広告代理店のOOH(交通・屋外広告) – 媒体の特徴、担当の仕事内容など

私たちがふだん街で目にする看板やポスターなども、実は広告代理店の仕事の一つです。ちなみに「交通・屋外」は英語で「Out Of House」なので、広告業界では交通・屋外広告の略称として「OOH」という言葉が使われています。では具体的には広告代理店の交通・屋外広告(OOH)担当はどんな仕事なのでしょうか?

結論から言うと、代理店のOOH担当の仕事は、クライアントの広告要件に沿って、適切なOOHの路線、場所そして広告枠を選択することです。ここでは広告代理店における媒体としての交通・屋外広告(OOH)の特徴、OOHの種類、そしてOOHの広告枠なども含めて、OOH担当の仕事内容について詳しく解説していきます。

1.そもそも広告代理店における媒体(メディア)とは?


広告代理店といえばTVコマーシャルなどを手掛け非常に華やかなイメージがある一方で、(主に営業の仕事を指して)「激務」、「きつい仕事」というイメージが強い方も多くいるかと思います。

当たり前のことですが、広告代理店の仕事は営業だけではありません。広告代理店の大きな役割は、①広告内容の制作、②広告の伝達ということです。そして広告を伝達する重要な手段として媒体(メディア)への掲載があります。

メディアには、「マスメディア(4マス)」と言われる新聞、テレビ、雑誌、ラジオに加えて、OOH(交通・屋外広告)や最近急拡大しているインターネット広告などがあります。今回は広告代理店における「OOH」というメディアに焦点を当て、ラジオの媒体としての特徴などを含めて仕事内容を解説していきます。

2.代理店にとって「OOH」ってどんなメディア?


OOH(交通・屋外広告)は2015年に電通が発表した日本全体の広告費用の中で約5,232億円で、5,679億円の新聞広告よりも多い広告媒体となっています。では実際のOOH広告はどのような種類や料金なのでしょうか?その疑問に答えるためにも、そもそも媒体としての「OOH」を詳しく紐解いていきましょう。

OOHは交通・屋外広告と呼ばれるだけに、大きく分けて①交通広告と➁屋外広告の2種類があります。簡単に説明すると、①交通広告とは文字通り電車やバス、飛行機など交通機関の中や周辺施設に展開される広告で、➁屋外広告は街中に掲示される看板やポスターなどの広告を指します。

OOH広告は乗り物やビルなど規制さえなければ、ありとあらゆる場所が広告スペースとなり、テレビやスマホ、新聞、雑誌、ラジオなどの様にデバイス(端末)を必要としないのが特徴です。

それでは今回はOOHを交通広告と屋外広告の2つに分けて詳しく見ていきましょう。

3.交通広告ってどんなメディア?


交通広告は、鉄道、バス、タクシー、飛行機、船などの交通機関が管理する車両の内外や、駅・空港・港湾などの建造物・施設などを利用して掲示するタイプの広告です。

交通広告媒体の特徴は、広告を掲出するエリアを細かく特定できること、そして車内広告や機内広告の場合、比較的長いあいだ消費者に広告を見せることができることが挙げられます。

(1)交通広告の種類

広告広告の代表例は鉄道広告で、以下のような種類があります。

①車内の広告


中づりポスター(B3サイズ)
まど上ポスター(B3またはインターサイズ)
ドア上ポスター(縦14.8cm×横99.4cmなど)
ドア横ポスター(B3サイズなど)
ドアステッカー(縦16.5cm×横20cmなど)
小窓ステッカー(縦16.5cm×横20cmなど)
ドア上デジタルサイネージ
車体ラッピング
つり革広告など

②駅構内の広告


駅ばりポスター(B0、B1、B2サイズ)
看板広告
ベンチ広告など

また、車内スペースを1社スポンサーだけで独占して注目度を一気に上げるような掲出方法もあります。

(2)交通広告のサーキュレーション

交通広告媒体では、広告が掲出されている交通機関を利用した人数を用いて、サーキュレーションを計測します。サーキュレーションは、鉄道広告の場合、車内広告では輸送人数(ある路線の電車に乗った延べ人数)によって測られ、駅構内の広告は駅の乗降人数によって測られます。

(3)交通広告媒体の料金

たとえば代表的な交通広告である車内中づりポスターの場合、たとえば東京メトロ銀座線、日比谷線、千代田線、半蔵門線各線に合計で1,300枚の中づりポスターを2日間掲出すると、その料金は約100万円程度になります。またJR山手線の人気の高い7駅にB1ポスターを合計28枚掲出すると約120万円程度となります。

(4)交通広告の過去、現在そして未来

■表示された写真は自身で撮影したものです。■被写体のパーツモデルはストックフォト許諾済みです。


鉄道・電車などが登場してからしばらく大きい変化のなかった交通広告ですが、2000年代に入ると大きな変化を迎えます。それは日本経済の長引く不況によって、広告業界自体の低迷に繋がり、交通広告自体も変革を求められてきたことが原因でした。

これまで中づりポスターを中心に車内広告と駅ばりポスター主流だった交通広告の世界に、車体ラッピングという概念が登場しました。これは当初海外で用いられてきた広告手法を、日本ではまずバスが導入し、好評だったため鉄道や飛行機でも用いられるようになりました。

さらには最近ではデジタルサイネージも主流となりつつあります。デジタルサイネージとは、車内のドア上にある液晶ビジョンで、TV広告をそのまま転用できるような動画広告が配信でき、さらにはデータさえ変更すればすぐに配信を切り替えることができるようになったこと等が大きな特徴です。最近ではデジタルサイネージが主要駅に導入されているケースもあります。

交通広告はこれまで長らくポスターなど「紙」が主流の広告媒体で、貼ったり、剥がしたりする掲示の運用管理が必要となってきました。今後、紙からデータに移行していくことが予想され、ビッグデータなどの顧客データベースと連携させることで消費者ひとりひとりに合わせた新たな広告展開も可能な広告媒体となっていくのではないでしょうか。

(5)【まとめ】交通媒体・交通広告の特徴

媒体特徴・エリアを特定して広告出稿することができる
・全国的なマス広告の展開には適さない
・大都市、人口集中エリアに特に有効な広告媒体
・車内広告や機内広告の場合、乗客の広告への接触時間は比較的長い
・平日と休日とでは、オーディエンスが異なる
広告目的・大都市圏においては、認知および理解を促進する
・地域に密着した広告を展開するのに適している
広告効果・大都市住民、ビジネスマン、OL、学生などへの広告訴求に適している
・大サイズの広告を出稿することにより、インパクトを高めることができる
・色彩効果も高い
・鉄道広告などでは、交通機関内の売店などで販売されている商品の広告に適している。これは広告接触時点と商品販売時点とが近いことに起因する。
・広告効果の測定が難しい

4.屋外広告とは


では次にもう一つのOOHである「屋外広告」について見ていきましょう。

(1)屋外広告の特徴


屋外広告は屋外広告物法で、「常時または一定の期間継続して屋外で公衆に表示されるものであって、看板、立て看板、貼り紙ならびに広告塔、広告板、建物その他の工作物などに掲出され、または表示されたもの」と定められており、屋外を通行する歩行者やドライバを対象にしています。屋外広告の歴史は非常に古く、商店の看板やのれんがその起源です。

屋外広告は、長期間にわたって継続して露出しているため、メッセージを繰り返し伝達することが可能です。そのため特に人口の集中した大都市では企業・商品・サービスの認知を高めることに適した広告と言えます。
大阪のグリコの看板のように、長年掲出することで街のシンボルとなっている屋外広告も少なくありません。

また屋外広告は公共の空間に掲出されるため、安全性や都市景観などへの配慮が必要となります。そのため屋外広告物法・建築基準法・道路交通法・地方自治体の条例などを守らなければなりません。

(2)屋外広告の種類とサーキュレーション

屋外広告には、様々な種類があります。代表的な例を以下に記載します。

①ポスターボード


ポスターボードには、広告主自ら開発したボードと、媒体社が所有し月単位で広告主にセールスするボード(リースボード)があります。

リースボードの場合、広告ターゲットに適したより多くの消費者に到達するために、複数のボードをネットしています(ネットする面数はおよそ50~200面程度)。ネット方法として、たとえば繁華街をネットする、学校通学路をネットする、ガソリンスタンドをネットする、量販店およびその周辺をネットするなどの方法があります。広告ターゲットに応じて使い分けられます。

ポスターボードは、設置場所によってサーキュレーション(1日当たりの周辺通行人数)が大きく異なります。そしてサーキュレーションや掲出サイズによって媒体料金も大きく異なります。

②大型映像表示ボード


強いビジュアルインパクトを期待できる屋外広告として、大型映像表示ボードがあります。これは多数のビジョンを集積した映像表示装置で、テレビ並みの画質で映像を表示でき、またほとんどのボードで音声も出すことができます。

大都市の主要駅前、繁華街などに設置されており、代表例としては渋谷ハチ公前交差点の「109フォーラムビジョン」「Qフロントビジョン」、新宿東口駅前のスタジオアルタなどが挙げられます。

③スポーツ・レジャー施設看板


競技場、ライブ会場、ホール、劇場といった施設の内外も広告スペースです。このうち特に野球中継やサッカー中継などが行われるスタジアムの広告スペースは、来場客の広告接触に加えてテレビ中継を通じて多くの視聴者が広告に触れる可能性があるため、高い媒体価値があります。たとえばテレビ中継において視聴率が10%あれば、関東地区だけで140万以上の世帯が広告に接触したことになります。

(3)屋外広告の種類

袖看板店舗やビルなどの建物に取り付けた看板で大型タテ長のもの。通常は広告面が画面にあり、照明入りのものが多い
突き出し看板袖看板と同様のもので、店舗から街頭へ突き出した小型の看板。袖看板がタテ型に対して、突き出し看板はヨコ長のものをさす。
懸垂幕ビルの外壁、店頭や店内などに垂らすタテ長の幕
電柱広告電柱に設置された広告板
野立看板沿線看板ともいい、鉄道および道路の沿線に設置した看板
ロードサイン野立看板のうち、主に沿道に設置された看板
ビルボード掲示板という意味の木製または金属製の枠に広告面を取り付けた看板のうち、比較的大型のものをさす。ペイント塗装の描き看板が多い。
ポスターボード一枚一枚別々に印刷したポスターを張り合わせ、一つの絵柄にしたポスターを掲出する看板
リースボードポスターボードのうち、複数社が複数面を所有し、広告主にセールスするものをさす
ネオンサインネオン管を利用した看板ネオン管は、ネオンガス・アルゴンガスなどを封入した放電管
LEDボード発光ダイオード(LED)を用いて、文字や画像、アニメーションの表示を行う
Qボード電磁制御ボードとも呼ばれるカラー素子を磁力で回転させ、それらの色の組み合わせによって文字を表示
大型映像表示ボード多数の画面を集積した大型の映像表示装置。テレビ並の画質を表示し、音声も出すことができる

(4)屋外広告の過去、現在そして未来

■表示された写真は自身で撮影したものです。■被写体のパーツモデルはストックフォト許諾済みです。


先ほど述べた通り、屋外広告は広告媒体としてシンプルであるがゆえ、歴史的に古くから存在してきた媒体です。多くの人の目に触れる場所や通りに広告を掲出する屋外メディアは単純でありながら、非常に効果的であり、これからも形を変えても生き続けていくであろう媒体と言えます。

では今後屋外広告はどのように形を変えていくのでしょうか?
そのカギを握っているのはやはりインターネットやデジタルサイネージでしょう。実際、アメリカの某広告代理店は「2019年に屋外広告の90%はデジタルに変わるだろう」と予想しています。私個人的には(特に日本国内においては)そこまで急激に変化することはあり得ないと考えていますが、確かに今後インターネットやデジタルサイネージとの融合が、屋外広告を変えていく要素であることは間違いありません。

例えば、屋外広告の前を通った消費者(生活者)が持っているスマートフォンに反応して、その消費者に応じた最適な広告を表示することができれば、現在よりもターゲットを絞った適切な広告展開が可能となるでしょう。実際、スマートフォンを通じて広告を表示したり、案内映像を流す屋外広告は開発・展開されています。これから幅広く普及するためには、屋外広告を取りまとめるブローカーやIT企業の積極的な姿勢が求められています。

(5)【まとめ】屋外媒体・屋外広告の特徴

屋外広告
媒体特徴
・長期間屋外に露出するため、メッセージを繰り返し伝えられる
・全国的なマス広告には適さない
・大都市、人口の集中するエリアに有効
・曜日や時間によってオーディエンスが異なる
広告目的・社名やブランドなどの認知を促進できる
・新商品の認知を促進する、イベントやキャンペーンの告知
・地域密着の広告展開に有効
広告効果・大都市住民(ビジネスマン、OL、学生、ドライバーなど)への訴求に適してる
・大きなサイズのビジュアルを掲出できるため、強いインパクトを残すことができる
・反復効果が高い
・販売地点に近い場所で、企業、商品、サービス名を想起、再生させることができる
・エリアのシンボルになることもある
・広告効果測定が難しい
                     

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広告マン

私は有名な大手2社ではありませんが、国内上位5社に入る広告代理店で営業(アカウントエグゼクティブ)として3年前まで働いていました。その経験から、あまり世の中では語られていない広告代理店の具体的な仕事内容や実際の過酷さについて正直な記事を書いていきます。