そもそもビッグバンとは1990年代の半ばごろ、主に金融業界で起こった大きな変革を「金融ビッグバン」という言葉で表現したものでした。ただし、この「金融ビッグバン」は金融業界だけにとどまらず、他の業界にも影響を及ぼし、広告業界にも多大な変化を生み出すことになりました。この大きな変革は「広告ビッグバン」とも呼ばれています。
さらに、この広告ビッグバンは90年代~2000年代にかけて大きな影響をもたらしましたが、より正しく言えば、この広告ビッグバンは現在も進行中と言っても過言ではありません。今回はこの「広告ビッグバン」について解説していきます。
目次
1.広告ビッグバンがもたらした業界変革
90年代半ばの金融ビッグバンに端を発する「広告ビッグバン」は、90年代後半から2000年にかけて外資系広告代理店を巻き込んだ業界再編を促しました。その動きの代表的な例は以下のようなものでした。
(1)電通への影響
日本国内では圧倒的なシェアと存在感を持つ電通においても広告ビッグバンは大きな影響をもたらしました。2000年にはレオ・バーネットそしてマクナマスと立ち上げた「ビーコムスリー」を、その後ピュビリシスと統合、現在はピュビリシスグループに資本参加をしています。さらに世界最大の広告代理店WPPグループのY&R(ヤング&ビルカム)との合弁である電通Y&Rも保有しています。
(2)博報堂への影響
博報堂DYホールディングスは、博報堂、大広、読売広告社の持ち株会社として2003年10月に設立され、日本国内の広告業界で最も大きい再編となりました。オムニコムグループとの合弁によるTBWA/HAKUHODOを保有するほかにも、2000年にはインターパブリックグループ傘下のロウアンドパートナーズと博報堂、大広が業務提携しています。
(3)ADKへの影響
1999年、旭通信社と第一企画の合弁によってADKが設立され、世界最大手の代理店WPPが24.5%の筆頭株主となっています。
(4)東急エージェンシーへの影響
国内トップ5にも入るハウス系代理店筆頭の東急エージェンシーは、2003年にオムニコムグループと業務提携しました。さらにDDBジャパンをDDB東急エージェンシークリエイティブと社名変更も行っています。
2.広告ビッグバンが起きた原因
ではこの広告ビッグバンはどうして起きたのでしょうか?日本の広告業界を揺るがした広告ビッグバンの原因を詳しく見ていきましょう。
(1)日本の広告業界の市場規模と特殊性
実は日本で「広告ビッグバン」が起きた背景には、日本国内の広告業界の規模の大きさも深い関係がありました。
実は日本の広告業界は市場規模でこれまで世界第2位であったにも関わらず、外資系の広告代理店の進出はそれほど進んでおらず、かなり特殊な道を歩んでいました。
世界の広告代理店の傾向を見ると、単体の企業では規模はそこまで大きくなく、むしろいくつもの国にまたがり、関連会社も含めて様々な広告代理店群を構成することで、巨大な代理店グループを形成しています。
それに対して、日本の場合は巨大な数社(電通と博報堂)が広告市場をほぼ独占している状態です。その裏付けとして、現在でも単独企業として世界最大の広告代理店は電通であり、博報堂は世界第8位となっています。
また、日本社会では情緒・感情といった側面も重視されていることから、当然日本の消費者への訴求ポイントも欧米と異なり、広告コミュニケーションスタイルが外資系代理店と大きく違っていたという点もありました。
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(2)金融ビッグバンの影響
金融ビッグバンにおける世界共通のテーマは「規制緩和」でした。日本でも小泉首相が「規制緩和」というテーマで、日本郵政の改革に取り組んだのはまさにこの金融ビッグバンの後でした。
この影響は広告業界にも波及し、金融の規制緩和を受けて日本に進出してきた多くの外資系企業は、広告を行う際にも自社のやり方(グローバルスタンダード)を望んだため、日本国内の代理店もその余波を受けました。
グローバル企業は、その基本戦略から具体的な施策まで、本社で検討され、さらに各地に設けられたヘッドクオーター(エリア支局)でプランが練られるため、広告代理店を決定する際もグローバルに展開する代理店である方が当然有利となります。
さらに世界共通で展開されるブランド広告などはその典型事例で、クライアントとワールドワイド契約した広告代理店が戦略・企画立案、広告制作をおこない、自社のグローバルネットワークで世界に発信されることとなります。
<外資系代理店の詳細>
外資の広告代理店とは – ランキングや特徴、今後の動きなど
3.まとめ
いかがだったでしょうか?
広告ビッグバンは従来までの日本の広告業界を根底から覆しかねないほどの影響を与え、今なおその余震は続いているとも言えます。
様々な業種、業態のグローバルカンパニーが生き残りをかけてM&Aや提携・合併を繰り返し、クライアント自身もより巨大化している現状では、広告美人スについても特定の有力な広告代理店グループに業務が集中していく可能性が高いです。
引用・参考:新屋哲博・松岡富士夫監修「広告ビジネスの基礎講座」