DXやデジタルシフトを積極的に導入する事業会社5選

「デジタルトランスフォーメーション(以下DX)」という言葉を、目にしたり、耳にした方は多いと思いますが、具体的にそれが何なのか正確に理解している方はそんなに多くはないかと思います。今回はDXに関して、DX化に積極的に取り組む各業界の企業事例を見ながら理解していこうと思います。

そもそもDXとは?

まずDXが何を意味するのかを確認しましょう。

まず、DXの辞書的な意味を確認してみると「デジタルトランスフォーメーションとは、情報技術の普及・浸透による「社会のデジタル化」がもたらす組織や社会の変革を指す言葉である」とあります。
(※IT用語辞典バイナリより引用)

また、DXの言葉の起源とされるのは、2004年当時スウェーデンのウメオ大学の教授であったエリック・ストルターマン氏が「デジタル技術が全ての人々の生活を、あらゆる面でより良い方向に変化させる」というコンセプトを発表したことに起因しています。

経産省が提唱する「DX化」

ここまで定義や意味を辞書的にみてきましたが、より分かりやすく考えてみる必要がありますので、経済産業省が日本企業が取り組むべきDXについてレポートをまとめていますので、それを確認することでより具体的な意味を理解していきましょう。

■経済産業省DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~
まずレポートの副題として「2025年の崖」というキャッチーな言葉が提示されていますが、そもそも「2025年の崖」とは何でしょうか?

(1)「2025年の崖」とは

経済産業省が説く「2025年の崖」とは、
・既存システムが、事業部門ごとに構築されて、全社横断的なデータ活用ができてなかったり、過剰なカスタマイズがなされているなどにより、複雑化、ブラックボックス化している
・経営者がDXを望んでも、現場サイドの抵抗も大きく、いかにこれを実行するかが課題となっている
この課題を克服できない場合、2025年以降、最大年間12兆円(現在の約3倍)の経済損失が生じる可能性がある。
としています。

そもそも日本の産業界では、システム構築において外部ベンダーに委託、依存する傾向が強く、そんな背景のもと代表的なシステムであるSAP社ERPが2025年にサポート終了したり、2025年にはIT系人材の不足が43万人まで拡大、さらには21年以上も経過する基幹系システムを抱える企業が6割に達する見込みとなっており、2025年までに早急にシステムを刷新する必要性が出てきています。

(2)DX実現シナリオ

そこで「2025年の崖」を乗り越えるべく、経済産業省はDX実現のためのシナリオを用意しています。
それは「2025年までの間に、複雑化・ブラックボックス化した既存システムについて、廃棄や塩漬けにするもの等を仕分けしながら、必要なものについて刷新しつつ、DXを実現 することにより、2030年実質GDP130兆円超の押上げを実現。」というものです。

(3)まとめ

「2025年の崖」、そして「DX実現シナリオ」については理解できたと思いますが、そのために乗り越えなければならない課題は山積しています。この記事を読んでいる方々にも思い当たる節も多いかと思いますが、現在企業に導入されているシステムはつぎはぎだらけで、既に複雑化、ブラックボックス化しており、さらにはシステム人員の不足や高齢化も深刻になっています。

そのため、クラウドやAI等のデジタル技術をマイクロサービス、アジャイル等の手法で迅速に取り入れ、素早く新たな製品、サービス、ビジネス・モデルを国際市場に展開することで、すべての企業が「デジタル化」していく必要があります。
(注:「アジャイル」とは、大きな単位でシステムを区切ることなく、小単位で実装とテストを繰り返して開発を進めていく柔軟な開発手法です)

●経済産業省「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~」

DXを積極的に導入している各業界の企業例

1.資生堂のDX事例

これまで化粧品業界では、デパートなどの美容部員により顧客一人一人の肌を診断し、その人の肌質に合わせたスキンケアやコスメの販売をしてきましたが、資生堂は美容部員の培ってきた経験や勘の部分をデジタル/データ化したアプリと専用IOTシステムを開発しました。

このIOTスキンケアシステムこそが「オプチューン」で、ユーザーがスマホの専用アプリで日々の肌状態を測定し、その日の肌質・肌感に合わせたケア方法を提案してくれます。

具体的には、肌の状態(水分、皮脂、毛穴、キメなど)に加え、その日の外的な環境(湿気、気温、紫外線など)までも勘案したうえで、8万以上のスキンケア方法の中から最も適した方法を提示してくれます。
いわゆる美容部員たちが長年蓄積してきた経験をデータ化して提供し、店舗や自宅でもシームレスに連携してユーザーのデータを取得できる、いわゆるオムニチャネルの取り組みです。

資生堂オプチューン

2.SOMPOホールディングスのDX事例

国内最大級の損害保険会社であるSOMPOホールディングスは、今後のデジタル化(DX化)に向けてシリコンバレーやビッグデータの人材を迎え、2016年に「SOMPO Digital Lab」を設立しています。
豊富な顧客を保有している強みを生かし、保険販売へのデータ活用はもちろん、外航貨物海上保険の保険設計にAIを導入したり、損保ではLINEを活用した事故受付・事故対応サービスなど様々な領域でDX化を推進・導入しています。
その中でも最もキャッチーな事例としては「ドローンを利用した損害調査」、「ウェアラブル端末を使った顧客の健康促進」という取り組みがあります。

これまで人間が直接事故現場に出向き、事故現場の損害調査を行ってきた部分をドローンにより代替し、撮影した静止画や動画をもとに3次元空間で再現するのが「ドローン損害調査」です。
また、最近では身に着ける人も多いウェアラブルデバイスを利用して、顧客の健康促進を図り、顧客の健康管理はもちろん行動データを疾病などとの因果関係を分析する取り組みにも活かしています。

SOMPO Digital Lab

3.大塚製薬のDX事例

ポカリスウェットなどで有名な大塚製薬は、いわゆる医薬品の売上が3/4を占める製薬メーカーです。大塚製薬はNECと共同で、脳梗塞治療薬の飲み忘れを防止する服薬サポート容器を開発しました。
脳梗塞の再発防止には継続した服薬が必要不可欠であり、そのためにも「うっかり忘れ」や「自己判断による服薬中止」を防ぐことが治療のカギとなっていました。そのためにも脳梗塞患者の飲み忘れを防止するために指定の日時ごとにLED点滅などで服薬を促し、服薬が確認されたデータを患者や家族・医師などにも通知することでデータ化することに成功しています。

大塚製薬とNEC 脳梗塞再発抑制薬の毎日の服薬をアシストする服薬支援容器の共同開発に合意

4.GDOのDX事例

日本国内で最大規模のゴルフ総合情報サイトを展開するのが「ゴルフダイジェスト・オンライン(GDO)」です。
GDOでは、それまでバラバラに存在していた顧客データを、BIツール「Tableau(タブロー)」を使って一元管理化に成功しています。具体的には会員のデータと予約の取引データを組み合わせることにより、顧客の好みに合わせたコンテンツやデータの提示に活かされています。

また、これらのデータ抽出・分析により「ゴルフ場カルテ」を作成し、営業組織のデータ武装にも併せて成功しています。これは、これまでトップ営業マンの経験や勘によって行われてきた営業方法やクライアントに対して有効な提案資料がデータ化され、より成功率の高い営業手法が共有化・テンプレート化された事例です。

例えば、クライアントであるゴルフ場に対して、来場するゴルファーの商圏分析を定例化し、施策の成果を見える化し、提示できるようになった等です。

(注:BIツールとは、企業の基幹システムで生成されたデータを、ユーザー自身が抽出・加工するためのアプリケーションソフトのことで、加工したデータは企業の意思決定にも利用される)

5.不動産投資TOKYOリスタイル(ストライトライド運営)のDX事例

ストレイトライドは、東京23区の人気エリアに特化した不動産投資サイト「TOKYOリスタイル」を運営しています。

不動産業界はもともとデジタル化が遅れており、アナログな営業手法がいまだに根強く残っている業界の一つですが、TOKYOリスタイルはいち早くDX化に取り組み、「物件収集や検知・アラートの自動化」、「サイト流入データのROI計測や広告効果計測の自動化」、さらには営業マンのベストプラクティスデータの共有化などを実現しています。

特に、物件の自動収集後に、ターゲット顧客の需要のある物件を自動抽出・掲載し、さらにはリクエストのあった条件の物件を検知すると、顧客と営業の両方に自動的に通知するシステムはいわゆるRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の領域で、顧客に対して高い付加価値を提供していると言えます。

不動産投資TOKYOリスタイル

まとめ

ここまでDXの概要と、DX化に積極的に取り組んでいる各業界の事例をご紹介してきましたが、いかがだったでしょうか?
DXの一分野であるデジタルマーケティングには、データドリブンとオムニチャネル化の2つの要素が必要であると言われています。

ご紹介した企業の多くはこれまで人間の経験や勘によって成り立ってきた部分をデータ化し、さらには様々なチャネルからシームレスに繋がれるいわゆるオムニチャネルな環境を作り出すこと目指していることが分かります。

今後の日本を左右する「2025年の崖」を乗り越え、さらに産業界が成長していくためにもDX化は避けては通れない道ですが、コロナ禍の影響により広がったリモートワークやクラウドサインの潮流をうまく利用して、社内の意識改革にもつなげていくことが出来れば日本の明るい未来を拓くことができるかと思います。

                     

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