【企業分析】財務諸表から電通を読み解く!電通の経営は安全?

広告業界といえば電通、博報堂やアサツー・ディ・ケイ(ADK)などが有名ですね。
中でも電通は日本の広告業界で断トツのシェアを誇り、世界の売上ランキングにおいてもグループ5位という成績をあげています。電通はどのようにしてこの業績を獲得することができたのでしょうか。

今回は財務諸表という客観的な財務データから電通の経営状態を読み取っていきます!
経営の特徴、広告業界の特徴から今後の電通の今後の経営方針まで解析していきます。

財務諸表は企業分析を行う上でとても参考になる資料です。本記事では財務諸表の見方も紹介するので就活を行う際の企業研究などにも参考にしてみてください!

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1.財務諸表とは


財務諸表は会社の一年間での会社の資産の状態と業績を表すものです。上場企業は毎年の提出が義務付けられています。
一言でいうと、財務諸表は企業の「成績表」のようなもので、その年一年間の営業活動を数値で表したようなものです。

財務諸表は、
①資産の内訳を表す貸借対照表
②一年間の売上と利益を表す損益計算書
③そのうちの現金の動きを表すキャッシュ・フロー計算書
の大きく3つに分かれています。

2.貸借対照表(バランスシート:BS)

(1)賃借対照表とは?

賃貸対照表では資産の構成要素、負債、純資産の状況がわかります。

資産には大きく分けて、資産、負債、純資産の3つがあります。
資産は現金、有価証券、建物、ソフトなどの会社の財産が含まれます。
負債は文字どおり、銀行から借りたお金や社債を発行して得たお金などが含まれます。
純資産は、株式を発行することによって得たお金です。負債とは異なり、返済の義務がないことが大きな違いです。

(2)電通の賃借対照表は?

電通の貸借対照表において特徴的なものは、売掛金と買掛金の金額が非常に大きいことです。現金2,400億円に対して売掛金は1兆2,700億円もあります。売掛金とは商品を売った際に相手が現金ではなく何ヶ月後かに払う、という取引形式の一つです。買掛金はその逆です。
つまり、売掛金と買掛金が多いということは電通のビジネスにおいては現金による取引がかなり少ないということです。

例えば大手醤油メーカー、キッコーマンの貸借対照表においては流動資産に占める売掛金の割合は10%程度です。対して電通は、80%近くを売掛金が占めています。

業界によっては財務状況が大きく異なることがあります。その他の指標においても業種によって基準値が異なってくるので分析する際には注意が必要です。

3.損益計算書(PL)

(1)損益計算書とは?


損益計算書では1年間で会社が稼いだ売上のうち、人件費などのコストを引いていくらの利益が残るのかを表示しています。

簡単に売上高から当期純利益を算出する流れを説明します。

まず、売上高から原価を引いて売上総利益を出します。
次に間接的にかかったコストを引いて営業利益
営業外損益(株など金融商品での利益など)を足し引きして経常利益
特別損益(災害などの特別に生じた損益)を足し引きして税引き前当期純利益を出します。
最後に税金を引いて当期純利益を出します。

会社の業績を比較するには上から3番目の「営業利益」を、投資家は最後の「当期純利益」をみて比較をします。

営業利益は売上高からコストを引いた額なので、経営上の純粋な利益が現れます。さらに、経営者のコスト管理などの手腕も問われるため、業績上大きな意味を持つ指標になってきます。

一方で株主や投資家たちは、株主への配当の源泉となる当期純利益を重視します。

(2)電通の損益計算書は?

電通は2016年度、電通グループ全体で4兆4,942億円、電通単体で1兆6,000億円の売上高を計上しています。
連結財務諸表では国際会計基準を用いており表示方法が日本基準のものと少し異なるため、ここでは日本基準を用いている電通単体の損益計算書を見ていきます。

売上高は1兆6000億円、
そこから売上原価を引いて売上総利益2348億円(14.68%)
営業利益が647億円(4.04%)
経常利益が971億円(6.07%)
当期純利益が919億円(5.74%)
となっています。

営業利益に対して経常利益や当期純利益が大きくなっていますが、これは営業外収益や資産の売却による特別損益によって当期純利益の金額が上昇しています。
営業外収益では資産を運用して投資を行ったり、貸付を行うことで配当金や利息を得ています。また、電通は2015年度に「投資有価証券」などの売却を行ったことで特別損益が増加したことも、当期純利益を押し上げた要因の一つです。

電通の損益計算書の特徴は単体でも1兆6,000億円の売上高を出し、営業利益率も4%(5%程度が基準)と堅実かつ効率的な経営ができていると言えます。売上高は毎年順調に伸び続け、連結ベースではもうすぐ売上高5兆円を超える勢いです。

4.安全性


安全性分析では会社は安定した経営をしているか、倒産する可能性はあるのかといった点をいくつかの観点から分析していきます。

(1)流動比率

この指標では今後一年以内に現金化する資産である流動資産と、今後一年以内に返済しなければいけない負債の流動負債の比率を見ます。

つまり一年以内に入ってくるお金と、支払わなければならないお金を比較した数値(流動資産÷流動負債)です。この比率は一般的に120%あれば安全だと言われています。

電通は2016年度101%、過去5年間において平均102%と基準値を下回っていますが、電通ほど大きな会社であれば信用も高いため、問題ないと言えるでしょう。

(2)当座比率

この指標も先ほどの流動比率とほぼ同じなのですが、こちらは分子を現在手元にある現金の当座資産で数値を出します。流動資産の中でもよりすぐ現金化できる数値で計算するので、返済能力をより厳しい基準で審査します。こちらは90%ほどあれば安全と言われています。

電通は大体100%台をキープしているため、十分安全と言えます。

(3)自己資本比率

自己資本比率とは、会社の資金を返済が必要な負債でまかなっているのか、返済不要の株式などでまかなっているのかを見る指標です。簡単にいうと借金が多いのか少ないかを見るための指標です。

計算式は自己資本÷総資本で、自己資本が総資本のうちの何割を占めているのかを算出します。電通は総資本に占める自己資本の割合は3割程度となっています。つまり残りの7割は借金をしてまかなっていることになります。

しかし電通の場合は負債の中の借金よりも買掛金が負債の大部分を占めています。買掛金はものなどを買った相手に対して後ほど代金を支払わなければいけない義務です。広告の場合はテレビなどの広告枠を買う際、数千万円という膨大な金額がかかるため、すぐに現金で払うことは難しくなります。そのため買掛金が増え、負債が多くなっています。

5.キャッシュ・フロー計算書(CF)

(1)キャッシュ・フロー計算書とは?

キャッシュ・フロー計算書では会社のお金の動きを知ることができます。キャッシュ・フロー計算書には営業活動、財務活動、投資活動の3種類があります。お金が入ってきた時にはプラス、出て行った時にはマイナスの結果となります。

営業活動によるキャッシュ・フローは本業によって得たお金を表します。財務活動によるキャッシュ・フローは借金を返済するとお金が出て行くのでマイナスになることが一般的です。

キャッシュ・フローがプラスになった際には企業は返済する以上に新しく借金をしたことになります。投資活動によるキャッシュ・フローでは株などへの投資の他にも設備などへの投資もここに含まれます。

従って、投資活動においてもマイナスを計上することが通常です。ここがプラスになった際には資産を売ったりして資金を作っているということになります。

(2)電通のキャッシュフロー計算書は?

電通のキャッシュ・フロー計算書では2013年、2014年に財務活動によるキャッシュ・フローで2年連続プラスの数値を計上しています。電通は2013年にイギリスのイージスグループの買収を4000億円で完了しています。
買収のために多大な費用が生じたために、2年連続で財務活動によるキャッシュ・フローがプラスを計上したと考えられます。
詳しくは以下のグラフを用いて見ていきます。

キャッシュ・フロー計算書の内容をグラフに表すとこのようになります。

灰色の線が財務キャッシュ・フローを表しています。平成25年度に大きくプラスになっています。この変化が大規模のM&Aを行ったことを表しています。返済以上に新しく負債を抱えた際に財務キャッシュ・フローがプラスになるため、ここで大きな負債をしたことがわかります。同時に投資活動によるキャッシュ・フローも大きくマイナスになっていることも、大きな投資を行ったことを表し、判断基準となります。

6.財務諸表まとめ


いかがでしたでしょうか。
財務諸表を見ると企業の財政状況がわかりますね。業界によって様々な違いがあるので注意が必要ですが、その企業がどのくらい稼ぎ、安全な企業であるのかは財務諸表を見れば読み取ることができます。

電通は企業規模が非常に大きく扱ってる金額も非常に大きかったですね。
経営効率を表す総資本回転率においても電通は毎年1.5回転を記録し、総資本の1.5倍の売上を獲得しています。従って電通は効率的な経営ができていると言えます。

安全性においても大方数値に問題はなく、安全な会社であることが言えます。負債の比率が純資産に占める割合より少し高いものの、電通は約2兆円の負債があるものの、毎年5兆円も稼いでいるため、問題ないと言えます。

7.今後の経営方針


電通は日本の市場が飽和してきていることを見越して、他の広告代理店よりも早く海外進出を始めました。これまでに欧州、アジアを中心に買収を進め、着実に拠点の確立を進めています。最近ではイギリスの広告会社イージスを買収し話題となりました。

電通の海外売上高は年々伸び、昨年では全体の54%を占め、海外でのビジネスでの売上が国内を上回っています。

電通は経営計画について次の目標を掲げています。

① 競争基盤の強化・拡大による海外事業の成長加速
② 国内労働環境の改革と持続的成長へのロードマップの整備
③ 先進的テクノロジーとデータを活用した顧客の企業的価値向上への貢献
④ 社会的責任と各ステークホルダーの利益と期待に配慮した経営

経営基盤となる広告においては海外事業の基盤強化の他にもデジタル領域の強化を掲げています。この二つにおいては今までにも電通はM&Aを積極的に行い、力を入れていました。

労働環境においても最近電通での事件が大規模に報道されたこともあり、労働環境の改善には積極的に取り組んでいます。
労働環境の整備に関しては機械化による業務の削減や、正社員の増加などを挙げていたため、今後コストの増大が見込まれます。従って、売上高は増えつつも営業利益は減少する可能性があります。コストに関しては、いかにマネジメントをして利益を増やすかが経営者の手腕にかかっているため、今後も注目されるでしょう。

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ABOUTこの記事をかいた人

くんへい

広告代理店でインターン中。サッカーとトレーニングをこよなく愛しています。好きなサッカーチームはFCバルセロナ、好きなトレーニングメニューはウェイティッドディップスチェストバージョン。