皆さん、「擬人化」といえば何を思い浮かべますか?
擬人化とは、「人間でないものを人間に見立てて表現する事」を指します。
いま広告業界では、この「擬人化」が大流行しているのです!
一体どういう事なのでしょうか?
以下のサイトを見てみましょう。
引用:https://www.lotte.co.jp/entertainment/campaign/gumkare/
これは、ロッテが展開している「ガム彼」と呼ばれるキャンペーンです。ロッテのガムと言えば皆さん一度は噛んだ事があるかと思いますが、まさかガムを擬人化する考えに至った人はほとんどいないかと思います。
このガムは、キシリトール、ACUOなどロッテの有名ガムを、若い男性の二次元キャラクターに擬人化したものです。
ロッテはこの「ガム彼」キャンペーンによって、絶大な女性人気を獲得する事に成功しました。
このように、本来人でない物を擬人化し、そのキャラクターを広告として用いるのがいわゆる「擬人化ビジネス」です。
今回は、そんな今流行りの「擬人化ビジネス」について、大流行の理由から、広告としての効果、具体的な事例まで一挙に紹介します!
目次
1.擬人化ビジネスは何故こんなにも流行しているのか
2.擬人化の波を象徴する大人気アニメ・ゲーム
①艦隊これくしょん –艦これ-
②刀剣乱舞-ONLINE-
③けものフレンズ
3.広告における擬人化の成功事例紹介
①私と彼の物干しストーリー(ベルメゾン)
②満月ポン
③IRroid
4.擬人化が広告に及ぼす効果とは?
①若年層へのターゲティング
②コミュニケーションの円滑化
③広告展開の可能性を広げる
5.まとめ
1.擬人化ビジネスは何故こんなにも流行しているのか
先ほども述べましたが、擬人化ビジネスとは、本来人でない物を擬人化し、そのキャラクターを利用して広告宣伝を行う、というものです。
それでは一体、何故こんなにも擬人化ビジネスは日本の広告業界で流行しているのでしょうか?
まず一つに、擬人化は日本のアニメ文化と深い関わりを持っています。
日本のアニメ文化の人気は言うまでもありません。昔から日本のアニメは世界に発信され、全世界で話題になっていますし、日本国内でも様々なアニメがブームを生み出しています。
当然広告業界の人間であれば、このアニメの持つ影響力を利用しない手はありません。これまでもアニメとのコラボ、という広告手法は幾度と無く用いられています。
擬人化ビジネスも、このアニメ文化を元にして考案された広告手法です。既存のアニメとタイアップするのではなく、新しく自らの商品をキャラクター化するのが擬人化だと言えます。
擬人化の動きは実はもう少し前からブームになっていました。それは「ゆるキャラ」です。商品や地域の魅力をPRするゆるキャラも、擬人化ビジネスと呼ぶ事が出来るでしょう。
今、さらに擬人化のブームが強くなっているのは、近年話題になっているいくつかのアニメやゲームの影響だと考えられます。そのアニメ・ゲームについては後の章で紹介します!
二つ目は、実は日本古来の文化に由来していると考えられます。
日本では、「八百万の神」と呼ばれるように、昔からあらゆる物に魂がこもっている、という考え方が根強かったとされています。
擬人化ビジネスが日本の消費者に対してウケるのは、もしかするとこの日本古来の因習に端を発しているのかもしれませんね!
日本の代表的な文化であるアニメ文化と、「万物に神が宿る」とする日本古来の宗教観が織り成して生まれた技が、「擬人化ビジネス」という広告手法といえるでしょう。
2.擬人化の波を象徴する大人気アニメ・ゲーム
先ほどの章で述べたように、擬人化ビジネスは、日本のアニメ・ゲーム文化と強く結び付いています。
最近、擬人化がブームになったのは以下のアニメ・ゲームの流行と、大きく関係していると考える事が出来ます。
①艦隊これくしょん –艦これ-
引用:http://www.dmm.com/netgame/feature/kancolle.html
これは、DMMが運営するブラウザゲームです。名前を聞いた事のある方も多いのでは無いかと思います。
このゲームは、第二次世界大戦時の軍艦を、二次元の美少女としてキャラクター化したものです。ゲームは、この擬人化されたキャラクター(いわゆる艦娘)を育成するゲームとなります。今や200万人以上のユーザーが登録しています。
このゲームの影響で、軍艦模型や、ミリタリ関連書籍の売上が大幅に増加したそうです。しかもそのユーザー層は、艦これに影響を受けた20代以下の若年層というから驚きです。
②刀剣乱舞-ONLINE-
引用:http://www.dmm.com/netgame_s/tohken/
刀剣乱舞は、DMMゲームスとニトロプラスが共同制作したブラウザゲームです。
このゲームは、なんと歴史上の名刀を擬人化したものです。名刀と言えば、正宗、菊一文字など様々ありますが、これらの名刀が、「刀剣男子」と呼ばれる美男子に擬人化されています。
ネット上での反響はすさまじく、特に若い女性から絶大な人気を集めています。
模造刀の購入数が急増したり、刀剣の聖地巡礼をする若い女性が増えたりと、刀剣乱舞は大きな社会現象を巻き起こしています。
③けものフレンズ
引用:http://www.tv-tokyo.co.jp/anime/kemono-friends/
けものフレンズは、けものフレンズプロジェクトによるメディアミックス作品で、現在ではゲーム・漫画・テレビアニメがリリースされています。
このけものフレンズは、野生動物を擬人化した「アニマルガール」の集まる架空の動物園、「ジャパリパーク」で繰り広げられる出来事を描いた作品です。SNSを中心に大きな反響を生み出しました。
このけものフレンズ人気の理由は、「擬人化の緻密さ」にあると考えられています。動物の習性を適切にキャラクターに落とし込んだ事がヒットの要因となりました。
以上3作品は全て大きな反響を生み出しており、擬人化ブームの波が覗えます。
3.広告における擬人化の成功事例紹介
それでは、広告業界ではどのように擬人化が用いられているのでしょうか?冒頭で挙げた「ガム彼」もその一つですが、他の例も見てみましょう。
①私と彼の物干しストーリー(ベルメゾン)
これは、通販大手のベルメゾンが手がけるキャンペーンで、なんと物干し竿を擬人化してしまったものです。
物干し竿を、その特徴によって、「大人っぽくてキレイ系」「頼もしくてワイルド系」など分類し、それぞれに擬人化キャラクターを当てたものです。若い主婦層をターゲットにした広告戦略だと考えられます。確かにこのように物干し竿を擬人化されたら少し洗濯が楽しくなりますよね。
②満月ポン
皆さん、「満月ポン」は知っているでしょうか?満月ポンは、大阪名物の製菓であり、昔からみやげ物の定番として親しまれてきました。しかし、近年「イメージが古臭い」という事で売上が伸び悩んでいました。
そんな中、若い層にも受けるように、と擬人化キャラクターを導入しました。そして生まれたのが「みつきちゃん」です。
引用:http://www.mangetupon.co.jp/
このキャラクターをパッケージに導入したところ、若者や、外国人による購入が大きく増加したそうです。
リブランディングに擬人化を利用した良い成功例だと思います。
③IRroid
引用:https://www.kayac.com/service/client/1181
IRroidは、株式会社QUICKが提供するサービスです。これは、上場企業の最新情報を、二次元の美少女キャラクターが紹介してくれるもので、上場企業の経営状況によって、割り当てられたキャラクターの感情が変化します。
従来堅苦しいものであった企業情報発信を、擬人化を利用する事によってそのイメージを大きく変えたサービスであるとして注目が集まっています。
上の3つはあくまで一例に過ぎず、他にも擬人化広告の成功例を挙げればキリがありませんが、擬人化広告が絶大な効果を発揮しているという事は皆さん分かって頂けたかと思います。
しかし、企業が擬人化を考えるのに一番難しいのはそのキャラクター設定です。そのキャラクター考案の際に企業が利用しているのが、「もえしょくプロジェクト」と呼ばれるサービスです。
引用:http://moeshoku.com/
このサービスは、企業の擬人化案件に対して、全国のイラストレーター/アニメーターが自分の考えた擬人化キャラクターを提案できるといサービスです。キャラクターはコンペ形式で決定され、最終的に企業によって決定されたキャラクターを描いたイラストレーターに懸賞金が支払われる、というものです。
今や、擬人化は大きな利益を生むビジネスモデルとなっているのです!
4.擬人化が広告に及ぼす効果とは?
最後に、擬人化は広告表現にどのような影響を及ぼしているか考えて見ましょう。
①若年層へのターゲティング
ここまで挙げてきた例で分かったかとは思いますが、商品・サービスを擬人化する事で、若年層へのターゲティングが容易になります。
簡単に言うと、擬人化の対象を美男子にすれば若い女性層からの人気獲得が狙え、美少女にすると若い男性層からの人気獲得が狙える、というものです。つまり、擬人化キャラクターの特性を工夫する事によって、注目を集めたいターゲット層に適切にリーチする事が出来るのです。
②コミュニケーションの円滑化
非生物である商品・サービスを擬人化する事によって、ユーザーからの親近感を獲得する事が出来ます。つまり、非生物のものを擬人化する事で、ユーザーとのコミュニケーションを円滑化する事が出来るのです。商品・サービスの魅力を、文字や音声という媒体を用いて伝えるよりも、擬人化されたキャラクター、という媒体を用いて伝える事で、メッセージがユーザーに伝わりやすい、というメリットがあります。
③広告展開の可能性を広げる
擬人化してキャラクターを生み出す事により、様々な広告手法を展開する事が出来ます。
キャラクターをそのまま商品パッケージに使用する事も出来ますし、自社ウェブサイトに専用ページを設けてアクセス数を増やす事も出来ます。また、SNSを利用したブランディングも簡単になるでしょう。PRイベントを開催しても良いと思います。
このように、擬人化されたキャラクターを用いる事で、多方面に広告・PR活動を展開する事が出来るのです!
以上のように、擬人化は広告に大きなメリットを生み出します。ただし、何でもかんでも擬人化すれば良い、という物ではありません。擬人化においてはターゲットと伝えたいメッセージを明確にした上で、キャラクター設定に凝らなければ、陳腐なキャンペーンに終わってしまいます。
5.まとめ
如何でしたでしょうか?擬人化ビジネスがどれだけブームになっているか、そして広告に大きな影響を及ぼしているかが分かったかと思います。
擬人化は、日本のアニメ文化及び、日本古来の風習に深く結び付いているので、今後も広告業界における擬人化の波は持続し続けると思います。
しかし、擬人化広告を考える際には、商品・サービスの伝えたいメッセージを明確にした上でキャラクターを考える必要があります。つまり、擬人化広告であっても、広告を作る際の本質のプロセスは変わらないと言えるでしょう。