広報・PRそして広告に関わる業界は「華やかな仕事で年収も高そうだけど、激務でキツイ、ツラそう」というイメージがありますが、実際に業界で働く人たちはどんな仕事をしているのでしょうか?今回は就職活動で人気の高いPR会社の仕事内容について、実際の広告代理店出身者が詳しく解説します。
ちなみに私は広告代理店業界の中でもトップ2ではありませんでしたが、国内トップ5~7に入る広告代理店に3年前まで営業として勤務し、電通や博報堂などの会社との企画コンペを繰り返していました。働いていた当時を思い出しながら正直に書きますので、就活生の皆さんが広告代理店の営業職について少しでも理解を深めていただけたら嬉しいです。
目次
1.そもそも「PR・広報」とは何か?
広告業界で働いた経験の方であれば分かる人もいるかもしれませんが、新卒採用で就職活動中の学生さんや異業界出身者の方は「PR・広報」という活動がいまいちピンと来ないかもしれません。
ここで言う「PR」はパブリックリレーションズの略で、その定義は難しく、時代の変化に伴って徐々に領域自体も変わり続けています。PRのおおまかな定義は下記のようなものです。
「広報・PR(パブリックリレーションズ)は、組織とそれを取り巻く人々・集団との関係を円滑にし、お互いが信頼できる関係をつくり、維持する考え方であり、技術である。」
どうでしょうか?率直に言って、少しわかりにくいと思います。では次の段落で具体的にPR・広報活動によって担う役割を見ていきましょう。
詳しくはこちらもお読みください。
PR会社とは
2.PR・広報活動の担う役割
かつてはマスメディアに情報を発信すれば、関連する会社や消費者たちに情報が伝わると考えられていた時代もあり、「広報活動とはメディアの記者や編集者と仲良くなって、自社の情報を紙面に載せてもらうことだ」と思われていました。しかし現代ではそれらの活動は「PR・広報」が持つ役割の一部に過ぎません。
PR・広報を大きく分けると、以下4つの役割がありますので、実際に見ていきましょう。
(1)社外情報の収集
企業のどの部門でも社外の情報を知る事は非常に重要なことで、営業やマーケティングといった部署では顧客・消費者の意見や声を知ることが業務上必要不可欠であり、財務部門であれば株主・投資家の声を聴くことが重要な仕事です。
(2)社外情報の社内への伝達
PR会社は、社外から得た情報のうち重要だと思うものについてはクラアイントの経営層などに伝達しなければなりませんが、特に緊急と判断できる情報についてはトップへ迅速に伝えなければなりません。
このようにPR会社がクライアントから信頼されるには社内へ正確に、速やかに伝えなければなりません。
(3)社内情報の収集
PR会社の役割の一つには、社内(PR会社の場合はクライアントの内部)情報の収集も含まれます。
現在、クライアントが企業としてどの方向を目指しているのか、トップは何を考えているのか、各部門は何に取り組んでいるのか、社員たちはどんな活動に力を入れているのかなど、クライアント社内のあらゆる情報に通じていなければなりません。
そうした情報の中にはマスコミに発信すると飛びつく情報もあるかもしれません。PR会社としては、クライアントの広報担当と親密な関係を築き、常にクライアントの重要な情報を耳に入れておくことが望ましいのです。
クライアント各部門から情報が集まるようにするには、広報担当者や管理者に「PR会社に情報を提供しておけば、部にプラスになる広報活動をやってくれる」と思わせること、つまりクライアント社内からも信頼を得ることです。その第一歩は「クライアントへの情報提供」です。情報は黙って待っていても入るものはなく、先方が欲しがっている情報を提供してはじめて、先方もPR会社に情報を提供してくれる「ギブアンドテイク」の姿勢が重要なのです。
(4)社内情報の社外への発信
PR会社にとって、いわゆるパブリシティ活動、マスコミへの情報発信が広報の主要な活動でありましたが、インターネットの発達によってウェブサイトでのステークホルダー(顧客や消費者、投資家など)との直接的なコミュニケーションが可能になったこともあり、若干ウェイトが減ってきた印象もあります。
社外への情報発信で最も重要なことは、「自社目線で発信するのではなく、あくまでも相手のニーズに合わせて発信する」という点です。自分たちの発信したい情報でも、メディア側が興味を持たなければ取り上げてくれません。記者の興味はその背後にいる読者や視聴者たちの興味でもあるので、PR会社は常に世の中の人々の興味・関心がどこにあるのか探っておかなければなりません。
3.PR・広報と広告の違い
この業界で最も聞かれることの一つに、「PR(広報)と広告は何が違うの?」という質問があります。
誤解を恐れずもっとも簡単に答えるならば、「お金を支払うのが広告、お金を支払わないのがPR(広報)」というのが答えです。
よりPRと広告の違いを正確に答えるなら、一般的には商品やサービスの販売促進に直結するような活動は「広告」、広告活動を側面から援護するような活動や、企業自体の理念や活動状況を伝えるもの(すぐに販促につながらないもの)はPR・広報活動、と覚えておくと良いかと思います。
4.PR会社の仕事内容とは
ここまでPR・広報の定義や求められる役割などについて説明してきましたが、PR会社が最も力を発揮できるのは、やはり各種メディアへのアプローチ(メディアリレーション)です。しかし、先ほど述べた通り、現在のPR会社に求められるのはメディアリレーションだけに留まらず、SNSや危機管理対応といった分野にも広がっています。ここではPR会社の仕事内容について詳しく解説していきます。
(1)各メディアへのアプローチ
一般的に、PR会社が最もその役割を求められるのは、メディアとのリレーション、メディアへの発信力です。例えば画期的な新商品が発表される時には、PR会社は各種メディアの記者や編集者たちに対して、「これまでに例が無い画期的な新商品が出たので、ニュース(新聞)でも取り上げてください。この商品に用いられているのは日本初の技術です。」といった連絡をします。
メディアや報道機関の記者・編集者たちは「これは読者(視聴者)も知りたい情報だな」と思った場合には、取材をしてメディアに取り上げてくれることになるのです。
通常の広告と異なるのは、あくまでもメディア側が取材を通して自社の記事内に掲載するため信憑性が高く、さらには広告掲載料金も掛からないということです。ただし、情報が掲載されるかどうかはメディア各社の判断によるため、PR会社はメディアが掲載に値する魅力的な情報であるように伝えなければなりません。
(2)SNS上での拡散・伝達
以前は新聞やテレビが主な情報源でしたが、現在はSNSやYouTubeといったメディアの影響力が強まっており、より情報源が分散しています。
そのためPR会社は、(1)で述べた既存メディアだけでなく、SNSなどへの情報発信もしていかなければなりません。
さらには、SNS上には何万フォロワーといった影響力を持つ人たちが存在します。それらSNS上で影響力を持つ人を「インフルエンサー」と呼び、彼らにも正しく、魅力的に伝えることで、SNS上でもPR・広報活動を行っていきます。
(3)危機管理対応
PR・広報活動の中には、危機管理対応といった分野も含まれています。
先ほど述べたようにSNSが発達したことによって、ネガティブな情報が流れた際には、一般消費者たちの意見がリアルタイムで反映され、炎上するケースも珍しくありません。
企業がこういったネガティブな情報拡散に対する対応をおろそかにすると、これまで築きあげてきた企業イメージやブランド力が一夜にして失墜してしまう可能性すらあります。
こういった危機発生時に対して、PR会社はメディア対応やSNS対応などを指導し、適切に対処することによって、企業イメージやブランドを守る活動も行っています。
5.まとめ
いかがだったでしょうか?
PR会社は日々マスコミとの連携・関係性を深め、クライアントの情報をどのように発信すればメディアに魅力的に映るのか、さらにはネガティブな情報が拡散した際にどのように対応すれば企業イメージやブランドを守れるのか、といった仕事にかかわっているのかが分かります。
クライアント社内の製品やサービス、そして企業自体を深く理解したうで、消費者に対してはどのように見るのか、といった視点を持ち続ける部分では、PR会社と広告代理店は近しいのですが、販売促進に直結するために活動する広告とは似て非なるものです。
PR会社は、長期的な視点も持ち、社会に対して少しでもクライアントの正しい姿や方向性を理解してもらうための活動もしていかなければならない存在です