日本には様々なタイプ・形態の広告代理店があり、広告業に関する事業所数は、全国で約9,200ヶ所(経済産業省、平成27年特定サービス産業実態調査より)存在しています。
その広告代理店の分類方法の一つとして、企業の資本関係による分類が挙げられます。
今回は、広告代理店の資本関係による分類の中でも、「特定媒体社系」に分類される企業について紹介したいと思います!
目次
1.特定媒体社系の代理店とは?
特定媒体社系の広告代理店とは、特定の媒体(メディア)を保有する企業の傘下に位置している企業です。ですので、「特定媒体社系」は、企業系列系に含まれると考える事も出来ます。企業系列系との一番の大きな違いは、資本元である企業が特定の媒体を有しているかどうかです。ちなみに「特定の媒体を保有する企業」と言うと何だか分かりにくいですが、多くの場合は新聞社です。
<企業系列系代理店の詳細>
企業系列系代理店(ハウスエージェンシー) – 代表企業や総合広告代理店との違い
もともと広告とは、媒体(メディア)があって始めて機能するものです。つまり特定の媒体を有する企業が、その傘下に広告代理店を創立して広告運用を行うのは、当然の流れとも言えるでしょう。
これだけでは分かりにくいと思うので、例を挙げると、朝日広告社(朝日新聞系)は特定媒体社系企業の代表格です。朝日広告社は朝日新聞社を主要株主に持つ広告代理店です。朝日新聞社は、自社で「朝日新聞」という媒体を保有しています。従って、朝日広告社は広告を運用する際、「朝日新聞」という影響力のあるメディアを優先的に利用する事が出来ます。
つまり特定媒体社系の代理店の特徴は、影響力のあるメディアに優先的に広告を掲載する事が出来る点です。実際、広告会社のランキングにも、特定媒体社系の企業は数多くランクインしています。
現在では、特定媒体社系の広告代理店の数は減少傾向にあります。しかしながら、地方新聞社系列の広告会社は現在でも地方で力を持っており、地域に根ざした広告、マーケティングを行っています。
<特定媒体系含めた広告代理店ランキング>
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2.特定媒体社系の代理店には、どんな企業がある?
それでは、特定媒体社系の広告代理店には一体どんな企業があるのでしょうか?ここでは、広告会社ランキング上位の企業をいくつか紹介したいと思います!
(1)朝日広告社(ASAKO)
朝日広告社は、朝日新聞系の特定媒体社系広告代理店です。朝日広告社は、広告枠として朝日新聞およびテレビ朝日など影響力のあるメディアを優先的に利用する事が出来ます。なので、2015年の売上構成は、新聞が32.0%、テレビが26.3%となっており(朝日広告社本社サイトより)、特定媒体社系の強みを活かしています。
テレビ、ラジオ領域に関しては2010年から博報堂DYメディアパートナーズと資本提携を行っており、近年売り上げを伸ばしています。
(2)日本経済社
日本経済社は日本経済新聞系の特定媒体社系広告代理店です。日本経済新聞、ラジオNIKKEIなどの媒体を優先的に利用する事が出来ます。ビジネスパーソンをターゲットにしたマーケティングに長けています。また、不動産のプロモーションに強みを持っているのも特徴です。
なお、日本経済社と日本経済広告社(ADEX)は別企業です。創業年の古い日本経済社の方が、日本経済新聞社との資本関係は強くなっています。
3.読売広告社は特定媒体社系?読売新聞との関係は?
広告代理店ランキング上位に読売広告社、という企業があります。この読売広告社は読売新聞社と資本関係を持っているのでしょうか?
結論から言うと、直接的な資本関係はありません。社名には「読売」とありますが、これは読売新聞の広告枠買い付けによるものであり、当初は読売新聞社との間に全く資本関係は無かったそうです。
しかし、現在では、親会社である博報堂DYホールディングスの株主として、日本テレビや、読売新聞社が出資しています。
4.特定媒体社以外の代理店と、その違い
では「特定媒体社」の代理店以外には、どんな種類の代理店があるのでしょうか?ここでは他の代理店タイプと比較しながら、その違いについても見ていきましょう。
(1)独立系と特定媒体社代理店の違い
独立系の代理店は特定の企業に属さない、文字通り独立資本の広告代理店を指します。電通や博報堂といった日本の大手広告代理店は、この独立系広告代理店に分類されます。
それに対して特定媒体社系代理店は、先ほど説明した通り、朝日新聞社や日本経済新聞社といった、主に新聞社系列の広告代理店を指します。
親会社である新聞メディアを活用した広告展開を得意としてきた特定媒体社系代理店に対して、独立系代理店はどの媒体(メディア)でも自由かつ公平に取り扱ってきたため、クライアントが求めるコミュニケーション課題に即した最適なメディアを取り扱えるという傾向があります。
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(2)企業系列系と特定媒体社代理店の違い
企業系列系とは、まさにのとある企業の子会社となっている(資本を受けている)広告代理店です。代表格はJR東日本系列の「JR東日本企画」、東急電鉄系列の「東急エージェンシー」、さらにはNTTグループの「NTTアド」などです。グループ会社に所属しているため「ハウスエージェンシー」とも呼ばれています。
親会社の資本が入っている代理店、という意味では特定媒体社系も企業系列系代理店の分類に入るかもしれません。ただし特定媒体社系と企業系列系代理店の違いは、親会社が媒体社(メディア)か否か、という点にあります。
広告活動は媒体が無いと成り立たないことから、親会社が媒体(メディア)を持っている違いは非常に大きいのですが、親会社の媒体の影響を強く受けてしまうという部分もあります。
<企業系列系代理店の詳細>
企業系列系代理店(ハウスエージェンシー) – 代表企業や総合広告代理店との違い
(3)外資系と特定媒体社代理店の違い
外資系代理店とは、まさに外国資本の代理店を指します。代表例としては、ADKに出資している世界最大のWPPグループ(イギリス)、世界2位のオムニコム・グループ(アメリカ)、世界3位のピュブリシス・グループ(フランス)、世界4位のインターパブリック・グループ(アメリカ)といった会社が挙げられます。
実は独立系代理店の電通は、世界の中では第5位となっており、第6位以下とは大きな差をつけているため、世界5大エージェンシーと呼ばれています。さらには、電通は、グループではなく単体の企業としては世界最大の広告代理店となっています。
外資系の広告代理店、特に4大メガエージェンシーと呼ばれる大手外資代理店は、特定の媒体(メディア)を買収してしまうことすらありますので、その意味では代理店の成り立ちがお互い逆となっていると言えるでしょう。
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外資の広告代理店とは – ランキングや特徴、今後の動きなど
5.まとめ
いかがだったでしょうか?
特定媒体社系の広告代理店とは、企業系列系の中でも、特定の媒体(メディア)を保有している企業の傘下にある広告代理店の事を指し、主に新聞社系列が多いです。
新聞という影響力のある媒体を優先的に広告枠の買い付けが出来るという強みを持っています。特定媒体社系の広告代理店の数は減少しつつありますが、地方ではいまだに地方新聞社系の広告代理店が強い力を持っています。
代表的な特定媒体社系広告代理店は、朝日新聞系の朝日広告社や、日本経済新聞系の日本経済社があげられます。しかし、社名に「読売」を含む読売広告社は、特定媒体社系の企業には分類されません。