「編集者」というと、どんな仕事をイメージされるでしょうか?
出版、小説、漫画、雑誌など、紙媒体の印象が強いかと思いますが、昨今は「web編集者」という職業も増えつつあります。
今回は、「編集者」の仕事内容や魅力、年収、出版社に入るためのちょっとした情報、出版社における広告の役割まで、詳しく解説していきます。
目次
1.編集者の仕事内容
一般的に編集者とは、「出版社に所属し、担当の出版物が完成するまでの一連の作業に関わっている人」のことです。主に「書籍(小説・ビジネス本など)」「漫画/コミック」「雑誌」の3つの担当に割り振られ、担当媒体ごとに仕事内容は変わります。
(1)『書籍編集』の場合
書籍編集は、小説家や著名人と関わり活字媒体を作ります。
①打ち合わせ
小説家、あるいは著名人と打ち合わせ。本の内容や設定を確認します。
②原稿手直し
出来上がった原稿を作家と確認し、文章の加筆修正など全体の手直しをしていきます。
③校正
校正担当のチェックが入り、誤字脱字や漢字の表記が統一されていないなどの指摘箇所を指示します。返された原稿に著者が直しを入れ、再度校正担当に返送します。
(2)『漫画編集』の場合
漫画編集は、漫画家と二人三脚で作品作りをしていきます。一度に複数の漫画家を抱えることが基本です。
①打ち合わせ
漫画家と打ち合わせをし、登場させるキャラクターや設定、展開や方向性を確認したり、考えていきます。
②ネーム・原稿作成
アイディアをもとに漫画家が「ネーム」と呼ばれる下書きをし、編集サイドのOKが出たら「セリフ」「吹き出し」「字体」も決定し、原稿を完成させます。
③印刷所へ依頼
原稿の最終確認をし、印刷所に依頼をします。もし遅れが出る場合は、編集者がヘコヘコします。
☆漫画雑誌には「打ち切り」が存在するシビアな世界なので、漫画家と編集者にはビジネスを超えた面白い逸話がたくさんあります。
鳥山明を発掘した鳥嶋和彦は、「ドクターマシリト」として「ドラゴンボール」に登場し、口癖は「ボツ!」の鬼の編集者として有名でした。駆け出しの頃に何度も何度もダメ出しをし、鳥山先生は、原稿500枚を超えてやっと連載の許可を貰ったそうです。そんなエピソードを面白おかしく描かれるのも、漫画家との信頼関係あってのことです。
(3)『雑誌編集』の場合
ファッション・漫画・小説・旅行・グルメ・エンタメ・スポーツ・カルチャーなど、各雑誌のテーマごとに仕事の流れは異なりますが、大体は下記のような流れです。特に「週刊誌」は週毎の刊行であるため、多忙で活気のある部署です。
①企画立案
雑誌に掲載する企画を出していきます。平均一人15~20本。上司のOKが出るまで、地道にアイディアを絞ります。
②編集会議
編集長、副編集長、編集者、広告担当者、ネット担当者が集まり、掲載する企画のページ数や並び順を決定します。その後、編集者のみで打ち合わせを行います。
③取材・原稿制作
企画にマッチするライターに依頼を出し、内容の打ち合わせをします。取材が必要なものがあれば、アポを取り日程を決め、編集者が取材に行きます。
④ネーム作成
雑誌が完成する前にレイアウトの「ネーム(下書き)」を作成します。
写真の配置や大きさ、タイトルや文字数などを決めます。ネームが完成したらライターに原稿を書いてもらい、編集長がチェック。すべてが完成したら、印刷会社へ。
⑤校了作業
校正紙が出来上がると、正確な誌面作りのため、ライターや校正者、取材先にもチェックして貰います。指摘箇所に赤字を入れ、印刷会社に渡します。校了紙ができると、で編集長と副編集長が最終チェックをします。
⑥印刷・販売
印刷会社に引き渡したら、編集者の仕事は終わりです。あとは営業や宣伝担当に完成した本を託します。
<まとめ>
どの担当も楽しい面ばかりではなく地味な作業もたくさんあります。むしろ、その地道な作業が本作りには必要不可欠です。
4.編集者の年収
編集者の平均年収は、430~520万円です。
理由として、出版社は大手出版社から中小出版社、編集プロダクションまで存在するため、年収についてもピンキリであると言えます。
「小学館」「講談社」「集英社」の3社を始め、大手出版社であれば高給取りには違いなく、20代、30代で年収1000万も夢ではありません。
ただ、出版社というのは、大きい会社でも「営業」「編集」「ライツ(作品の二次利用に関わる部署)」「校閲」くらいしか職種がなく、大手であっても従業員はそこまで多くありません。そのため、新卒の採用人数は、大手でも15~20人、中小出版社では2~5人ほどのかなりの狭き門です。その上人気職種であるため、倍率はかなりの高さである言えるでしょう。
5.編集者の男女のキャリアアップ
編集者は昇進すると「編集長」という全体の統括ポジを任されます。(場合によっては「デスク」「編集局長」と呼ばれることも。)
編集長は、部下の企画内容や制作物をチェックし、媒体の方向性を決定づける「編集者全体の統括責任者」です。編集長になると「会食」も仕事の一つになり、外部との交流も増えていきます。
もちろん、女性であっても編集長になれます。女性誌は女性の編集長が多いですし、家庭や育児との両立も可能です。ただ多忙には変わりないので、家族のフォローも必要になるでしょう。
6.編集者のワークバランス
はっきり言って、出版社は多忙です。というのも雑誌には”締め切り”が存在するので、定時の概念はなく、土日に出勤することも珍しくありません。締め切り前は徹夜で会社に寝泊まりし、何日も家に帰れないこともあります。
しかし忙しいのは締め切り前だけで、あとは世間並みの裁量で進行していきます。徹夜や残業をした翌日は午後出社ができたり、出勤時間も融通が効きます。
また、編集者は出版社だけでなく、編集プロダクション、いわゆる「編プロ」と呼ばれる小規模出版社にも存在します。編プロの場合は出版社と比べてこなす業務が多く、時には自分で書いたり、編集したり、ライターのブッキングまでこなすこともあるため、さらに忙しいです。ただ、上の指示を待たずに色々なことができるので、その分経験を積めるとも言えます。
編集者は「やりがい重視」で働いている人が多く、多忙でも気にしない人が多いのも事実です。
7.なぜ編集者が必要なのか?
作品を出すのに、なぜ編集者が必要か。答えは、「売れる作品/コンテンツを作るため」です。
編集者とは「表現者」ではありません。作家やライターのように好きなように好きなことを書くのではなく、あくまで、読者のニーズに応え、関わった媒体が「売れる」ことが最終目標です。
また、作家側にとっても「どの編集者と寝るか」と言われるくらい大事なポジションです。いくら才能ある作家でもアイディアに行き詰まることもありますし、精神を病んでしまったり、スランプになったり、自分の考えに固執してしまうことだってあります。そんな時に第三者視点で優しくフォローし、一緒にいい作品を作り上げることが、編集者に必要な役割です。作家のこだわりと読者のニーズをいかに擦り合わせるか、そのバランスで試行錯誤しています。
もちろん会社や媒体ごとにライター寄りの編集者になることもありますが、一般的な編集者とは、上記の「読者のニーズに合わせること」が大事なお仕事です。
8.編集者のやりがいと面白さ
これまで編集者の役割をご紹介しましたが、ここからは編集者のやりがいと面白さについてご紹介していきます。
①自分のアイディアを形にできる
編集者は、「こんな本が読みたい」「こんな本があったらいいな」を形にできるクリエイティブな仕事です。自分で企画を立ててヒットしたら長期連載になりますし、新しい雑誌を生み出すことも出来ます。
担当作家がいれば、作品の展開や方向性を指示をし、自分の一言で作品を大ヒットに導くことも夢じゃありません。
②作家や有名人と仕事が出来る(仲良くなれるかも?)
小説家、漫画家、実業家、芸能人、料理研究家、有名人、などありとあらゆる著名人と接する機会があります。ファッション雑誌であれば、モデルの撮影現場に同行することもあるでしょう。
特に小説や漫画担当であれば、一人の作家と、数年単位で、長期的に接することが多くなります。題材の資料として一緒に取材旅行をしたり、作品に登場するものを共に作り上げていきます。息が合えば「ずっとこの担当さんがいい」という逆オファーをされることもあります。仲良くなった作家や漫画家と担当が外れた後も一緒に飲んだり、長い付き合いになるのはよくある話です。
③将来有名になる作家を新人から後押しできる
持ち込みに来た新人を育成し、有名になるまでの道のりを後押しすることができます。担当作家がヒット作を生み出せば嬉しいですし、自分の名をあげることにも繋がります。
④色々な知識が身につく
たとえば、医療がテーマの作品なら医療の知識、歴史がテーマの作品なら歴史の知識が身につきます。バスケの取材をすることでバスケが趣味になったり、今まで知らなかった面白い世界を知れるので、好奇心旺盛な方にはピッタリです。
9.編集者に向いている人
①本が好き/出版コンテンツ(小説・漫画・雑誌)が好き
編集者は、「本が好き」な人間の集まりです。小説や漫画や雑誌に限定せずとも、何かしらの文章メディアが好きです。好きを仕事に活かせるからこそ情熱を傾けられるでしょう。
②文章を書くのが好き/日本語能力が高い
作家ほどではなくとも、編集者も文章を書く機会は多いです。編集者を辞めて、作家やライターに転身する人も少なくありません。そうでなくとも、文章を書くことに抵抗のない人が多いです。
③好奇心旺盛な人
編集者の仕事は「世の中では何が流行っているのか」「読者が読みたいものは何か」を常に考え続ける仕事です。広いアンテナを持って、何にでも興味をもってのめり込める人こそ、編集者向きです。
④こだわりがある/ヲタク気質な人
これは作家にも近い適性ですが、編集者も関わったものを徹底的に掘り下げる「ヲタク気質」が必要です。内容から装丁まで、逐一試行錯誤してこだわらないと、いい本は生み出せません。
どんなに細かいことでもこだわりを持ち、「自分だったらこうする」というクリエイティブな視点を持つことが必要不可欠です。
⑤発想力がある/人と違った視点を持てる人
皆が考えつくようなものからは、大ヒットは生まれません。ちょっと一風変わった視点や、皆が考えそうで考えつかなかったもの、そんな斬新な発想力を持つことがヒット作品を生み出すカギです。
⑥人が好き/一人の人と深く関われる
編集者は「人と関わる」仕事です。取材もしますし、人と接する機会は多いです。作家担当であれば持ち込みの新人や作家を複数抱えることになるので、積極的にコミュニケーションを取ることになります。
本は作るのも人、買うもの人。色々な関わりやつながりがあって、初めて本は完成します。
⑤一つのことに熱中できる/没頭と俯瞰を往来できる人
編集者は、一つのテーマ・作品に、長期に渡って深く関わっていくお仕事です。集中力をもち一つのことを徹底的に掘り下げる「没頭」と、周囲や作家とコミュニケーションする「俯瞰」の作業こそ、編集者に必要なスキルです。
⑦締め切りを守れる/ドMな人
本には週刊誌・月刊誌など締め切りがあります。必ず守らねばならないので、終わらない時は徹夜で作業をします。
担当作家がいれば、作家が書いてくれないと元も子もないので、急かしたり、連絡を取ったり、遅れる場合は印刷会社へ謝罪やフォローもします。「ドM」である必要はありませんが、「作家のためなら何でもできる」くらい作家や作品に尽くせる熱意があるといいです。
10.編集者を目指すために今すべきこと
これから編集者を目指すあなたへ、編集者になるには、「出版社」か「編集プロダクション」に入ることです。
もちろん、文学部でなくとも問題ありません。理系出身者も多くいますし、本が好きな人に文学部が多いというだけです。
正直絶対に必要なことは特にないのですが、大手出版社や第一志望の企業に確実に入るための、お役立ち情報を少しお伝えしておきます。
①就活編
★出版社のインターンシップに参加する
★出版社や編プロで長期アルバイト・インターンシップをする
「出版社でのアルバイト・インターンシップ経験」「目指す出版社の出版雑誌を覚える」ことは、筆記試験でも問われたり、面接でもアピールしやすいです。
出版社の筆記試験でありがちなのが「三題噺」と言って、3つのお題で一つの小説を作るというものです。今から三題噺対策やSPI対策も進めるといいでしょう。
②転職編
★未経験OKな企業も多数
★昨今の電子書籍化に伴い、IT業界からの参入も多い傾向
転職者であっても、経験問わず採用を行っています。特に紙媒体から電子書籍に移行する流れで、WEBやITの経験者を積極採用するパターンも増えています。
③アドバイス「皆が編集者になれるワケじゃない」
一つ覚えて頂きたいのは、大きい出版社であればあるほど、必ず「編集者」に配属される訳ではないということです。営業も重要なポジションです。本というのは「作って終わり」ではないので、営業やライツとして「出版物を売り出す視点」も必要です。
11.web編集と書籍編集の違い
近年はweb小説やweb漫画もたくさん見かけるようになり、「web編集者」という職業も増えてきました。
書籍編集との違いは、紙媒体かインターネットか、というだけですが、インターネットは情報の海であるため、扱う媒体も「書籍」「漫画」「雑誌」という決まったコンテンツであるとは限りません。動画、ブログ、ニュースサイトなど、インターネットメディア全般の編集業務が当てはまります。インターネット上で公開するというのは、書籍以上に、「より広い読者層に向けて発信する」という意識が必要です。
出版社と比べてweb業界は人手不足の傾向があるため、転職者や未経験者でもすぐに働ける仕事であると言えます。
12.出版社と「広告」の関係性
一見無関係に思える出版と広告ですが、出版社には「広告営業」という職種があります。広告営業の主な業務は、雑誌に掲載する「タイアップ広告」のクライアントとのやり取りです。
新規獲得する場合は、テレアポでアポを取り、新規クライアント先に出向いて広告のご案内などもします。利害が一致したら、広告出稿の準備に入り、広告制作をしていきます。
ちなみに、天才編集者としてメディアに引っ張りだこの「箕輪厚介」は、双葉社に新卒入社した後広告営業を任され、勝手に新規開拓としてテレアポで雑居ビルに飛び込み、その積み重ねで最終的に3000万円も受注したそうです。
上記の流れが今までの出版と広告の関係性でしたが、web媒体の発展により今後の関係性も変化していきそうです。
13.まとめ
いかがでしょうか。今回の記事で「編集者」という漠然とした仕事内容が、少しはお分かり頂けたかと思います。
今は出版不況と呼ばれますが、これからも「小説、漫画が好き」という娯楽的需要はなくならないでしょう。編集者志望の方は、迷わず入社されることをオススメします!
皆様の理想のワークライフを実現できるよう、今後も役に立つ情報を提供していきます。