私たちが毎日目にするインターネット広告も広告代理店の仕事の一つです。では具体的には広告代理店のネット担当者はどんな仕事なのでしょうか?
結論から言うと、代理店のインターネット担当の仕事は、クライアントの広告要件に沿って、適切なネット媒体と広告枠を選択することです。
ここでは広告代理店における媒体としての「インターネット」の特徴、ネット広告の種類、そしてネットの広告枠なども含めて、インターネット担当(サイバー担当もしくはWeb担当)の仕事内容について詳しく解説していきます。
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1.そもそも広告代理店における媒体(メディア)とは?
広告代理店といえばTVコマーシャルなどを手掛け非常に華やかなイメージがある一方で、(主に営業の仕事を指して)「激務」、「きつい仕事」というイメージが強い方も多くいるかと思います。
当たり前のことですが、広告代理店の仕事は営業だけではありません。広告代理店の大きな役割は、①広告内容の制作、②広告の伝達ということです。そして広告を伝達する重要な手段として媒体(メディア)への掲載があります。
メディアには、「マスメディア(4マス)」と言われる新聞、テレビ、雑誌、ラジオに加えて、OOH(交通・屋外広告)や最近急拡大しているインターネット広告などがあります。今回は広告代理店における「インターネット」というメディアに焦点を当て、ネット広告の特徴などを含めて仕事内容を解説していきます。
2.代理店にとって「インターネット」ってどんなメディア?
ご存じの通り、インターネットは媒体としても広告としても、拡大・成長しつづけています。電通が発表している「2016年 日本の広告費」では広告媒体費として初めて1兆円を超え、昨年度比で40%も広告費が増加している媒体(メディア)です。では、実際のインターネット広告はどのような種類や料金なのでしょうか?その疑問に答えるためにも、そもそも媒体としての「インターネット」について詳しく解説していきます。
メディアとしてのインターネットの特徴
今や目にしない日はない、といっても過言ではないインターネットですが、媒体としてのインターネットの特徴は何でしょうか?
インターネット媒体の最大の特徴は、効果測定が簡単である、という点です。さらに広告配信対象者を絞ることができること、地域を絞ることが可能であること、出稿後の修正が比較的容易であること、若年層(F1・M1)に強いなどの特徴もあります。
ただし、インターネットにあまり馴染みのない高齢者や壮年者向けの広告展開には不向きです。
メディアとしてのインターネットは毎年拡大・成長をし続けており、広告媒体として毎年10%以上の伸びをみせています。2016年にはインターネット媒体費のみで、初の1兆円超えを記録しました。
ネット広告のターニングポイントはスマートフォンの普及で、これまでパソコンを起動している時間だけがインターネットにアクセスする時間でしたが、スマホの普及によりいつでもどこでもネットに繫がるようになりました。
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3.インターネット広告の種類
インターネット広告には、大きく分けて純広告(バナー)型と運用型に分けられます。
(1)純広告(バナー)型
純広告の原点は紙媒体である新聞・雑誌ですので、インターネットにおける純広告の意味もほぼ同じです。それは広告主が広告枠を買い取り、その枠に広告を掲載する方法です。
純広告に含まれますが、ネットにおけるタイアップ広告の場合は、ネットメディアを運営する編集部側で広告主の記事が作られます。
(2)運用型広告
上記で説明してきた純広告型と対照的なのが、ネット特有の運用型広告です。運用型広告はインターネット広告の中でも特に急成長著しい分野で、これはスポンサーが独自で広告を運用するため、このような名前で呼ばれています。
①リスティング広告
リスティング広告とは、検索連動型広告のことで、GoogleやYahooで検索した際の検索結果画面に表示される広告のことです。あまり気づいていない人もいるかもしれませんが、Googleなどの検索結果に上部に表示されているのは広告サイトです。
実は現時点でもGoogleにおける売上の約90%は、このリスティング広告と後述するディスプレイ広告などで占められています。
<リスティング広告詳細>
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②ディスプレイ広告
ディスプレイ広告は、GoogleやYahooの関連サイトにバナー・画像を表示する広告のことです。例えば、Yahooニュースを読んでいると広告が表示させていることに気づくことがあるかもしれませんが、これはYahooのディスプレイ広告の一部です。
実はGoogleのディスプレイ広告も様々なサイトの広告枠に表示されており、私たちが普段見ている色々なサイトでディスプレイ広告と触れているのです。
<ディスプレイ広告詳細>
【広告業界用語】 ディスプレイ広告とは?
③SNS広告
SNS広告は、instagramやFacebookなどのSNSサービスに表示される広告です。私たちが普段使っているこれらのSNSのタイムラインなどに表示されている広告は、先ほど説明した通り運用型広告と言われる広告の1種で、広告主側が独自で広告を運用しているものです。
④動画広告
日本国内には動画サービスは、大きく分けてYouTubeとニコニコ動画の2つがありますが、そのうちYouTube広告は運用型広告に分類され、Googleのリスティング広告、ディスプレイ広告と同じ運用方式で広告を出稿することができます。
4.インターネット広告の料金
インターネット広告は純広告(バナー)型と運用型で大きく異なっています。
(1)純広告型の料金
インターネットにおける純広告の料金も、新聞や雑誌と同様に、メディア運営会社によって定められています。広告料金が広告枠の位置や露出面によって異なるのは、新聞・雑誌のような紙媒体と同じですが、違う点はPVや表示回数によっても料金が変わってくることです。
なぜならインターネットの場合、何回表示されて、何回クリックされたのか、という事が明確に分かります。この点が紙媒体と大きく異なるポイントです。そのため、純広告の広告掲載枠は、掲載期間、掲載位置、さらにはPV・表示回数によって料金が変動するのです。
例えば、Yahooの一番目立つ位置(パソコンだと右上、スマホだと一番上)に表示されている「ブランドパネル」は1週間単位で数千万~数億のクリック数が見込めます。そのため最低限のサイズでも数百万の掲載料金がかかります。
(2)運用型広告の料金
インターネットの運用型広告は近年急成長しており、今後もますます伸びていくことが予想されます。
ではここで運用型広告の料金体系について詳しく説明します。
先ほど、運用型広告は広告主(スポンサー)自身が運用するタイプの広告だと述べましたが、具体的にはどのようなものなのでしょうか。
ネットの運用型広告が、4マスも含めて大きく異なる点はこの「自ら広告を運用する」という部分です。通常の広告の場合は、媒体社側の担当者とやり取りしながら、広告出稿についてやり取りをしながら、広告を出稿します。しかし運用型広告は、広告主が広告を出したいと思った際は、ネット上から申し込みをして広告管理画面で広告を運用しなければなりません。
運用型の広告の場合、広告料金は初めから定められていません。というのも、運用型広告の大きな特徴は、1クリックあたりのクリック課金だからです。さらには1クリックあたりの金額はオークション方式となっているため、A社よりB社が100円高く入札していた場合には、A社の広告が優先的に表示されることになります。
ただし、広告運用は株やFXの運用のように少々複雑な面がありますので、広告代理店で実際に運用作業まで行うことは殆どなく、ネット広告運用会社に代行してもらうことが一般的です。
5.ネット広告担当(サイバー担当)の仕事内容
ではここからは、実際の代理店におけるインターネット広告担当の仕事について解説していきます。ちなみに広告代理店の媒体局でネット広告は「サイバー(デジタル)領域」と認識されており、「サイバー担当」と呼ばれることが多いです。
先ほどご説明した通り、ネット広告には①純広告型と②運用型がありますので、それぞれの仕事の進め方についてご紹介します。
(1)純広告型の場合
純広告型の場合には、一般的な4マスと同じように、媒体社に申し入れをしたうえで入稿作業や確認作業をおこなっていきます。つまり広告出稿したい広告枠の入稿規定に従って、広告素材の入稿をし、広告審査を経て、広告掲載となります。
(2)運用型広告の場合
率直に言って、運用型広告は広告主側、つまりクライアントの広告出稿を請け負う立場である広告代理店が本来は運用すべきです。しかし運用型広告は媒体ごとに詳細な媒体知識や運用ノウハウがなければ、想定通りの運用結果を出すことができない可能性が高いため、ネット広告運用経験に長けた協力会社に依頼します。
広告代理店のネット広告担当としては、想定するPVやクリック数、さらにはCV数(アクション数)などの運用方針をネット広告運用会社に伝え、途中経過も含めて管理していくことが大きな仕事になります。
この仕事は一見簡単そうに見えますが、ネット広告担当もそれなりの媒体運用知識を持っていないと、管理し切れずクライアントからの信用を失ってしまうことに繋がります。
6.インターネット広告の将来
インターネット広告は年々成長しており、2016年は初めて広告媒体費として1兆円を超えました。広告業界ではテレビ、新聞、雑誌、ラジオを主要媒体として「4マス」と呼んでいますが、広告費だけで見てもインターネットは新聞・雑誌・ラジオの3媒体を合計した金額よりも大きく、それだけ影響力が大きくなっていることが分かります。
さらに、近い将来IOT(Internet of Things)により、テレビがインターネットに接続された生活が普通になることで、テレビとインターネットの境界線はますます曖昧になり、テレビとネットはほぼ同義の存在にまでなっていくことも予想されます。
実際に、Googleの関連会社であるYouTubeは若年層を中心にテレビよりも影響力のあるメディアになりつつあり、さらに国内に目を向けるとサイバーエージェント等がネットによるテレビ配信サービス「abemaTV」などの取り組みを始めています。
これらの傾向は決してテレビという媒体が否定される訳ではなく、ラジオにおける「radiko」がそうであったように、ネットと繋がることにより、テレビの在り方や影響力が少しずつ変わっていき、さらに媒体自体が発展していく可能性を秘めているのだと考えられます。
7.まとめ
いかがだったでしょうか?
広告代理店にとってインターネットという媒体は、若年層へのリーチなどには特に有効で、近年のプロモーション・キャンペーンでは欠かすことのできない媒体となっていることがお分かりいただけたと思います。
さらにはネット広告には、①純広告型と②運用型という2種類があり、特に成長著しい②運用型広告は1クリックごとのオークション課金形式で、一般的にはネット広告運用会社に実作業を依頼することが一般的となっています。
2016年には前年比140%の成長で、媒体費単体で初の1兆円を超え、媒体としての存在感は今やテレビと肩を並べるレベルまでとなったネット広告は、今後はテレビをはじめとした他媒体を取り込みながら今後も成長し続けると思います。