電通鬼十則 – 企業研究にも使えるよう分かりやすく解説 !

「電通鬼十則」は、これまで長きにわたって電通従業員の行動規範とされており、広告業界に身を置くものであれば一度は聞いたことがあるというぐらい有名なものです。

今回は電通という日本を代表する広告代理店を理解する上でも、「鬼十則」について詳しく解説していこうと思います。

1.電通鬼十則とは?


鬼十則は、4代目社長・吉田秀雄が策定した電通社員の行動規範です。
社員が一流のアドマンになり、電通が広告業界トップであり続けるための厳しいルールです。

数ある代理店の中でも特に営業に強く、広告業界に名を轟かす電通の企業文化として長年継承されてきたDNAです。

しかし最近では、その内容の厳しさ、苛烈さ、強烈さから、社員への重圧となって働きやすさを阻害していると問題視され始めていました。

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2.「電通鬼十則」本文

では本文を見てみましょう。

「電通鬼十則」 本文
1. 仕事は自ら創るべきで、与えられるべきではない。
2. 仕事とは先手先手と働き掛けていくことで、受け身でやるものではない。
3. 大きな仕事と取組め! 小さな仕事は己を小さくする。
4. 難しい仕事を狙え! そして成し遂げるところに進歩がある。
5. 取組んだら放すな! 殺されても放すな! 目的を完遂するまでは...
6. 周囲を引きずり回せ! 引きずるのと引きずられるのとでは、永い間に天地の開きができる。
7. 計画を持て! 長期の計画を持っていれば、忍耐と工夫と、そして正しい努力と希望が生まれる。
8. 自信を持て! 自信が無いから君の仕事には、迫力も粘りも、そして厚みすらがない。
9. 頭は常に全回転、八方に気を配って、一部の隙もあってはならぬ!! サービスとはそのようなものだ。
10. 摩擦を怖れるな! 摩擦は進歩の母、積極の肥料だ。でないと君は卑屈未練になる。
(1951年制定)

皆さんはこの鬼十則を読み、どの様に感じたでしょうか。
内容自体には納得できる部分も多くありますが、過激なメッセージだと感じた方も多いのではないでしょうか。

次の章ではこの鬼十則を作った人物や、作られた背景を紹介します。

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3.「電通鬼十則」を作った吉田秀雄とは

電通鬼十則を深く理解するには、鬼十則を作成した人間や作成された時代的背景を知ることが重要です。

(1)電通中興の祖「吉田秀雄」について

電通鬼十則は、4代目電通社長である吉田秀雄が1951年に制定したものです。

1903年(明治36年)福岡県小倉に生まれた吉田は、東京帝国大学(現・東京大学)を卒業し、新卒第1期生として1828年(昭和3年)に電通に入社。その後は営業部でメキメキと頭角を現していきました。

そして1947年(昭和22年)6月、若干43歳の若さで第4代目電通社長に就任した吉田は、これまで社会的地位が低い仕事として見られてきた広告業界の地位を引き上げるべく、「広告業界の文化水準を新聞業界と同じレベルまで引き上げたい」という思いを強く抱きます。そのため社長はじめ全幹部が始業時間より1時間早い8時に出社するというルールまで作ります。

自分にも他人にも厳しい吉田が「鬼十則」を制定した1951年(昭和26年)と同じ時期に全社員に向けたメッセージの中にはさらに厳しい内容が含まれています。

「仕事の鬼になるということは仕事以外眼中何物もなし、広告の鬼になれということは、広告のためには、それ以外眼中何物もないということであり、仕事のためにはすべてを喰い殺せ、広告のためには何物をも犠牲となし、踏み台にせよということです。」
(上記「電通100年史」より引用)

(2)「鬼十則」が生まれた時代背景


鬼十則だけでなく、上記のメッセージは非常に強烈で、現代の人間が聞けば引いてしまうような内容です。特に「仕事のためにはすべてを喰い殺せ」という表現は現代にはミスマッチのように思えます。

しかし、吉田が電通の社長に就任した時は、太平洋戦争直後であり、日本は東京すら焼け野原に毛が生えた状態でした(戦争終結後から2年後)。

いわば日本国民全員が毎日食べる為に必死であり、何か得るためにはどんな事をしてでも這い上がるエネルギーやバイタリティを必要としていた時代でした。

さらには、敗戦でアメリカGHQに支配されていた日本は、これまでのような社会的なヒエラルキーやルールが無い混沌とした社会となっていました。

もちろん現代の日本社会では「電通鬼十則」はそぐわなくなってきてますが、作られた当時の時代的な背景に照らし合わせると、電通鬼十則がかつて持っていた意義が分かってくるのだと思います。

ここで「鬼十則」の良し悪しを論じるつもりはなく、鬼十則は戦後の混沌とした経済状況から脱し、高度経済成長を迎える日本社会を鼓舞するために必要だった事かも知れない、という事です。

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4.責任三か条

電通「責任三か条」とは、吉田秀雄が「鬼十則」を制定した2年後の1953年(昭和28年)に社員に発した指針です。
ちなみに、この三か条は1987年からは電通社員の手帳「Dennote」からは記載が削除されています。

責任三か条
1. 命令・復命・連絡・報告は、その結果を確認しその効果を把握するまではこれをなした者の責任である。その限度内に於ける責任は断じて回避出来ない。

2. 一を聞いて十を知り、これを行う叡智と才能がないならば、一を聞いて一を完全に行う注意力と責任感を持たねばならぬ。一を聞いて十を誤る如き者は百害あって一利ない。正に組織活動の癌である。削除せらるべきである。

3 .我々にとっては、形式的な責任論はもはや一片の価値もない。我々の仕事は突けば血を噴くのだ。我々はその日その日に生命をかけている。

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5.現在の電通は?


では鬼十則を企業文化に持つ電通の現在の状況はどうなのでしょうか?

電通は2016年12月9日、これまで社員の行動規範とされてきた「鬼十則」の文言を、社員手帳「Dennote」から削除すると発表しました。これで電通の伝説的社長・吉田秀雄が作った「鬼十則」は人の目に触れる場所からは姿を消したことになりました。

現在の電通は、社員の自殺を契機として、会社全体の有給取得率を年々上昇させています。

ただし、営業局など個別の部によっては有給取得率が比較的低いこともあり、2017年からは有給取得率50%以上を義務付け、さらには管理職の360°評価導入など様々な労働環境改善策を促進しています。

6.英語版 「電通鬼十則」


電通は日本トップの代理店ですが、世界でも第5位にランクインする巨大な広告代理店です。
わかりやすい広告代理店ランキング! – 売上、仕事内容、外資系も紹介!

そのため英語版の「鬼十則」も作られています。
参考まで以下に記載しておきます。

Dentsu’s 10 Working Guidelines
1. Initiate projects on your own instead of waiting for work to be assigned.
2. Take an active role in all your endeavors, not a passive one.
3. Search for large and complex challenges.
4. Welcome difficult assignments. Progress lies in accomplishing difficult work.
5. Once you begin a task, complete it. Never give up.
6. Lead and set an example for your fellow workers.
7. Set goals for yourself to ensure a constant sense of substance.
8. Move with confidence. It gives your work force and substance.
9. At all times, challenge yourself to think creatively and find new solutions.
10. When confrontation is necessary, don’t shy away from it. Confrontation is often necessary to achieve progress.

電通のインターン対策
                     

ABOUTこの記事をかいた人

広告マン

私は有名な大手2社ではありませんが、国内上位5社に入る広告代理店で営業(アカウントエグゼクティブ)として3年前まで働いていました。その経験から、あまり世の中では語られていない広告代理店の具体的な仕事内容や実際の過酷さについて正直な記事を書いていきます。