【最新版】2018年度の売上から見るサイバーエージェント、各事業を徹底分析|企業分析

長い間不動だった広告代理店のランキング順位に変化の兆しがあるということはご存知でしょうか。周知の通り、これまでは一位が電通、二位が博報堂、三位がADKという順番でしたが、現在三位の座に「サイバーエージェント」が迫っています

ADKの2017年度の売上が3528億円に対し、同じ年のサイバーエージェントの広告事業のみの売上は2081億円です。2018年度の売上は2414億円に伸びました。業界内でも、数年のうちにADKを抜いて三位のポジションにつく事が予想されています。

ちなみに広告以外の他事業も含めたサイバーエージェント全体の売上は4195億円になっており、すでにADKを抜いたことになります。

このように注目されている同社ですが、今回は最新の売上高のデータ等を用いて各事業を徹底的に分析していきたいと思います!


1.サイバーエージェントの事業紹介

サイバーエージェントの主要事業をまとめると以下の3つになります。

「インターネット広告事業」
「ゲーム事業」
「メディア事業」

この3つの事業を2018年度(2017年10月~2018年9月)の売上高で比較してみると、このようなグラフになります。


このように、サイバーエージェントではインターネット広告事業による売上高が最も多く2414億円になります。そして、ゲーム事業が1465億円、メディア事業が314億円と続きます。

それでは、各事業がどのようなサービス展開をしているのか詳しく見ていきましょう。

(1)インターネット広告事業

創業以来インターネットに特化した広告サービスを展開し、成長を続けてきたサイバーエージェントにとって、この事業は最も重要性の高いものです。そんなネット広告事業において現在、特に重点が置かれている分野が「インフォード広告」と「動画広告」です。

インフィード広告とは、webサイトやアプリのタイムライン型のコンテンツの間に、コンテンツと同じの見た目で表示される広告のことです。TwitterやFacebookに表示される広告を思い浮かべるとわかりやすいでしょう。
現在では同社のサービスが市場の四分の一以上のシェアを占めるまでに拡大しています。インフィード広告は今後も更なる普及が見込まれているので、成長が期待されています。

動画広告は文字通り、動画の形態で配信される広告のことです。テレビCMとは異なり、インターネット上での動画広告は消費者をセグメントに分けた上で配信できるので効果も高く、こちらもさらなる成長が見込まれています。この領域では子会社の「株式会社CyberBull」が担当しています。

なぜこれらの広告分野においてサイバーエージェントが強いのかという理由なのですが、それは広告代理店機能だけでなく、広告制作、動画広告専用の独自ソリューションや広告商品の開発など総合的なサービス提供が行える点が挙げられます。

サイバーエージェントのインターネット広告領域だけ見ても子会社が20社以上あり、2017年にはインフィード広告の動画制作に特化した子会社、「株式会社 ムービーモンスター」を新たに設立するなど、クリエイティブ面においても注力しています。
スマートフォンに特化した広告マーケティング事業を担う「株式会社Cyber Z」などにも注目です。

(2)ゲーム事業

前述したようにインターネット広告によって成長を続けてきたサイバーエージェントですが、2009年にゲーム事業にも参入し、現在では同社の成長を牽引する主要事業の一つになるまでになりました。同社のゲーム事業の特徴として、ヒット作品の数の多さ、運用力の高さが挙げられます。

ゲーム業界、その中でもスマホゲーム領域は特に、タイトルが当たるか当たらないかによって会社の業績が大きく左右されます。またコンテンツの入れ替わりも激しいためヒット作品が生まれても安定して利益を出すのが困難です。

そのような状況下でも同社は現在主力タイトルを8つ保有しており、それぞれが3~4年という長い期間に渡って人気を維持しています。

なぜこのようにヒット作品を創出しつつ長い間人気を維持できるかという理由なのですが、それはゲーム製作もやりながら協業での開発やアニメ領域に進出し柔軟に立ち回れている点が挙げられます。
例えば最新のヒット作である「ドラガリアロスト」は任天堂との共同開発で生み出されたものであり、非常にクオリティーの高い作品となっております。実際に配信から一ヶ月経った時点で40億円の売上を出しています。
また他の作品においては、ゲームのリリース前に宣伝も含めアニメを先に放送するという新しい展開にも挑戦しています。

このように、クオリティーやユーザーを飽きさせない工夫を追求しながらも、上手くマネタイズできている点が1465億円の売上に繋がったのだと考えられます。
この事業では「株式会社Cygames」や「株式会社サムザップ」などがゲームの企画や運営を行っています。

(3)メディア事業

現在話題の「AbemaTV」の他に、芸能人が多数利用していることで有名なブログサービス、「アメーバブログ」もこの事業に含まれます。

アメーバブログは上位の人気ブロガーに賞金を送るイベントや、マスメディアとの連携でユーザーやPV数を順調に伸ばし、日本で最大規模を誇るブログサービスになりました。

一方で「AbemaTV」は会員登録不要で無料で全ての番組が視聴することができるインターネットテレビです。開局約二年で3400万ダウンロードを記録した人気サービスですが、コンテンツの拡充のための先行投資により約200億円の赤字が出ています。
前述したインターネット広告事業の2018年度の営業利益が213億円、ゲーム事業が253億円というデータを見ると、この先行投資による赤字がいかに大きなものかがわかるでしょう。

ただし現時点で「AbemaTV」のような、テレビのようにチャンネルをあわせると配信中の番組が流れる「リニア視聴」を無料で楽しめるサービスは他に競合がいない状態です。
上手くマネタイズできれば大きな可能性を秘めている事業とも言えます。

実際に2019年1月以降「AbemaTV」ボタンが、パナソニックのテレビのリモコンに搭載されるなど、より大規模なサービスになることが予想できます。

通常版

2.各事業の売上推移

続いては、直近4年間の売上高の変化を見ていきます。売上高を分析することで、会社の規模や業績の推移がわかります。

(1)インターネット広告事業の売上推移


順調に売上高を伸ばしていますが、主な理由はスマートフォン広告の販売が好調な点にあります。
2015年では、売上高の約30%がスマホ広告によるものでした。それと比較し、最新の2018年の売上高は約80%がスマホ広告の販売によって構成されています。

さらにはインターネット広告市場の中でも成長領域である「動画広告」でも市場シェアを拡大させており、2016年には18.8%だったシェアが2017年には23.5%にまでなりました。

サイバーエージェントは2018年、このインターネット広告事業に関してグループ化1社、新会社を5社設立し、特にクリエイティブやAI領域で積極的に事業展開を進めていることから今後もさらなる成長が期待できると言えます。

(2)ゲーム事業の売上推移


2015年では4つだった主力タイトルが、「シャドウバース」や「ドラガリアロスト」が加わり2018年には8つになりました。
好調な売上高の理由は、このように過去のコンテンツを高い運用力で長続きさせながらも、新規タイトルもヒットさせていった点にあります。

特に「ドラガリアロスト」は国内だけでは無くアジア・北米にも展開し、台湾・香港・マカオの2018年10月時点のセールスランキングでは1位になっています。

前述したように、「グランブルーファンタジー」など人気タイトルはアニメ化され、今なお多くのユーザーに支持されているので今後の動向にも注目です。

(3)メディア事業の売上推移


こちらの事業も他事業と同じように右肩上がりの売上高になっています。
ここで注目すべきはマッチングサービスである「タップル誕生」です。サービス自体は2014年に始まっていますが、2016年頃から順調に会員数が増え続け、現在では400万人が利用する国内最大規模のサービスになりました。

ブログサービスを提供する「abema事業」が稼ぎ柱だった2015年に加え、マッチングサービスの人気による影響が、このような売上高推移の理由の一つになったと考えられます。

「AbemaTV」はタップル誕生に続くメディア事業を支える稼ぎ柱になるようコンテンツの強化、広告商品の拡販、収益の多角化を目指しています。二年連続で200億超えの投資を続けているこのAbemaTVの動向が、メディア事業の今後に大きく影響すると考えられます。

3.サイバーエージェントのこれから


ここまで直近4年間の各事業の動きを分析してきましたが、今後はどのように変化していくのでしょうか。

まずインターネット広告事業ですが、スマートフォンの普及や通信環境の高速化により、ユーザーのインターネット利用頻度や動画視聴時間はさらに多くなると予想されています。これらはサイバーエージェントのインターネット広告事業に好影響を与えると考えられますが、一方でネット広告市場の競争が激化する事も考えなければなりません。

ゲーム事業については、2019年以降も既にオリジナルのIPタイトル4本が提供される予定であり事業を支える主力タイトルになるか注目です。
ただし売上高は右肩上がりですが、2年前には300億円以上あった営業利益が直近では253億円まで減っている状態です。これは市場の競争が増し広告宣伝コストなどがかさむようになった事が原因で、今後この競争をどのように切り抜けていくか注意しなければなりません。

メディア事業は、やはりAbemaTVが大きな影響力を持っており同社の今後を左右するものとなっています。番組の視聴を促すアプリの通知では、ユーザーの属性や利用傾向に合わせて文言やタイミングを分けて配信するなど、細かい工夫で順調にダウンロード数や視聴時間を伸ばしていますが、企業のこれからを支える収益化には至っていません。
広告商品の拡販、収益の多角化が今後の課題であると考えられます。

4.まとめ

今回のサイバーエージェント、売上高分析はいかがだったでしょうか。

売上高や営業利益の推移を比較することで、どの事業のどのサービスが、不調なのか好調なのかがわかります。今のサイバーエージェントの状況を一言でまとめると、インターネット広告事業とゲーム事業がメディア事業(AbemaTV)の赤字を補いながら、約300億の黒字を出している状態です。

より詳しい財務分析の記事もあるので、興味のある人はぜひ読んでみてください。
【企業研究】サイバーエージェントは一体何の会社?売上や財務から経営を読む!

就職活動では必須の企業分析ですが、自分なりにデータをまとめ一歩進んだ準備をすることで周りとの差をつけることをおすすめします。

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