広告代理店出身者が語る仕事内容。ホントにきつい?

私は、有名な大手2社ではありませんが、国内上位5社ぐらいに入る広告代理店で営業(アカウントエグゼクティブ)として3年前まで働いていました。その経験から、あまり世の中では語られていない広告代理店の具体的な仕事内容や実際の過酷さについて正直に説明していこうと思います。

結論から言えば、広告代理店の仕事はいわゆるプロジェクトチームで行われ、営業はもとよりマーケティングや制作、媒体などいずれの職種でもチームプレーやコミュニケーション能力が求められます。本記事では、具体的な仕事内容などについてかなり踏み込んで解説していきますので、広告代理店内定を目指す就職活動生にとって参考になれば嬉しいです。

1.広告代理店の仕事内容とは?


広告代理店の仕事は大きく分けて、営業、制作、マーケティング、媒体といった分類ができます。
まず始めに知っておかなければならないのは、広告代理店の仕事分業の仕組みです。営業や制作、マーケティング、媒体はそれぞれの部門(局)に分かれていますが、案件(プロジェクト)ごとに担当者が割り振られ、チームとして一緒に企画提案し、広告を実施します。

(1)広告代理店の営業(アカウントエグゼクティブ)の仕事内容は?


広告代理店における営業の仕事は、主に①クライアントの情報管理、②(企画提案・実施の)スケジュールの管理、③予算の管理と言われています。これは当時、筆者が広告代理店のアカウントエグゼクティブとして働いていたときに営業部長から実際に教えられたことです。

①企画立案~提案までの段階(営業の仕事)


ITや人材など他業界では、営業が自ら企画資料を作成することもあるようですが、逆に広告代理店ではその様なことは稀です。なぜならば提案する広告キャンペーンやプロモーションは営業だけで完結することが難しく、制作や媒体部門の協力なくしては成り立たない為です。

したがって企画を立案する際もプロジェクトチームで各部門の担当者と会議を繰り返しおこない、さらに会議で決まった企画内容に基づき各部門の担当者が企画内容を資料として作成し、最後に営業が提案するフォーマットにまとめていくことが一般的な提案までの流れです。

そして企画資料がまとまったら、営業が主体となってクライアント(お客さん)へ提案にいきます。提案の場合、広告代理店1社だけでなく他の代理店との競争になることも多く、これが「コンペ(コンペティション:競争)」と呼ばれているものです。各代理店がクライアントへ企画の提案をおこない、最も評価の高かった代理店の企画が採用され、実際の広告として世に出ることになります。

②受注~広告の実施に向けた段階(営業の仕事)


コンペを無事に勝ち抜き、広告の企画を受注したあとも営業は気が抜けません。営業は広告の実施に向けて、具体的な企画アイデアを各部門の担当者と詰めながら、並行してクライアントと予算やスケジュールについて調整していきます。

このように広告代理店の営業は、クライアントや自社部門の担当者との調整役が求められ、さらにはクライアントが求める目標を実現し継続して信頼を勝ち取っていく必要もあるのです。

これまで見てきた通り、広告代理店は社内・社外を問わず多くの人と関わり、「うまくやっていく」ことが求められます。つまり広告代理店の営業として求められる能力の一つは「コミュニケーション能力」であると言えます。

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(2)広告代理店のマーケティング部門の仕事内容は?


広告代理店における「マーケティング」の仕事といえば、調査や企画分析のことを指すことが多いです。

そして広告代理店においてマーケティング部門は、「頭脳」といえる存在です。なぜならば、クライアントに提案する企画の根拠を導き出し、さらには実施した広告の結果を分析して次に繋げる役割を担っているからです。では実際にマーケティング部門の具体的な仕事や役割を解説します。

先ほど「1.広告代理店の仕事内容とは?」でも述べた通り、各部門の仕事は独立している訳ではなく、クライアントのプロジェクトごとに各部門の担当者がアサインされます。では割り振られたプロジェクトでの役割とは何でしょうか?

①企画立案~提案までの段階(マーケの仕事)


マーケティングの担当者がもっとも力を発揮するのは企画立案の段階です。顧客(クライアント)から広告・キャンペーンを実施する際の目標や条件が伝えられた後、マーケティングの担当者はデータや数値に基づいた企画の骨子を作ります。

「なぜこの企画を提案するのか」、「どのように広告の目標を実現するのか」という答えを導き出すために、過去の資料や業界資料など数値的な根拠から論理的に企画骨子を立案します。

簡単な例えで言えば、売上を前年比20%増加したいと考えている栄養ドリンクメーカーがあります。そのためには30代女性の売上を50%増加させる必要があることが調査や資料によって判明しました。さらにその為には現在30代女性が仕事で疲れた時に飲みたいと思う栄養ドリンクの想起率を60%に、リピート購入率を25%まで高める必要がある、といった調査や分析をマーケティング部門が行うのです。
この結果を受けて企画や制作、媒体局が具体的なプランを練っていくことになります。

これまでの広告業界、広告代理店では「認知」や「導線」の部分が重視とされてきた風潮がありましたが、現在ではインターネットの普及、そして合理的な考えを重視する顧客が増えてきたことにより、広告における目標や広告の成果がより求められる時代となっています。そのためマーケティングにおける目標設定や目標へのアプローチ、さらには実際の効果分析の部分は企画の根幹を成す非常に重要な部分となっています。

②広告の実施後(マーケの仕事)


広告の実施後は、マーケティング部門が今回のプロモーションやキャンペーンによって目標を達成できたのか調査・分析していくことになります。目標が「売上〇〇増」といったシンプルなものから、先ほどの例のように目標とするターゲットの態度変容(認知や想起が変化すること)まで、様々な目標に対した具体的な成果を数値で集計・分析することになります。

この結果次第で、今回の広告・プロモーションが良かったのか、イマイチだったのかクライアントに判断されることもあるので、とても重要な役割だといえるでしょう。

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(3)広告代理店の制作(クリエイティブ)部門の仕事内容は?


世の中には「デザイナー」、「コピーライター」、「イラストレーター」などの仕事が存在しますが、広告代理店の制作部門も同じ仕事内容なのでしょうか?広告代理店における制作(クリエイティブ)部門の仕事とは何でしょうか?ここでは具体的な例も出したうえで解説していきます。

企画立案~提案までの段階(制作の仕事)


先ほど説明した営業やマーケティングと同様で、案件(プロジェクト)ごとに担当者が割り振られて仕事を進めていくのが基本的な流れです。マーケティング部門が作った企画の骨子に従って、媒体局や制作局が具体的な広告のアイデアを形にして提案することになります。

例えば、マーケティング部門がシニアの購入者1,000名増やすことを広告のKPI(目標達成のための重要指標)とした場合、媒体局や制作局の担当者はシニアに対して効果的な広告が見込めるメディア(例えばBSテレビやラジオ等)とそれに合わせた表現方法を考えます。

ただし広告代理店、さらに大手になればなるほど、具体的な制作(クリエイティブ)はグループ会社や関連会社や外注する機会が多くなります。例えば博報堂における「博報堂アイスタジオ」、電通における「電通テック」などはそれにあたります。

また、提案する企画内容によっては自社のグループ会社・関連会社では実現できない場合もあり、その様な場合には自社グループ以外の会社に発注して仕事を進めていくことになります。

誤解を恐れずに言えば、広告代理店における制作部門は、どのような表現方法を用いて、どんなクリエイティブを作ればターゲットとする消費者にメッセージを伝えられるか、ということを突き詰める仕事と言えます。

もちろん手を動かす作業的な仕事もありますが、関連会社やグループ会社さらには外注した協力会社と一緒になって具体的なクリエイティブを制作していくことになります。

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(4)広告代理店の媒体担当の仕事とは?


ここで言う「媒体」というのは、いわゆる広告メディアのことを指します。広告メディアとは、①TV、➁新聞・雑誌、③ラジオ、④インターネット(Web)に分けられます。特にインターネット(Web)は近年急成長しており、電通が発表した日本国内での媒体としてのインターネットの広告費は2015年に初めて1兆円を超えました。

【参考】2015年 日本の広告費

媒体の担当者は、営業やマーケティング、企画部門が立案した広告プランに従って、TV、新聞・雑誌、ラジオ、インターネット等の広告メディアを組み合わせて、ターゲットとする消費者にどのようにリーチさせるか媒体プランを練っていきます。

例えば、若者向けの広告プランであれば、どのような企画であってもインターネットを組み合わせるメディアプランが必要でしょう。逆にシニア層向けの広告プランであれば、新聞・雑誌やラジオ、さらにはBS・CSなどへのメディア出稿が有効だと言えるでしょう。このようにターゲットとなる消費者や広告プランによって、組み立てるメディアプランは全く変わってくるのです。

媒体担当者は、メディア側の担当者ともやり取りしてパイプを持ちつつ、常にメディアの最新情報を仕入れておく必要があります。もっとも媒体局内部では、TV、新聞・雑誌、ラジオ、インターネット、とメディアごとに担当が分かれているケースが多いので、たとえばTVも担当しながらインターネットも取り扱うことは稀です。

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2.広告代理店の仕事はきつい?


最近こそ「広告代理店が激務」、「代理店の仕事はきつい」、「ブラック企業(業界)」というイメージもつくようになりましたが、これまで広告代理店は花形の仕事イメージが強く、多くの人にとって憧れの仕事に映ることも多かったことは事実です。ここでは広告代理店のどのような仕事がきつく、なぜキツイのか具体的に解説していきます。

広告代理店の仕事がキツイとすれば、それは主に営業担当者を見て言われることが多いと思います。実際、広告代理店に勤務していた筆者も若手時代には徹夜することが多く、特にプレゼン前の1週間はたとえ何時であっても帰宅することができればまだ良い方だと思っていました。ではどんな仕事でそんなに忙しいのでしょうか?

上述した通り、広告代理店における営業の仕事は、①クライアントの情報管理、②予算の管理、③スケジュールの管理です。さらに企画提案やプロモーション実施において営業は一人で行うことは不可能であるため、様々な業務を他部門に依頼しつつ、それをまとめて仕上げていく調整役が主な仕事です。
つまり仕事の構造上、仕事の自己完結ができず、仕事の上がり待ちである状態が続くところに「激務」と言われる原因があります。
しかし仕事のできる代理店の営業マン・ウーマンには早めに帰る人も大勢います。では多忙を極め「毎日辛い」と口にする営業と、早く帰る日もある営業では何が違うのでしょうか。それはコミュニケーションや進行管理の差にあります。

できる営業は、他部門やクライアントとの調整にバッファ(余裕)をもって行い、さらには根回しや日ごろからのコミュニケーションにより、進行を上手に管理しています。ただし新人の営業マンの場合にはそもそもコミュニケーション能力というよりも、他部門やクライアントとの信頼関係が希薄で、業務にも慣れていないため激務に陥るケースがほとんどですが、これは誰しもが通る道だと言えます。

3.広告代理店の仕事の楽しいところ、やりがいって?


では逆に広告代理店の楽しさや、やりがいは何でしょうか?
もちろん人それぞれだとは思いますが、筆者の場合には①広告の成果が出ること、②お客さんが喜んでくれること、の2つが大きな仕事のやりがいでした。

もちろん新人のうちは自分の関わった広告が世の中に出ること自体が楽しいのですが、その刺激になれてくると今度は自分の作った広告でお客さんが喜んでくれることが大きなやりがいになりました。

広告・プロモーションは売上に直結する非常に重要な部分であり、広告次第で商品のブランド価値やイメージが大きく変わってしまうものです。つまり経営視点すら求められるとてもやりがいのある仕事でもありますので、広告業界を志す方は顧客とともに答えを探して求める姿勢を常に忘れないでいただけると嬉しいです。

4.広告代理店勤務者たちの体験談


ではここで実際の広告代理店勤務者たちに聞いた体験談、そして仕事上で辛かったエピソードをご紹介しましょう。

(1)大手代理店出身者のT氏


A氏は大手代理店のマーケティング職を長年勤めてきた方で、主にクライアントのプロモーション課題のリサーチ・調査そして分析を担当してきました。現在は独立して、様々な企業の調査やコンサルティングを手掛けています。
「コンペ案件と通常業務が重なったときが忙しくて大変だった」
「企業や広告を調査や分析といった視点から見るという仕事は、現在にも繋がっている大きな財産」

(2)大手代理店勤務のS氏


S氏は現在でも大手代理店で営業課長を務める人物です。他業界から転職して営業という仕事に就きましたが、非常に優秀なひとで周囲からの評価も高いです。
「もう少し若いころはコンペで徹夜することも珍しくなかった」
「以前プレゼンの際に、実際の提案する看板を背負っていったのは良い思い出」
「仕事はすごく面白くて充実しているが、家族との時間を犠牲にする場合もある」

(3)中堅代理店出身者のO氏


中堅代理店で営業職だったO氏は、現在ほかの企業に転職して取締役になっている人です。
「若いころは営業として死ぬほど働いた」
「基本的には体育会系なので、体育会系の文化が合わない人にはきつい環境かもしれない」
「営業として、社会人としての基礎を叩き込まれたのでどこでも通用すると思う」

3名の体験談ではありましたが、どのように感じたでしょうか?
苦労したエピソードの共通点は、やはり「忙しい」という点です。しかしそれと同時に「役に立った」、「仕事が面白い」という意見も共通しています。つまり、広告代理店での仕事は若いころ大変かもしれないが、そのぶん充実しており、人生にとってプラスである、ということが事実ではないでしょうか。

5.広告代理店の仕事に英語は必要?


結論から言えば、英語はあまり必要ではありません。
もっと正確に言うのであれば、国内の広告代理店であれば英語力が必要となる機会はあまりないでしょう。もちろん英語力があれば海外でのロケや取材があったときに重宝されるでしょうが、営業として求められる必須能力では決してありません。実際、私が勤めていた広告代理店でも英語に堪能だったのはごく一部で、営業含めてほとんどのスタッフに英語を話せる人は居ませんでした(笑)

ただし、WPPグループ、オムニコムグループ、マッキャン、オグルビーなど外資系広告代理店を目指す方は英語力はそれなりに必要となります。なぜなら外資系広告代理店の抱えるクラアイント(顧客)には当然外資系企業が含まれており、プロモーション担当、広報担当者が外国人である場合もあるからです。

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6.女性にとって代理店の仕事はきつい?


ここまで特に性別に関しては明確にせずに、広告代理店の仕事内容、きつさについて論じてきましたが、女性にとって代理店の仕事はどうなのでしょうか?最近では電通で起きた事件で過労死した社員は女性でしたし、女性には不向きな業界なのか詳しく解説していきます。

結論から言えば、広告業界には未だに体育会系の社風・文化は残るものの、間違いなく女性にも働きやすい職場環境になりつつある、という事です。というのも、私が働いていた広告代理店の営業部署でも約1/3は女性でした。さらには、以前付き合いのあったテレビ局や媒体社のスタッフにも女性が如実に増えてきています。

これまで広告業界、テレビ局、新聞・雑誌業界は、非常に縦社会の強い体育会文化が蔓延る業界でした。新入社員は付き人のように上司に接し、あまり口では教えてくれない先輩の仕事術を見よう見まねで吸収していくというのが当たり前でした。しかし、近年では女性の上司も増え、女性も働きやすい職場になりつつあります。

実際、私のもとにOB面接でやってきたでも女子学生の方も、電通や博報堂などの広告代理店に採用が決まった人が何人もいましたし、さらに広告賞を受賞した人もいました。ですので今後も女性にとって徐々に働きやすい環境になっていくものと思われます。

7.まとめ

いかがだったでしょうか?
広告代理店の仕事は営業、マーケティング、制作、媒体などと分かれていますが、あくまでもプロジェクトごとに担当者がアサインされ、チームとして仕事をしていきます。さらにはコンペ前である企画提案~受注と、広告実施~分析・報告という段階で大きく仕事が変わってくることもご理解いただけたと思います。

広告代理店、特に営業の仕事は忙しいのは確かですが、それ以上にクライアントと喜びを分かち合える、やりがいの大きな重要な仕事でもありますので、ぜひ広告代理店を志すかたは大きな志や理想をもって就活に臨んでいただければと思います。さらに言えば、電通で残念な事件も起きてしまいましたが、今後は女性にとっても働きやすい職場環境になっていくことは確実なので、広告を天職としたい人はぜひチャレンジしていただきたい業界です。

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ABOUTこの記事をかいた人

広告マン

私は有名な大手2社ではありませんが、国内上位5社に入る広告代理店で営業(アカウントエグゼクティブ)として3年前まで働いていました。その経験から、あまり世の中では語られていない広告代理店の具体的な仕事内容や実際の過酷さについて正直な記事を書いていきます。