日本には様々な種類・形態の広告代理店があり、広告業に関する事業所数は、全国で約9200ヶ所(経済産業省、平成27年特定サービス産業実態調査より)も存在しています。その広告代理店の分類方法の一つとして、企業の資本関係による分類が挙げられます。
今回は、広告代理店の資本関係による分類の中でも、「独立系」と呼ばれる企業について紹介したいと思います。
目次
1.独立系広告代理店とは?
独立系企業とは、文字通り独自に会社を設立して経営している企業の事を指します。つまり独立系企業は、資本元としての親会社が存在しないのです。
独立系企業の特徴としては、親会社に縛られない事から、自由に会社の経営を行う事が出来ます。ですが、親会社に支えられた強固な経営基盤を持たないため、経営が不安定である事がデメリットです。
2.独立系にはどのような代理店がある?
では具体的には独立系にはどのような代理店があるのでしょうか?
その代表格は何と言っても電通や博報堂などの広告代理店です。つまり日本を代表するような大手広告代理店は「独立系」の資本分類に入っているのです。
かつて日本の大手・中堅広告会社の多くは、独立系に分類されていました。しかし、近年では外国系資本が広告業界で著しく増加してきています。大手広告代理店にも次々に外資系企業が出資を始めています。実際に、国内第3位のADK(アサツーディ・ケイ)は、外資系代理店WPPから約25%の出資を受けているため「独立系」とは呼べません。
現在、広告代理店の売り上げランキング上位企業の中で、独立系と呼ぶ事が出来るのは、1位の電通、2位の博報堂DYホールディングスのみと言えるでしょう。この2社は世界の中でも競争力のある広告代理店ですので、独立系企業としての経営に成功しています。つまり、現在「独立系」に分類されている広告代理店は、代表される電通・博報堂を除けば、中小の広告代理店がほとんどとなっています。
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3.独立系以外の代理店と違いについて
では「独立系」以外には、どんなタイプの代理店があるのでしょうか?ここでは他の代理店タイプと比較しながら、見ていきましょう。
(1)企業系列系と独立系代理店の違い
企業系列系とは、まさにのとある企業の子会社となっている(資本を受けている)広告代理店です。代表格はJR東日本系列の「JR東日本企画」、東急電鉄系列の「東急エージェンシー」、さらにはNTTグループの「NTTアド」などです。グループ会社に所属しているため「ハウスエージェンシー」とも呼ばれています。
企業系列系代理店は、親会社が多くのグループ会社を持つ大企業であるケースが多く、経営的にも営業案件としても安定しているのが特徴です。
逆に言えば、企業系列系代理店は経営環境的には恵まれているため、ゆったりとした社風の会社も多く、その点では激しい競争環境に置かれていませんでした。そのため、先進的な広告理論や広告技術を生む土壌に乏しかったので、電通や博報堂といった独立系がいまだに日本の広告市場をリードしていると思われます。
<企業系列系代理店の詳細>
企業系列系代理店(ハウスエージェンシー) – 代表企業や総合広告代理店との違い
(2)特定媒体社系と独立系代理店の違い
特定媒体社系代理店は、読売広告社(ヨミコー)や朝日広告社(アサコー)、日本経済社といった主に新聞社系列の広告代理店を指します。
そもそもはこれら新聞会社の広告欄の取り扱いから始まった代理店が多く、新聞や雑誌などのメディア取り扱い・実績に優れていることが特徴です。ただし、現在は読売広告社が博報堂DYパートナーズ傘下となっており、今後もこの資本グループの再編は進んでいくことも予想されます。
現在でこそ新聞・雑誌以外にも多くのメディアを取り扱っている特定媒体社系代理店ですが、独立系代理店はこれまで長年4マスを取り扱ってきた実績と技術があり、媒体社とのリレーションという点においても独立系は「一日以上の長」があるでしょう。
<特定媒体社系代理店の詳細>
特定媒体社系代理店 – 特徴や他の代理店との違い
(3)外資系と独立系代理店の違い
外資系代理店とは、まさに外国資本の代理店を指します。代表例としては、ADKに出資している世界最大のWPPグループ(イギリス)、世界2位のオムニコム・グループ(アメリカ)、世界3位のピュブリシス・グループ(フランス)、世界4位のインターパブリック・グループ(アメリカ)といった会社が挙げられます。
実は独立系代理店の電通は、世界の中では第5位となっており、第6位以下とは大きな差をつけているため、世界5大エージェンシーと呼ばれています。さらには、電通は、グループではなく単体の企業としては世界最大の広告代理店となっています。
<外資系代理店の詳細>
外資系の広告代理店とは-ランキングや特徴、今後の動きなど
4.独立系広告代理店の将来
それではここで独立系広告代理店の将来について考えてみましょう。先ほど前段落で述べた通り、代理店に海外資本が入るケースが増えてきていますが、今後の独立系代理店はどうなってしまうのでしょうか?
結論としては、電通・博報堂は独立系企業として残り続けると思いますが、規模の大きな広告代理店には今にも増して外国資本の増加が見られると考えられます。また、中小の広告代理店に関しても、独自系広告代理店として独自の事業領域でビジネスを続けていくことでしょう。
なぜならば、電通・博報堂以外の大手代理店は、厳しい競争環境を生き抜くためにも、資本や自社では開発不可能な先進的広告技術を外資系代理店に頼るも増えてきているのです。逆に中小規模の広告代理店では、自らの定めた事業ドメインをそれほど大きく広げる必要はないため、独立系として自社の定めたビジネスを続ける事が可能であるからです。
5.まとめ
いかがだったでしょうか?
独立系企業とは、親会社という資本元を持たず、独自に会社を経営している企業の事を指します。広告代理店で、独立系企業に分類される代表企業としては、電通・博報堂DYホールディングスがあります。
現在、外国資本の増加により、独立系に分類される大手広告代理店の数は減少しています。一方で、中小広告代理店の多くは未だ独立系に分類されています。