外資の広告代理店とは – ランキングや特徴、今後の動きなど

日本には様々な種類・形態の広告代理店があり、広告業に関する事業所数は、全国で約9,200ヶ所(経済産業省、平成27年特定サービス産業実態調査より)存在しています。

その広告代理店の分類方法の一つとして、企業の資本関係による分類が挙げられます。
今回は、広告代理店の資本関係による分類の中でも「外資系」に分類される企業について紹介したいと思います!

1.外資系の広告代理店って?


外資系の広告代理店とは、外国法人あるいは外国人が出資を行っている広告代理店の事を指します。基本的に「外資」といえば海外に本社のある企業を思い浮かべるかもしれません。しかし、日本国内に本社を持つ企業でも、外国の企業と資本提携を行っていれば「外資系」と呼ばれる事もあります。

2.外国資本系の広告代理店が急増加!「広告ビッグバン」とは?


21世紀つまり2000年直前に、広告会社の国際化が急激に進み、外資系の広告代理店が急増加しました。この現象が、いわゆる「広告ビッグバン」と呼ばれるものです。

「広告ビッグバン」とは、おおよそ20世紀最後の3年間ほどの期間を指します。この時期に日本の広告代理店の状況は大きく変化しました。

この時期に日本の大手広告代理店の国際化は急激に進み、現在国内広告代理店のトップ10内で本格的な国際展開を図っていないのは、ハウスエージェンシーとしての色彩も残す東急エージェンシーとJR東日本企画(Jeki)ぐらいと言っても過言ではありません。

3.広告ビッグバンが起きた理由


では外資系代理店が参入するきっかけとなった広告ビッグバンはなぜ起きたのでしょうか?その背景には2000年を前にして起きた「金融ビッグバン」とも大きな関わりがあります。それでは広告ビッグバン発生の具体的な理由について、見ていきましょう。

金融ビッグバンにおける最大のテーマは規制緩和でした。金融の規制緩和を受けて日本に進出してきた外資系企業は、広告展開をおこなう場合にもグローバルスタンダードのやり方を求めました。さらにナイキ社やコカ・コーラなどに代表されるグローバル企業では自社ブランドの育成・管理を徹底するため、世界同一の広告メッセージや訴求を求めました。そのため日本の広告業界にも外資系代理店参入のきっかけを生み出したのです。

実は日本の広告市場規模は世界第2位の位置にありながら、世界規模でビジネス展開をおこなう欧米とは異なり、それまでかなり独自の道を歩んできました。つまり「ガラパゴス」だと言ってもよいでしょう。なぜならば日本には既に電通や博報堂といった(世界的に見ても)広告業界の巨人たちが独自のメディア買付ルートを確立し、さらには日本文化に即した広告訴求方法を徹底していた為、外資系代理店には付け入る隙が無かったのです。

そこに金融ビッグバンに端を発する「広告ビッグバン」が起き、日本国内の資本関係も大きく様変わりしていきました。広告ビッグバンは従来の広告業界の慣習やビジネススタイルを根底から覆しかねないほどの影響を与え、2000年直前から2000年代までその激震は大きく響きました

その一例は、1998年に当時の旭広告が世界最大のWPPグループと資本・業務提携を結んだうえで、翌年99年に国内第3位の広告代理店アサツー・ディ・ケイ(ADK)が誕生しました。さらに翌年の2000年には電通がフランスの大手広告会社で世界第3位のピュブリシス・グループと合弁会社を設立しました。

様々な業種・業態の世界的企業が今後の生き残りをかけてM&Aや提携・合併を繰り返し、クライアント自体が益々巨大化している現状では、広告ビジネスに関しても特定の有力な広告代理店グループに業務が集中していく可能性もあります。

そのため広告市場そのものを世界的な視点で見据えて業務実行していくスキルを持つことが今後のアドマン(広告人)に求められる必須条件となるまでになっています。

<広告ビッグバンの詳細>
広告ビッグバン – 広告業界に起きた大変革の原因や影響

大手版

4.外資系の広告代理店のランキング


世界の広告業界を俯瞰した場合、売上高の大きい「4大メガエージェンシー」という企業が存在します。この4大メガエージェンシーに加えて日本の電通グループが、世界の広告代理店売り上げランキング(下図)の上位5位を占めており、売上高としても他を大きく引き離しています。

◆世界の広告代理店ランキング(2015年)

順位広告会社(グループ)売上総利益(100万$)
1WPPイギリス18,693
2オムニコム・グループアメリカ15,134
3ピュブリシス・グループフランス10,648
4インターパブリック・グループアメリカ7,614
5電通日本6,297
6アクセンチュアアメリカ・イギリス2,923
7ハバスフランス2,430
8アライアンス・データ・システムズアメリカ2,141
9IBMアメリカ2,125
10博報堂DYホールディングス日本1,822

ちなみに電通グループは世界の代理店グループの中では5位に位置していますが、子会社・関連会社を抜いた単体企業としては実は世界一の売上を誇っています。

<外資や日本の広告代理店ランキング>
《2018年最新版》広告代理店ランキング – 売上、仕事内容、年収、外資系も紹介!

4.外資系の広告代理店には、どんな企業がある?


それでは外資系の広告代理店にはどんな企業があるのでしょうか?ここでは具体的な外資系広告代理店について詳しく解説していきます。

まず真っ先に挙げられるのが、世界4大メガエージェンシーと呼ばれる、WPP(イギリス)、オムニコム・グループ(アメリカ)、ピュブリシス・グループ(フランス)、インターパブリック・グループ(アメリカ)です。この4つの代理店は、世界で非常に大きな影響力を持っています。ですので、ここでは代表的な4大外資系代理店について解説をしていきます。

(1)WPPグループ


イギリスに本社(正確には税制上の理由からアイルランド)を構える世界最大の広告代理店・WPPグループ。その社名はもともとワイヤー&プラスチック社(Wire Plastic Products)というワイヤー製の買い物籠メーカーを買収した際の名前が由来となっています。世界の代理店リーダーだけあり、クラアイントもユニリーバ、ネスレ、アメリカン・エキスプレスなど世界中で展開するグローバルカンパニーを担当しています。ちなみにWPPグループは上述の通り日本のアサツー・ディ・ケイ(ADK)とも業務・資本提携を行っており、同社の株を24.5%保有し筆頭株主となっています。さらにはWPPグループのY&Rと電通で合弁会社「電通Y&R」を立ち上げています。

(2)オムニコム・グループ


アメリカ・ニューヨークに本社を持つオムニコム・グループは世界第2位の広告グループです。そのグループ傘下には、「BBDO」や「TBWA」などの会社を持っており、2013年には世界3位のピュブリシス・グループと合併し、世界最大の広告会社が誕生する予定でしたが結局は破談に。日本では、東急エージェンシーと業務提携してDDBジャパンをDDB東急エージェンシークリエイティブと社名変更した他にも、博報堂DYホールディングスと共に「TBWA/HAKUHODO」を保有するなど進出に積極的です。

(3)ピュブリシス・グループ


ピュブリシス・グループはフランスに本社を持つ、世界第3位の広告会社グループ。日本では電通と組んでビーコムスリーと統合し、資本関係を持っています。

(4)インターパブリック・グループ(IPG)


インターパブリック・グループは米国ニューヨークに本社を持つ世界第4位の広告グループです。IPGの傘下には、マッキャンエリクソン、オクタゴン・ワールドワイドといった広告代理店があります。日本では博報堂、大広と業務提携をおこなっています。

以上のように、WPPグループ(英)、オムニコム・グループ(米)、ピュブリシス・グループ(仏)、インターパブリック・グループ(米)、そして日本の電通は「5大メガ・エージェンシー」と呼ばれ、ランキングの6位以下に大きな差を付けています。これらのメガ・エージェンシーは世界各地の広告代理店と吸収・合併を繰り返し、その規模を広げています。

また日本の企業に外国資本が参入して、「外資系」と呼ばれるようになったケースもあります。その代表的な代理店が、先ほども説明したアサツー・ディ・ケイ(ADK)です。ADKは電通・博報堂に次いで国内3番手の広告代理店です。

1999年に旭広告社と第一企画が合併し、設立されたのがADKですが、イギリスのWPPグループと業務提携を行っており、資本・業務提携が結ばれています。

「I&S BBDO」もその一例です。I&S BBDOは1986年に第一広告社とセゾングループのSPNが合併して設立されましたが、後の1998年にオムニコム・グループの傘下に収まりました。

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5.外資系広告代理店の特徴とは?


それでは外資系の広告代理店の特徴は何なのでしょうか?日本の広告代理店とは異なるのでしょうか?

結論から言えば、外資系広告代理店の特徴は、クライアント(顧客)構成やグローバルな組織体制での働き方という点が挙げられます。逆にメディアバイイングや広告内容は日本の代理店と大きく変わらないと言えます。

なぜならば日本の広告市場ではあくまでも広告の対象は日本人になるため、日本文化や生活習慣、さらには国民性も強く影響を受けるため、広告の展開方法(メディアや訴求内容)はどうしてもこれまでとある程度同じものする必要があるからです。

ただし、先ほど述べた通り、クライアント(顧客)にグローバル企業を抱えているため、彼らが世界中で一貫した訴求メッセージを日本人にも展開したい場合などがあれば、それに基づいた広告・CM制作をする必要が出てきます。例えば、マクドナルドは世界中で「I’m loving it」、ナイキの「Just Do It」といった広告メッセージは、世界で統一されています。

また最近では、ユニリーバがサッカーのC・ロナウド選手を起用した「CLEAR」というヘアケアシャンプーは、本社側で制作された広告素材で、全世界で統一して利用しなければならないという条件がありました。

6.外資系広告代理店に英語は必要?


外資系の広告代理店への就職や転職を希望している方たちにとって気になるのが英語力です。外資系広告代理店に入社する場合、英語は必要なのでしょうか?

結論から言えば、外資系の代理店だからと言って英語が堪能である必要はありません。なぜならクライアント(顧客)には日系企業もありますし、外資企業といってもクライアントの広告担当者が日本人である場合も多いからです。

実際、某大手外資系代理店の転職者の求人募集要項には以下のような記載がありました。
「英語力:担当クライアントによりビジネスレベルの英語力。ない場合でも、ご経験に合わせた配属を検討いたします。」

さらには他の外資系代理店の募集要項ではこのような記載でした。
「英語できれば尚可(顧客企業は、日系・外資ともあります)」

つまり英語力はあれば優遇はされると思いますが、そこまで英語が出来なくても問題はないと思います。
(※もちろん英語で簡単なメールが打てるぐらいの初歩レベルの英語力はあった方が良いと思います)

7.広告業界の新たな勢力・外資系コンサル


これまではあくまでも外資系の「広告代理店」について話をしてきましたが、欧米を中心に広告業界には新たな勢力が台頭しつつあります。それはコンサルティングファーム(コンサル会社)です。なぜコンサル会社がなぜ広告事業に手を出しているのでしょうか?

それは現代における広告活動が、経営戦略とより密接に関わってきていることが原因です。というのも、これまでコンサルティングファームの活動領域は、IT・会計分野が中心でした。特にIT・会計分野においては業務基幹システムの開発や、会計システムの導入を積極的に進めることで、企業のコスト体質を改善するなどの効果をもたらしてきました。

さらに会長・社長、取締役クラスなど企業トップ層と関わる経営戦略の部分もコンサルティング会社の事業領域の一つでした。そのため、営業戦略や販促戦略などにも関わることはありましたが、当然広告やキャンペーンといったTV、新聞・雑誌などを利用した広告については広告代理店の専門領域のため、手を出すことは不可能でした。

しかし、TVや新聞・雑誌などこれまでの媒体(メディア)の影響力が薄れ、インターネット等デジタル領域での広告コミュニケーションが増えてきたことにより、コンサル会社でも取り扱うことが可能となってきたのです。その結果、最上流である経営戦略から、実際の広告・キャンペーンの実行まで取り扱うコンサル会社が急増しました。

それは、ここ3年以内にコンサルティング会社がM&Aを行い買収してきた会社に如実に反映されています。以下はその一例です。

・2016年、PwC(プライスウォーターハウスクーパース)はネット広告にも強い広告代理店「Fluid(フルイド)」を買収
・2016年、Deloitte(デロイト)はクリエイティブ領域に強い代理店「Heat(ヒート)」を買収
・2016年、アクセンチュアはドイツのネット広告代理店「Sinner Schrader(ジナー・シュラーダー)」、イギリスの広告代理店「Karmarama(カーマラマ)」を買収、さらには日本のIMJを事実上の買収(子会社化)

その結果として、現在の世界の広告代理店ランキングの6位には、世界的コンサルティング会社であるアクセンチュアが台頭する状態となりました。今後もこの傾向にはますます拍車が掛るものと思われ、中小のネット代理店やクリエイティブ制作会社はコンサルティング会社に吸収・買収されていくものと思われます。

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8.まとめ

いかがだったでしょうか?
海外に本社を持つ代理店のみならず、日本国内に本社を持つ代理店でも、外国法人と資本関係があれば「外資系」の広告代理店に分類されます。20世紀直前の数年に起きた「広告ビッグバン」の影響によって、国内の広告業界で外国資本の代理店が増加しましたが、今後も広告ビッグバンの影響は続き、4大メガエージェンシーをはじめとした外資系代理店の増加が見込まれています。

さらには外資系の参入は、なにも生粋の広告代理店だけに限ったことではありません。日本国内でもデジタルエージェンシーの草分けとも言えるIMJがアクセンチュアに買収されたように、欧米諸国で主流となりつつあるコンサルティング会社の広告業界への進出も今後さらに増えていくと予想されます。

                     

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広告マン

私は有名な大手2社ではありませんが、国内上位5社に入る広告代理店で営業(アカウントエグゼクティブ)として3年前まで働いていました。その経験から、あまり世の中では語られていない広告代理店の具体的な仕事内容や実際の過酷さについて正直な記事を書いていきます。