「デジタルマーケティング」という言葉をご存知でしょうか。
1990年代にこの言葉が生まれ、企業のデジタル領域におけるマーケティング活動が活発になるにつれて広く知られるようになりました。現在ではこの言葉を聞いたことがない人のほうが少ないのかもしれません。
デジタルマーケティングが本格的に発展し始めたのは2000年からです。
例えば、洗剤やトイレタリーで有名な大手化学メーカーの「花王」が、専門の部署を立ち上げデジタルマーケティングに取り組み始めたのも2000年代前半です。最近では、総合広告代理店トップの電通もデジタルマーケティングに特化した専門子会社「電通デジタル」を設立しています。
このように、現在多くの企業がデジタルマーケティングに取り組んでいる状況ですが、この記事では改めて「デジタルマーケティング」とは何か、そして実際にデジタルマーケティングに携わる人たちの仕事内容がどのようなものなのかを解説していきたいと思います!
目次
1.デジタルマーケティングとは
デジタルマーケティングとは一言で言うと、「データに基づくマーケティング」です。
単にWebサイトやメール、SNSといったデジタルメディアを利用した販促活動をしただけでは、デジタルマーケティングとは呼べません。デジタルメディアを利用したことで蓄積されていく顧客の行動履歴などのデータ要素を活用することで、初めて「デジタルマーケティング」と呼べるようになります。
蓄積したデータを分析し、広告を見た後に人々がどのような反応したのか、その反応に合わせて次にどのようなアプローチをするかなどを考え実行できる点がデジタルマーケティングの重要なポイントです。
ここで言うデータとは様々な種類のものがあります。例えば、どんなサイトや商品ページを見ているかが分かるweb上での行動データや、位置情報データ、さらにはポイントカードの利用履歴などからリアルな店舗での購買行動までデータとして収集できます。
企業はこれらのデータを蓄積・分析して、マーケティング施策に役立てて行くのです。
2.Webマーケティングとの違い
「デジタルマーケティング」とは別に「Webマーケティング」という似た言葉があります。この2つの違いはどこにあるのでしょうか。
一言で言うと、マーケティングの対象として扱う範囲の広さの違いです。
「Webマーケティング」はその名の通り、webサイトだけの範囲に限られたマーケティング手法です。例えば、サイトへの集客や流入を増やすためSEO対策・リスティング広告、コンバージョンを増加させるためのコンテンツ制作などがこれに当たります。
一方で「デジタルマーケティング」は、前述したwebマーケティングがカバーする範囲を含め、デジタル領域に関わる全媒体をマーケティング対象として扱います。例えばTwitterやInstagramなどのソーシャルメディアやEメール、スマートフォンやタブレット端末のアプリ、さらにはショッピングモールや駅などで見かける電子看板(デジタルサイネージ)まで当てはまります。
この2つを図で表すとこのようになります。
つまり、デジタルマーケティングという言葉はWebマーケティングよりも広い概念を指すと覚えておくといいでしょう。
3.デジタルマーケティング業務内容
デジタルマーケティングの具体的な業務内容について触れていきます。
今回は代表的なものや、注目すべきものを10個紹介していきたいと思います。
(1)SEO対策
「SEO対策」とは検索された際に、検索順位にて上位に表示されるようにする対策です。自社サイトが頻繁に表示され、露出を増やすことで、web検索からより多くの集客を行えます。デジタルマーケティングの最も基本的で重要な対策の一つです。
具体的にどのような事を行えばいいのかと言うと、サイト内の記事のボリュームを読みやすいもの(目安として3000文字以上)にすることや、内部リンクを正しく活用すること等が対策になります。
つまり、いかにユーザーが読んでいて、読みやすく、分かりやすい丁寧な記事が作れるかがポイントになります。
(2)アクセス解析
前述したSEO対策に関わるものです。
ユーザーが満足するサイト作りや、売上に貢献するサイト作りを実現するためには、専用ツールを用いたアクセス解析が必須になります。
アクセス解析を行うことで、サイトに訪れる人たちの年代や性別、ユーザーによく見られているページや、逆にユーザーがサイトを離脱したページなどが割り出せます。
このようなデータを用いて、よりユーザーのサイト滞在時間を伸ばす仕掛けや魅力的なコンテンツ制作に活かし、マーケティングに繋げていきます。
(3)リスティング広告
「リスティング広告」とは、ユーザーが検索したキーワードに連動して表示される広告のことを言います。
上の図の赤枠内部分がリスティング広告になります。
検索したキーワードに連動することから成果に繋がりやすいユーザーにアプローチ出来る、また、配信した広告のデータを分析し活用できるといったメリットがあります。
「Googleアドワーズ」、または「Yahoo!プロモーション広告」に登録し、広告を出稿します。
より反応が良い広告を出すために、表示させるエリア地域を設定したり、キーワードを複数設定しながら分析を続け、改善させていきます。
(4)ディスプレイ広告
ディスプレイ広告とはサイトやアプリの広告枠に表示される広告の事を指します。
上の図の赤枠内部分がリスティング広告になります。
テキストだけではなく画像や動画を差し込めることが特徴です。
前述したようにリスティング広告は、キーワードを設定しターゲットを絞った上で広告を表示できます。それに対し、ディスプレイ広告は過去のサイト閲覧履歴や地域、年齢などを軸にターゲティングするため、顧客になり得る潜在層のユーザーに対して幅広くアプローチができます。
クリックされるごとに費用がかかる「クリック課金制」や、広告が表示された場合に料金が発生する「インプレッション課金制」などがあります。
(5)広告効果測定
全ての広告が売上を伸ばすことをゴールとしている訳ではありません。
ブランドや商品の認知度の拡大や、自社サイトへの誘導を目的とした広告もあります。
それぞれの広告ごとに広告にかかった費用に対する効果の良し悪しなどを測定・分析していくことで、よりマーケティング効果の高い広告に改善ができます。例えばリスティング広告の場合、ユーザーが検索するときに入力した言葉(検索クエリ)や入札単価をまとめて分析することが効果的です。
ちなみにデジタル広告において現在、広告効果などを水増しさせる「アドフラウド」と呼ばれる広告詐欺が問題になっている側面もあります。
(6)Eメールマーケティング
集客やリピーターを増やすことなどを目的とした、Eメールの配信を通して送られるマーケティングの事です。
メールがどれだけの人達に読まれたかを意味する「開封率」や、文中に仕込んだ URLの「クリック率」、メールを送った事でどれだけ売上に貢献できたかという「コンバージョン率」といったデータを蓄積・分析することで、より効果的なメール配信に繋げていきます。
安価で簡単に始められるマーケティング手法ですが、読み手のニーズに合った配信ができないと迷惑メール同様に捉えられてしまうリスクもあります。
(7)MAツール運用
MAとは「マーケティングオートメーション」という言葉の略であり、マーケティング活動の自動化を意味します。
MAツールを活用することで、見込み客の年齢や居住地、職業などの特性データや、サイトへのアクセス頻度、閲覧ページの履歴などから、各ユーザーの見込み度合いを判別することができます。これにより、それぞれの見込み客に合った最適なアプローチ方法を判断することができます。
一方でツールの設定調整や、営業部門やシステム部門との連携など、運用をスムーズに進めるために多くのタスクをこなさなければいけないという面もあります。
代表的なMAツールとして、TOYOTAを含め多数の大手も導入している「Salesforce Marketing Cloud」や全世界でのMAツールマーケットシェアの5分の1を占めている「Oracle Marketing Cloud」などが挙げられます。
1990年代にこの概念がアメリカで生まれて以降、2020年の国内のMA市場は420億円に達すると予測され、今後もさらに普及すると考えられています。
(8)ソーシャルメディアマーケティング
SNS上での広告出稿だけではなく、自社アカウントからの情報発信などもこのソーシャルメディアマーケティングの施策に含まれます。一部の世代ではテレビよりネットの利用時間が長くなった現在の状況の中、SNSを通じたマーケティング活動の重要性は伸び続けています。
Web広告と比べ、ユーザーからの反応をリアルタイムで確認できることや、口コミや拡散効果がある点が特徴的です。
より効率的にSNSを運用するために、投稿に最適な時間帯を分析することや、文面のABテストを行う必要があります。
ちなみに消費者が接触するメディアを、広く認知を獲得するペイドメディア、自らが所有するオウンドメディア、信頼や評判を獲得するアーンドメディアの3つに分類するトリプルメディアという考え方では、SNSは「アーンドメディア」に分類されています。
(9)アプリマーケティング
スマートフォン・タブレット上のアプリを通じ、見込み客とのコミュニケーションを図るマーケティング手法です。アプリの利用を通じ、新たなサービスをユーザーに提供するだけではなく、見込み客の情報収集や分析にも繋がります。
GPSを利用して特定の地域のユーザーに通知を送るなど、スマートフォンの機能を用いた施策ができるため、活用の幅が広がっています。
(10)IoT活用
モノがインターネットと繋がることによって、これまで収集することのできなかったデータを蓄積、分析することができます。このデータ等を用いてマーケティングに活用する手法です。
わかりやすい例で言うと、「Coke On」の事例があります。アプリと対応する自動販売機を接続してドリンクを1本購入するごとにスタンプが1つたまり、スタンプが15個貯まるごとに1本無料で交換できるというキャンペーンです。
このキャンペーンを通し、アプリは450万ものダウンロードを達成し、認知度と売上向上に繋がりました。
4.デジタルマーケティングの重要性
データに基づくマーケティングである「デジタルマーケティング」の重要性はどこにあるのでしょうか。それは リアルタイムで情報を収集、分析できる点にあります。
近年、市場変化のスピードはますます速まっています。
世の中は既にモノやサービスが溢れ、ただ性能や質をグレードアップしただけでは商品は売れなくなり、よりトレンドを掴んだ魅力的な新商品、新サービスを生み出さなければ顧客を維持することが難しくなってきました。
このような状況下でもデジタルマーケティングは、単に顧客獲得に繋がるだけではなく、デジタルマーケティングを行う過程で得たデータを収集、分析することで、リアルタイムの消費者の動向や世の中のトレンドを掴むことができるようになります。いずれにしても、売上貢献のための重要な戦略となります。
また、効果を確認しながら進捗を追えることから従来のマーケティング手法と比較し、効率的、迅速化、経費低減にも繋がるという面もあります。
5.まとめ
いかがでしたでしょうか。
従来のマーケティング手法は、インターネットによって変化し続けている私達の生活に伴って通用しづらくなっている面があります。
この結果として生まれた「デジタルマーケティング」ですが、IoTやビッグデータなど新たな技術革新によって、現在もデジタルマーケティングとして該当する領域が拡大しています。
日頃からアンテナをはり、最新情報をインプットし続けましょう。