップで使用するなど、様々な形で音楽を活かしたCMです。

CMソングがレコード化されたり、レコード曲がCMソングそのものだと思われたりする場合があるようにCMの持つ普及性は大きいものです。

番組の主題歌とCMは、何度も何度もオンエアされるため、多くの人たちにアピールする感性と質が問われます。

さらに最近では、視聴者の音楽に対する感性も高まっているため、ヒットするCMソングを生み出すのは過去に比べて難しくなっていると言われています。

CMソング型の一例

積水ハウスCMシリーズ

CMソング型の好例として、積水ハウスのCMシリーズが挙げられます。

作詞・羽柴英彦、作曲・小林亜聖氏が担当したこのCMソングは、特に最後の「家に帰れば積水ハウス」というフレーズはとても印象的で覚えやすいものです。

さらには最近では、様々なシンガー等によるアレンジバージョンのCMも流されており、このCMシリーズの大きな骨格をCMソングが支えていることが分かります。

8.比較広告型

比較広告型は、競合他社や競合商品を比較し、いかに自分の方が優れているかという点を提示するタイプのCMです。

欧米など外国ではとてもメジャーなタイプのCMですが、一歩間違うと相手を単に批判しているように受け取られてネガティブなイメージも付いてしまうため、日本ではこのタイプのCMは少ないのが現状です。

9.ブランディング型

ブランディング型CMは、「商品のブランディング」と「企業のブランディング」と、大きく2つに分類されます。このタイプのCMは、即効性を狙う商品広告はマーケティング(ターゲット)を絞り込み、より強い効果を狙います。

それに対して企業ブランディングは、強ければ良いというものではなく、企業の姿勢、理念をじっくりと長期にわたって植え付けていくものになります。

商品ブランディングにしても、企業ブランディングにしても、同じトーン&マナーを辛抱強く長期的に続けることが重要です。

ブランディング型CMの一例

dior「j’adore」

dior「j’adore(ジャドール)」という香水のCMはブランディング型CMの典型例です。

ハリウッド女優のシャーリーズ・セロンが登場するこのCMは、美しい映像と共に、詩的かつ哲学的なセリフと共に展開します。決して商品を直接売り込むのではなく、この商品が持つ理念や哲学を示すようなCM展開に終始しています。事実、このCMでは最後の1秒ぐらいしか実際の商品(香水)は登場しません。

                     

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